「登記」にチャレンジ! 難易度、手間はどれくらい?

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不動産購入時にたびたび登場する「登記」という言葉。通常この登記は司法書士や土地家屋調査士といったプロに依頼することが多いのですが、実は法律上は「自分で行うのが原則」だし、実際に「自分で」行うことも可能なんです。プロにお願いすると、一番難易度が高い登記で7~10万円程度かかるのですが、 はたして本当に素人でもできるのか? どんなところが難しいのか? 今回家を建てたのを機に、編集部Yが自分で登記にチャレンジ。実際にやってみたプロセスや難易度をレポートします!

そもそも「登記」とは?

そもそも「登記」とはなんでしょうか? 「登記」とは、権利関係などを公に明らかにするために法務局が管理する登記記録というデータに記録することです。「登記」には、「不動産登記」、「商業登記」や「船舶登記」などの種類があります。不動産登記は、「どのような不動産(土地・建物)なのか」、「所有者はどこの誰なのか」、「どこの誰からいくらお金を借りたのか」などが「登記」され誰でも分かるようになっています。

また、「不動産登記」と言っても1つではなく、数多くの種類があります。土地を購入した場合は「売買による所有権移転登記」(売主から買主に所有者を変更)、住宅ローンなど不動産を担保にお金を借りる場合には「抵当権設定登記」など、目的に応じた登記が必要です。家を新築した場合は、「建物表題登記」(こんな建物をどこの誰が建てた)を行います。「建物表題登記」は図面を描く必要があり、それがこの登記で最も難しい点になっています。

フルタイムの仕事や幼い子ども2人の育児もあり、おまけに引越しなどでバタバタしているなか、本当に自分でやるのか? やれるのか?と不安になりましたが、最終的には「やる!」と決意。登記というものを自分でやってみたかったという好奇心と、やはり専門の方に払うはずのお金(東京では10万円、地方では7~8万円程度)をほかのことに使えるという点が魅力だったわけです。

「建物表題登記」には何が必要?

「登記」を自分でしよう、と決めてからまずしたことは、設計事務所・工務店に伝えることでした。筆者の場合、設計士・工務店ともに快くOKしてくれたのですが、ハウスメーカーや工務店によっては指定の事務所が決まっていたり、登記準備が遅いと融資実行も遅れてしまうため、個人での登記に難色を示すケースもあるそう。ですから、自分で登記を行うには、工務店やハウスメーカー等と契約する前に「自分で登記を行う」ことに協力してもらえるか確認したほうがよいでしょう。

次にやるのは情報収集。筆者の場合はインターネットや書籍での情報収集を行い、その後法務局へ相談しました。法務局の電話相談は、やや事務的な対応で分かりづらかったのですが、窓口へ行くと、担当者はみな親切で、詳しく教えてもらえました。とはいえ、1から10まで教えてもらおうというスタンスだと迷惑をかけるケースもあるようなので、事前にネットや書籍で概要をつかんでおいた方が相談もスムーズかと思います。建物表題登記は、エリアによってルールが異なるため、建築する場所を管轄する登記所を確認し、その窓口に相談にいくとよいでしょう。その際、相談に予約が必要なところもあるので、事前に確認をしてください。

そして、肝心の「建物表題登記」に必要な書類は以下の通りです。■建物表題登記に必要な書類と入手方法など

1・申請書 →法務局のHPか法務局窓口で入手、作成してもよい。氏名住所など基本的なものを記入、難しくない

2・住民票の写し →役所で入手、200~300円で発行してもらえる

3・建築確認通知書 →ハウスメーカー・工務店・設計事務所などに依頼

4・検査済証 →ハウスメーカー・工務店・設計事務所などに依頼

5・工事完了引渡証明書 →ハウスメーカー・工務店・設計事務所などに依頼

6・会社の印鑑証明書、代表者事項証明書などの資格証明書→ハウスメーカー・工務店・設計事務所などに依頼

7・建物図面・各階平面図 →自分で書く、難易度が高い

※4があれば5と6は不要なエリアもある

※建売住宅の場合 8・譲渡証明書が必要。→建売会社

一番の難関は、やはり7の「建物図面・各階平面図」です。それ以外は難しくありません。

定規とやる気があれば、登記用図面は描ける!

法務局の窓口で図面について相談した際に言われたのは、「図面の描き方を一から説明するのは難しいので、まずはこれ(参考書類のコピー)を見て描いてお持ちください」ということでした。その際、画像1のような定規でチェックするということでしたので、筆者はさっそくこの定規(「三角スケール」1000円弱)を購入しました(※)。そして、購入した書籍『自分で登記をする会1』に掲載されている内容を参考に、まずは図面を描いて窓口で見てもらう、というやり方をすることに決めました。

※三角スケールではなくて、縮尺目盛が付いている三角定規でも図面は描けます。【画像1】筆者が購入した1/100、1/250、1/500などのメモリがある三角スケール(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像1】筆者が購入した1/100、1/250、1/500などのメモリがある三角スケール(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部) ■図面作成のステップ(筆者の場合のやり方。ほかにもやり方はあると思います)

1.書類のフォーマットを用意 →Web上にあがっているひな形を利用

2.各階平面図(左半分)を描く →平面図を1/250にコピー、まずは鉛筆で写す

求積表は設計図に同様の記載があり転記

3.建物図面(右半分)を描く →「公図」を1/500にコピー、まずは鉛筆で写す

仕上げに清書する →0.2mm以下の細線を書けるペンで清書

この作業を一度行い、三角スケールでチェック。大体OK? という完成度に仕上げて窓口へ相談に行きました。担当者の方いわく、「各階平面図のほうがほんの少し大きいけど、許容範囲です」とのこと。やったー!! これで無事、図面完成です。【画像2】B4サイズの申請書、左半分は1/250分の1で記載する「各階平面図」、図面の隣に面積の計算を書いています。右半分は1/500分の1で描く「建物図面」(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像2】B4サイズの申請書、左半分は1/250分の1で記載する「各階平面図」、図面の隣に面積の計算を書いています。右半分は1/500分の1で描く「建物図面」(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

手間だけど、自分でやって得られるもの。それは10万円と達成感と…

図面を描き終えて、その他の書類もすべて用意し、窓口に申請に行きました。その後、法務局の方が自宅を確認しに来て、その二日後には無事、登記完了となりました。【画像3】法務局の方が自宅に来て、家の中の写真を撮ったり、周囲から建物状況を確認したり。また書類の不備も指摘いただきその場ですぐ修正。固定資産税の評価は、登記の床面積をベースに計算されるので、もし間違って床面積が大きいと損をします。自分でもしっかり確認を、そして登記官にもしっかりチェックしてもらいましょう(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

【画像3】法務局の方が自宅に来て、家の中の写真を撮ったり、周囲から建物状況を確認したり。また書類の不備も指摘いただきその場ですぐ修正。固定資産税の評価は、登記の床面積をベースに計算されるので、もし間違って床面積が大きいと損をします。自分でもしっかり確認を、そして登記官にもしっかりチェックしてもらいましょう(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

結局どれくらいの手間がかかったのか、振り返ってみます。

期間としては、4月の中旬から5月の中旬まで4週間弱。法務局の窓口へ行ったり、自宅チェックの立ち会いで平日に1~2時間ほど時間をつくる必要があったのが計5回。その他、書籍を読んだり、図面を描いたり、その他の書類を用意したりというのが何時間か。そして、かかったお金は、法務局への交通費や書籍の購入などを合計して約5000円ほど。

筆者はすべて窓口まで赴きましたが、郵送でやりとりすることも可能なので、4回も行かずに1回か2回ですませる、写真を添付することで家の立ち会いがないという場合もあるようです。また、平日に動ける家族がいれば、代理人として窓口での手続きを進めてもらうことも可能です。

とはいえ、手間といえば手間です。でも、すごく難しかったか? と言われれば、「そうでもない」という答えになります。面倒な確定申告を終わらせた、みたいな爽快な気分も! 確定申告はとてもやっかいですが、頑張れば素人でもできる、それに近い気がします。

筆者が相談した法務局の窓口の方に、この「建物表題登記」を自分でする人がどれくらいいるか聞いてみたところ、1カ月で数人ということでした。少ないといえば少ないですが、でも「数人はいるのか」とも思いました。担当の方も「ご自身で頑張ればできないことではないので、チャレンジするのはよいことだと思います」とおっしゃっていました。

建物表題登記は図面を描く必要があったり、抵当権設定登記は融資が関係するため銀行指定の司法書士が行うことが多いなど、自分でやりたいといっても難易度が高いケースもあります。現実的にやれる・やれないは個人の状況によって違うものの、「登記はプロにお願いするもの」と頭から決めてかかるのではなく、自分でもできるということはぜひ知っておいていただきたいと思います。「所有権保存登記」「住所変更登記」「滅失登記」などハードルが低い登記もあります。

興味を持った方、登記の機会がある方は、どんな登記なのか確認してチャレンジしてみるのもよいのではないでしょうか。金銭的メリット以外にも、登記という作業を通して、それがどんな意味をもつのかということを自分自身で理解することにもつながります。そして、何事もチャレンジすればできるんだ、という何とも言えない達成感も味わえますよ!●監修

河戸一雄

●参考

書籍『自分で登記をする会1』(登記研究会)
元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/07/114351_main.jpg
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