雇用コストと賃金低迷と

ニューノーマルの理

今回はe.wakitaさんのブログ『ニューノーマルの理』からご寄稿いただきました。
(この記事は2011年10月29日に執筆されました)

雇用コストと賃金低迷と

米国内における“消費市場の二極化”、“偏ったインフレ”をレポートする自分ですが、その兆候は加速している。

「米、最富裕層の所得大幅増 格差拡大浮き彫り」 2011年10月28日 『47NEWS』
http://www.47news.jp/CN/201110/CN2011102801000515.html

デモの拡大が“現実”を表しているわけだが、10月29日には11月のG20をにらんで、ロビンフッド税導入を求めた世界的デモを実施するらしい。ウォール街への反感が、金融取引課税導入へと段々“八つ当たり感”が隠せなくなってきた。以前にも言及したように、デモ参加者の中でも“意識の二極化”が生じているのだろう。

それはそうと個人所得の軟調が続いている。商務省発表の9月個人所得は、市場予想0.3%増を覆す0.1%増となったようだ。自分は、可処分所得の推移を“経済のダイナモ”と位置付けているわけですが、今月も3か月連続でマイナス数値が示されている(インフレ調整値)。
ということで商務省から。

雇用コストと賃金低迷と

(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
https://px1img.getnews.jp/img/archives/1104.jpg
引用元:「PERSONAL INCOME AND OUTLAYS: SEPTEMBER 2011」『Bureau of Economic Analysis』
http://www.bea.gov/newsreleases/national/pi/pinewsrelease.htm

家計バランスシートの負債率が可処分所得比で、ずっと是正を続けている、と言っている自分ですが、しつこく言うように今現在その数値は、“110.9%”(第2四半期)。 是正の長期低迷すら示されているのが実情だと言える。

「所得の増加がない限り、こうした状態の維持は難しい」。第3・四半期は自動車生産と販売の増加で成長が一部押し上げられたと指摘。第4・四半期に向け明るい気分にはなれないとし「経済のどの部分にも成長の大きなけん引役は見当たらない」(スイス再保険の首席米国エコノミスト/カート・カール氏)

引用元:「9月米個人消費支出は0.6%増、貯蓄率は07年12月以来の低水準」 2011年10月28日 『Reuters』
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnJT803603120111028

実際の消費状態を指標から読み取ることは難しいわけですが、アッパークラスの所得が増加しているのであればそういうことであり、限定された消費が支出されたようだ。前日示したコーチの増益 * なんかはそれを示しているのだろう。

*:「進行する「アメリカのスキューフレーション」」 2011年10月26日 『ニューノーマルの理』
http://ameblo.jp/eiichiro44/entry-11059322125.html

しかし記事が指摘しているように、ここで問題なのは全般的な所得の低迷になる。BLSが同日に発表した“雇用コストインデックス”が、何よりその賃金低迷を表す結果となっている。

米国の7-9月(第3四半期)の雇用コスト指数は、ここ2年で最も小幅な伸びにとどまった。 雇用コスト全体の約7割を占める賃金・給与は前期比0.3%上昇と、ここ1年で最も小幅な伸びにとどまった。前年同期比では1.6%上昇だった。

引用元:「米雇用コスト指数:第3四半期は2年で最小の伸び-賃金低迷」 『Bloomberg』
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920008&sid=ax5Ipah369fY

という事でBLSから。

雇用コストと賃金低迷と

(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
https://px1img.getnews.jp/img/archives/268.jpg

Compensation costs for civilian workers increased 0.3 percent, seasonally adjusted, for the 3-month period ending September 2011, the U.S. Bureau of Labor Statistics reported today. 

画像・文引用元:「EMPLOYMENT COST INDEX –SEPTEMBER 2011」『BLS』
※Adobe Acrobat Readerが必要です
http://www.bls.gov/news.release/pdf/eci.pdf

ここ数か月は軟調の軌道を描いている。簡単にいえば負債が大きい中、マクロ的賃金は上がっておらず、由々しき事態が継続していることになる。記事にあるように、この1か月のみ富裕層が貯蓄を削って車を買った、とか単純な理由から消費が上がった事が大げさに報じられているようだ(いつものことだが)。

ちなみに9月コアPCEデフレータは前年比+1.6%で8月から抑制されている。おそらく、企業コスト指数の低迷は続くことだろう、ディスインフレが鮮明化してくれば、“上辺の緩和政策”も実行しやすくなる。09年より長期国債をバカみたいに買い付けたFEDだが、一般家計にその効果は全く届かない。“黄金のバット”を使ったとしても空振りが続けば全く意味はない、ということです。

執筆: この記事はe.wakitaさんのブログ『ニューノーマルの理』からご寄稿いただきました。

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