「最近ホットハッチが似合わなくなったかも……」とお嘆きのオッサン諸兄に贈る、シトロエン C2 VTSという選択

▲シトロエンのエントリーモデルだったC2。「そのホットバージョンであるC2 VTSこそ中高年にピッタリだ!」と力説する、こちらも中高年の筆者ですが、その理由とは?

▲シトロエンのエントリーモデルだったC2。「そのホットバージョンであるC2 VTSこそ中高年にピッタリだ!」と力説する、こちらも中高年の筆者ですが、その理由とは?

ホットハッチの内装に多用される「赤」がオッサンを遠ざける

若い頃にプジョー 205GTIやルノー 5ターボIIなどの洗礼を受けたせいか、40代後半となった今も、年齢相応の落ち着いたサルーンやプレミアムSUVではなく、どうしても「ホッチハッチ」を希求してしまう筆者である。そしてこれと似たような傾向の朋輩諸兄も世の中には多数いらっしゃるだろうと、常日頃から推測している。

しかしここで問題となるのが、「オッサンに似合うホットハッチは少ない」という事実だ。

前出のプジョー 205GTIあたりに乗れば、ノスタルジックな感じで中年のシブみを醸し出せるのかもしれないが、現実問題205GTIは今や中古車としては絶滅寸前であるため、そう簡単に探すことはできない。それじゃあ最近の輸入ハッチバックのなかからホットバージョンを選べばいいのかというと、それもまた少々厳しい。

なぜならば「赤いパーツ問題」がそこにはあるからだ。

ホットハッチというと、どういう理由か知らないが、自動車メーカーはほぼ必ず「赤いパーツ」をあちこちに使いたがる。黒いセミバケットシートに入る赤いステッチや、赤い模様。あるいはメーターナセルやダッシュパネルにワンポイントとして入れられる赤。なかにはシートベルトが真っ赤なモデルもあり、MOMO製ステアリングホイールのセンターを表す印にも、ラリーカーのような黄色ではなく赤を用いているホットハッチは多い。

率直に言ってアレがちょっと恥ずかしいのである。

▲最新世代に属する某ホットハッチの内装。これでもかというぐらいに「赤」が多用されている。もちろん、この感じが好きな人も多いのだろうが、筆者は正直ちょっと苦手で……

▲最新世代に属する某ホットハッチの内装。これでもかというぐらいに「赤」が多用されている。もちろん、この感じが好きな人も多いのだろうが、筆者は正直ちょっと苦手で……

中高年にも似合う稀有なホットハッチ、シトロエン C2 VTS

もちろんこのあたりの感覚というのは人それぞれだろうが、極力客観的に考えて、20歳ぐらいの大学自動車部員ならばさておき、あと数年で50歳になろうかというオッサンが真っ赤なシートベルトをするのは気恥ずかしいというか、そもそも全然似合ってない感が満載だ。人により考え方は様々だろうが、少なくとも筆者はそう考える。どうせ赤いシートベルトを巻くならいっそ還暦60歳になってから、赤いちゃんちゃんこの上に巻きたいものだ。

ということで本当は輸入ホットハッチが買いたいのに、似合うそれがないからという理由で地味なルノー カングーや往年のマツダ ロードスターなどに乗っている筆者であるが、過日、我々オッサンにもなんとなく似合うホットハッチがあることに気づいた。

シトロエン C2 VTSである。

ご承知のとおりシトロエン C2は、04年4月から12年12月まで販売されたBセグメントに属する小型ハッチバック。主に流通しているのは1.4L SOHCまたは1.6L DOHC+セミATの「VTR」だが、筆者が注目したいのは希少な「VTS」だ。可変バルブタイミング機構付き1.6L DOHC+5MTを採用し、当時のJWRC(世界ジュニアラリー選手権)ベース車両にもなったホットバージョンである。

これが非常に素晴らしい車であるだけでなく、「オッサンにも似合うホットハッチ」なのだ。

▲Bセグメント(フォルクスワーゲン ポロぐらいのカテゴリー)に属するコンパクトハッチバック、シトロエンC2。そのホッテストバージョンが「VTS」だ

▲Bセグメント(フォルクスワーゲン ポロぐらいのカテゴリー)に属するコンパクトハッチバック、シトロエンC2。そのホッテストバージョンが「VTS」だ

▲自然吸気の1.6Lエンジンということで絶対的なパワーはさほどでもないのだが、軽量コンパクトなボディと組み合わされることで、その動力性能は結果として「痛烈」の一語となる

▲自然吸気の1.6Lエンジンということで絶対的なパワーはさほどでもないのだが、軽量コンパクトなボディと組み合わされることで、その動力性能は結果として「痛烈」の一語となる

少々ジジくさい(?)とぼけたビジュアルが逆に好ましい

まず車としての素晴らしさだが、シトロエン C2 VTSとは「走るかんしゃく玉」だと思っていただければおおむね正解である。

エンジン自体が1.6VTRの最高出力110psから15ps増の125psまでチューンされているだけでなく、最終減速比がVTRよりもかなり低められているため、5MTの1~3速はあっという間に吹けきってしまう。シフト操作が追いつかないほどであり、まるで身体のすぐ近くでかんしゃく玉を炸裂させているかのような感覚だ。それでいて「たかが」125psなので、速すぎて持て余すということもない。

そしてそんなホットハッチが「オッサンにも似合う」というのは、まず第一に「赤いワンポイントが(日本仕様の場合)内装のどこにも使われていない」という嬉しい事実。若い人にとっては地味というか、もっとはっきり言えばジジくさく感じられる内装かもしれないが、筆者ぐらいのジジイにはこの感じがちょうどいいのである。

そしてシートもオッサンの腰に厳しいハードボイルドなバケットシートではなく、いかにもシトロエンらしい大ぶりでソフトなスポーツシート。しかしソフトとはいえホールド感は抜群であり、「やさしく沈み込むことで身体をがっちりホールドする」という、フランス車に多い例のアレだ。そして乗り心地も、この種のホットハッチとしてはかなり上々の部類に入る。

▲シトロエン C2 VTSの運転席。1.4および1.6VTRは2ペダルのセミATだが、こちらVTSは5MT。小ぶりなボディと吹け上がりの鋭いエンジンをMTで御する歓びは、やはりホットハッチならでは

▲シトロエン C2 VTSの運転席。1.4および1.6VTRは2ペダルのセミATだが、こちらVTSは5MT。小ぶりなボディと吹け上がりの鋭いエンジンをMTで御する歓びは、やはりホットハッチならでは

▲バケットタイプのスポーツシートだが、その感触はいかにもフランス車らしいソフトで厚みたっぷりなもの。赤いステッチなどが入っていないこともあり、我々オッサンには最適だ

▲バケットタイプのスポーツシートだが、その感触はいかにもフランス車らしいソフトで厚みたっぷりなもの。赤いステッチなどが入っていないこともあり、我々オッサンには最適だ

全体のスタイリングもどことなくすっとぼけた感じであり、そこがまた、あまり肩に力を入れた感じにはしたくない中高年にはイイのではないかと考えるポイントだ。そして率直に言って新車時は大して売れなかったため中古車の流通量も少なく、探すには若干苦労するが、その分「希少性」という価値がある。で、中古車相場もサイフにやさしい約60万~80万円という高コスパっぷり。

……考えれば考えるほど、シトロエン C2 VTSは我ら中高年ホットハッチファンにとって最適な選択の一つに思えるのだが、どうだろうか。

▲流通量はかなり少なめであるため、街で同型車とすれ違う可能性はきわめて低い。そのあたりも、「レア物」を好むことが多いホットハッチ好き中高年には刺さる部分かも

▲流通量はかなり少なめであるため、街で同型車とすれ違う可能性はきわめて低い。そのあたりも、「レア物」を好むことが多いホットハッチ好き中高年には刺さる部分かも

【関連リンク】

シトロエン C2 VTSの中古車をチェックしてみるtext/伊達軍曹

photo/プジョー・シトロエン

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