【体はしぼった!文章はどうだ?】くどい“メタボ文”を改善する「文章ダイエット」の奥義
■冗長な文章は百害あって一利なし
あなたはくどくどと冗長な文章を書いて、読む人にストレスを与えていませんか? ビジネス文章に求められるのは、読みやすさと簡潔さです。読みやすく簡潔な文章を作るためには、書き終えたあとが重要です。有効なのが「文章ダイエット」。そう、文章を読み返すときに、文中に潜んでいる“ぜい肉”を落としていく方法です。
文中に潜んでいる“ぜい肉”とはどういうものなのか? 具体的に見ていきましょう。
■「重複する情報」と「テーマと無関係な情報」は削れ!
とくに「重複する情報」と「テーマと無関係な情報」は、ビジネス文章の大敵。“ぜい肉”のボス的存在です。
【例文1】
コンセプトに魅力がないため、いちど企画を保留したく存じます。
コンプセプトの甘さを実感しました。
「後悔先に立たず」という格言もあります。
誰のためのイベントなのか、改めてターゲット設定から見直します。
あるメールの文章です。かろうじて意味は通じるものの、まどろっこしく冗長な印象を受けます。
気になるのは以下の2カ所です。
①コンプセプトの甘さを実感しました。
②「後悔先に立たず」という格言もあります。
①は、1行目の「コンセプトに魅力がないため」の言い換えにすぎません。つまり、「重複する情報」です。立て続けに(1行目と2行目に)、ほぼ同様の情報を盛り込む必然性が感じられません。
②は、このメールの主旨とは無関係です。おそらく、書き手は何かしらの意図をもってこの一文を入れたのでしょう。しかし、客観的に判断して、このメールの文脈に合っていません。書き手の自己満足のような一文です。
【例文1の修正】
コンセプトに魅力がないため、いちど企画を保留したく存じます。
誰のためのイベントなのか、改めてターゲット設定から見直します。
「重複する情報」と「テーマと無関係な情報」を削った結果、簡潔で分かりやすい文章になりましました。この文章であれば、ストレスなく読めます。
もしも書き手が「コンセプトの甘さ」という表現にこだわるなら、1行目の「コンセプトに魅力がないため」を「コンセプトが甘かったため」と変えてもいいでしょう。
■“くどい言い回し”は削れ!
文章ダイエットでは、“くどい言い回し”も削る対象です。
【例文2】
犬という動物は、外を駆けまわることが大好きだということだ。
この短い文章のなかにも、“ぜい肉”が潜んでいます。赤字(太字)で浮き上がらせてみましょう。
犬という動物は、外を駆けまわることが大好きだということだ。
「という」や「こと」「ということ」は、とくに使いがちな“くどい言い回し”です。削ってすっきりさせましょう。
【例文2の修正】
犬は、外を駆けまわるのが大好きだ。
スマートな文章になりました。あるいは、「駆けまわる」を名詞化するための「こと」だけは残して「犬は、外を駆けまわることが大好きだ」でもいいでしょう。
もうひとつ例を挙げます。
【例文3】
対人交渉力というのは、会社で認められていくためにも、また、彼自信の将来を考えていくうえでも、極めて重要な能力だということがいえます。
こんどは「という」や「こと」のほかに「ていく」という“くどい言い回し”も登場しました。
対人交渉力というのは、会社で認められていくためにも、また、彼自信の将来を考えていくうえでも、極めて重要な能力だということがいえます。
赤字(太字)で浮き上がらせた箇所が“くどい言い回し”です。削って、文章をすっきりさせましょう。
【例文3の修正】
対人交渉力は、会社で認められるためにも、また、彼自信の将来を考えるうえでも、極めて重要な能力だといえます。
“ぜい肉”がなくなると、情報がストレートに頭に入ってきます。もしも、あなたが書く文章に「という」「こと」「ということ」「ていく」などの表現が頻繁に登場するとしたら、無自覚に使っている状態かもしれません。つまりは「クセ」です。クセで使う言い回しは、書いている最中に気づきにくいものです。読み返すときに修正できるようにしましょう。
そのほかにも、よく見られる“くどい言い回し”をご紹介します。
× 次回までに改善するとします
◯ 次回までに改善します
× メールするようにします
◯ メールします
× 発注するということを考えています
◯ 発注しようと考えています
× この業界においては〜
○ この業界では〜
× 迅速に報告したいと思います
○ 迅速に報告します
× 賛成とはいえないのです
◯ 賛成とはいえません
× 〜を目標とするものです
◯ 目標とします
× マイナスになってしまったりしています
△ マイナスになってしまいました
◯ マイナスになりました
もちろん、赤字(太字)で浮かび上がらせた表現は、それ自体が“くどい”ということではありません。問題なのは、それを使うシチュエーションではないにも関わらず(本来の意味からややずれた意味で)使ってしまうケースです。そうすると、 “くどい言い回し”の仲間入りを果たしてしまうのです。
■「意味がありそうで実は意味がない言葉」も削れ!
意味があるように見えて、実は意味がない。ビジネス文章には、そうした言葉も散見されます。
【例文4】
私は基本的に話しベタなので、司会には向きません。
「基本的に話しベタ」とはどういう意味でしょう? 例外的に話が得意な瞬間があるということでしょうか? どこか、はぐらかされたような印象を受けます(書き手が「及び腰」なだけかもしれませんが)。
【例文4の修正】
私は話しベタなので、司会には向きません。
この書き方のほうが、他意がない分、誠実です。
「原則として」「本質的に」「根本的に」などの表現を好んで使う人も注意が必要です。本来の意味からずれた状況でこれらの表現を使うと、読み手に不快感や不信感を与えかねません。
【例文5】
プロジェクトは、ある意味、順調です。
「ある意味」もよく目にする表現です。「ある意味」とはどういう意味でしょうか? 前後の文脈から、その真意が読み取れるのであれば使っても構いませんが、そうでなければ、安易に使うべきではないでしょう。
【例文5の修正】
プロジェクトは順調です。
「含み」をもたせずに書いたこの文章であれば、妙な誤解を招く心配もありません。「ある意味」を無自覚に使いがちの人は、読み返すときに修正を検討しましょう。
■【文章ダイエットの奥義】強制的に「3分の1程度の文量」を削る
最後に効果的な「文章ダイエット」の方法をお伝えします。それは、文章を書き終えたあと、強制的に「3分の1程度の文量を削る」というものです。
「えっ、削ったら、大事な情報が抜け落ちてしまうのでは?」と心配する人もいるかもしれませんが、ご安心ください。部屋を掃除するのと同じで、人は断捨離するときに、必ず「いらないもの」から捨てようとします(部屋を片付けるときに、いきなり大事な物を捨てないですよね?)。大胆に削ることによって、結果的に、選りすぐりの情報だけが残ります。
書くときには「予定文量よりも多め」に書き、書き終えたら「3分の1程度の文量」を削る。この手法が習慣化したとき、あなたの文章作成能力は大きく飛躍しているはずです。
著者:山口拓朗
『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』著者。
伝える力【話す・書く】研究所主宰。「伝わる文章の書き方」や「メールコミュニケーション」「キャッチコピー作成」等の文章スキルをテーマに執筆・講演活動を行う。著書に、「文章ダイエット」のやり方を解説した『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)のほかに、『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)他がある。モットーは「伝わらない悲劇から抜けだそう!」。
山口拓朗公式サイト
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