マンション理事会のお悩み[5]設備の更新、管理会社まかせはNG
マンションの築年数が増えるとともに、大規模修繕はもちろんのこと、集合インターホン(築15年目が目安)やエレベーター(築25年目が目安)などの共用設備の更新も必要になってきます。そんなとき、管理会社が提案するままに工事を任せると結局費用が高くつく恐れがあります。
また、こうした設備更新を機に、保守点検等の委託先の見直しを行うことで、従前よりも維持費を下げられるチャンスもあります。
筆者がコンサルティングした管理組合の事例をご紹介しながら、その概要と効果を説明します。【連載】マンション理事会のお悩み相談
マンションは、いろんな価値観をもった人たちが住む集合住宅。直面する問題もさまざまです。でも理事会では経験豊富な人が少なく、解決が難しいこともあります。
今回は、日々、理事会から多くの悩み相談を受けているマンション管理士が、そのなかでもよくある問題をご紹介し、解決方法を提案します。
築17年目で集合インターホンを更新したケース
今年で築17年目を迎えるマンション(総戸数90戸)では、オートロック方式の集合インターホンが耐用年数を超えたことから全面更新を行うことを決めました。管理会社の概算見積もりをもとに、予算として計上した金額は1600万円でした。
この予算金額は、管理会社が工事を元請けすることを想定したものでした。しかしながら、理事会で発注先を選定する際に、筆者のルートを通じて別の販売代理店からも相見積もりを取得することになったところ、管理会社の対応が変わりました。
管理会社が工事の元請けをせずに、同じメーカーから直接管理組合に見積書が提出されることになったのです。その結果、メーカーの最新機種にもかかわらず、上記予算金額を大きく下回る1000万円で発注することができました。セカンドオピニオンによるけん制効果によって、600万円もの費用が浮いたことになります。
設備更新を機に警備会社を変更したら維持費用も大幅にダウン!
このマンションでは、そのインターホン設備を介して共用部の設備異常や専有住戸の火災などの信号を警備会社が受信する遠隔監視システムも内包しており、異常発生の際には警備員が現場に急行して一次対応を行う仕様になっています。
筆者がコンサルに着手した時点では、この遠隔監視と緊急対応の費用が月額約12万円でしたが、上記の設備更新によって今の警備会社に縛られずにほかの警備会社からも委託先を選択できるようになりました。
そのため、元請けの管理会社に警備会社の変更を含めて委託費の見直しを要請したところ、従前の半額以下の約6万円まで下がりました。その結果、管理組合として年間70万円以上の費用が浮くことになったのです。
築30年でエレベーターを更新した管理組合のケース
今年で築31年目を迎える別の大規模マンションでは、昨年2台のエレベーター設備を更新することになりました。設備自体に異常はなかったものの、メインの制御機器も耐用年数を超えていつ故障してもおかしくない状況にあったこと、また設備仕様が古く、停電や地震が発生した際には居住者がエレベーター内に閉じ込められるリスクもあったからです。
エレベーターの更新方法としては、既設製品の全てを撤去して最新の機器に更新する「撤去新設リニューアル型」と、今後も使用に耐える部材を継続利用する「制御リニューアル型」の大きく2種類あります。当然ながら、前者のほうが工期も長く費用も高額のため、この管理組合では、後者を選択することになりました。
また、リニューアルを実施するのも既設メーカーだけに限定されるわけではなく、保守専業業者も昨今受注実績を伸ばしています。そのため、既設メーカーを含めて3社から相見積もりを取得して比較しました。
検討の結果、この管理組合では既設メーカーにリニューアル工事を発注することになりましたが、設備更新後の保守点検についても複数の業者から見積もりを取得するよう理事会に提案しました。元々保守は竣工以来そのメーカー系の業者に委託し、その費用として月額約15万円を負担していましたが、この設備更新を機に、メーカー系以外の専業保守業者にも従来のフルメンテナンス契約で委託することができるようになったためです。
すると、新規で見積もりを依頼した会社から従来の半額以下(月額約5万円)の提示がなされたので、既存の保守会社にも減額を要請しました。しかしそれには応じなかったため、保守委託先を変更することにし、結果として、この管理組合に年間100万円を超える余剰金が生まれることになりました。
マンション管理組合にとっては、大規模修繕だけでなく、共用設備の更新に伴い多額の出費を迫られる機会も少なくありません。重要なことは、管理会社に見積もり提案を任せるのではなく、必ず相見積もりを取るようにすること。そして、設備更新のタイミングを利用して保守点検費や警備費用などの維持コストを削減できるチャンスもあるので、その観点からの見直しも行うことの2つです。
ただし、更新する際の設備機器の仕様や保守サービスのメニューについて検討するに際しては一定の専門知識が求められるケースも多く、ただやみくもにコスト削減を追求すると管理の質が低下してしまうリスクもあります。こうした検討を進める際には、経験や実績が豊富な専門家に相談するのもよいでしょう。●参考
・エレベーターのリニューアルについて
・エレベーターの新安全基準について
・エレベーター点検の契約について
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