ライアン・レイノルズが激白! 『デッドプール』製作秘話や“あの黒歴史”について語る
6月1日より全国744スクリーンにて公開され、初日・週末ともに堂々の国内興行収入1位を獲得して大ヒットスタートを切った映画『デッドプール』。きっと劇場に足を運んだ誰もがこう思ったことだろう。
「これぞ俺たちの見たかったデッドプールだ!」
主演・プロデューサーとして苦節11年の末に今作を生み出したライアン・レイノルズ。実は、今年1月に台北で開催されたプレミアイベントに出席した彼が、デッドプールとの出会いや映画製作の苦労、さらには、「黒歴史」と揶揄される『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』や『グリーン・ランタン』に至るまで、全て本音で語っていたのだ!
以下、日本でも劇場公開を迎えた今だからこそ楽しめる、現地Q&Aの模様をたっぷりとお届けする。
デッドプールとの出会い
司会者:初めてデッドプールと出会ったのはいつ頃ですか?
レイノルズ:2005年にスタジオの幹部から紹介されたんだ。彼は『デッドプール』の映画化権を取得していて、「君にぴったりの役だ」って。僕がデッドプールを知らないと言うと、コミック全巻を送ってきた。読んでみると「正にハマり役だ」と思った。そしたら、「君を主役にして僕のスタジオで映画を撮ろう」って言われたよ。
司会者:10年後に作ろうって(笑)?
レイノルズ:そう! いやいや……、実はその話の直後に、その幹部はクビになってしまった。後任で入った担当に掛け合ってみたけど、「デッドプールなんて知らないし、興味がない。俺は『X-MEN』を作るんだ」と言われて、聞いてもらえなかった。そのまま企画はボツになって放置されてしまったんだ。だから時間がかかってしまったんだよ。
レイノルズが考えるデッドプール像
Q:デッドプールとご自身が似ている点はどこですか? また、この役を演じる上で何が一番大事でしたか?
レイノルズ:よく妻には、「今あなたはどっちなの? ライアン? それともデッドプール?」って言われるんだ。デッドプールは僕の分身のようなもので、スイッチひとつで切り替えられる気がする。もう10年以上も関わってきたから、僕でさえ、ライアン・レイノルズがデッドプールを演じているのか、デッドプールがライアン・レイノルズを演じているのか、よく分からなくなるよ。
デッドプールは冗談ばかり言ってるけど、どこか心に響くものもある。彼のユーモアは痛みを覆い隠すためのものなんだ。すごく大事に思ったのは、ヤツがただ可笑しいことを言ってるだけのキャラだと、映画としてまとまりがなくなってしまう。まずは現実に根ざした男にしたかったんだ。その後、解放して思いっきり自由にやらせるためにね。
Q:デッドプールを演じて楽しいところは? あなたはとても優しい良い人ですが、映画のデッドプールはかなり劣悪です。
レイノルズ:そうだね。普通、人間って酷いことを考えても、脳のどこかでフィルターにかけて「それは口に出して言ってはいけない」と規制しているんだ。でも、デッドプールはそれを完全に無視している。言いたいことは何でも言ってしまう。そこが爽快だね。あと、デッドプールはアンチヒーローで、良いヤツではないけど、悪いヤツとも言えない。僕は道徳的に柔軟性があるキャラクターを演じるのが楽しかった。しかも、これは珍しいことだよね。コミックの世界、特にマーベル・コミック、X-MENの世界はみんな極端に良いヤツばかりだ。そんな世の中にデッドプールを送り出せたのは良かった。肝っ玉が据わった(=guy with balls)ヤツがひとりくらい居てもいいんじゃない?
司会者:君が「タマ(=balls)」の話をしたから持ち出すけど、昨日の晩、試写を観てヌードのシーンがあった。火の中の戦いのシーンでは真っ裸で、宙返りをしたときに一瞬、「えっ、今見えたんじゃない?」って思わず隣の人に言ってしまったよ(笑)。
レイノルズ:あのシーンね。実はデヴィッド・クローネンバーグ監督の『イースタン・プロミス』という映画のアクションシーンが大好きなんだ。ヴィゴ・モーテンセンがロシアのサウナで真っ裸のまま相手と戦う。全裸で激しい戦いをするほど、人間の脆さを感じるものはないと思ったんだ。どこか粗野だし、ヒヤヒヤさせられるし、傷つきやすさも感じられる。あのシーンはそこからヒントを得て作ったシークエンスなんだ。あの映画が大好きだから、監督にこういうことをやりたいって伝えた。どこかデッドプールらしさがあると思ったんだ。でも、そこばっかり観ないで欲しいな。じゃないと、「あ、今アレが見えた」っていうだけのシーンになっちゃう(笑)。
苦節11年の挑戦
Q:セリフに関して、脚本に全てが書かれていたとは思えませんでした。アドリブの自由度は高かったのでしょうか?
レイノルズ:完全に自由だったよ。スタジオは、それまでの10年間はずっと「ダメ」と言い続けて、多分あまりにも僕たちがしつこいんで根負けしたんだと思う(笑)。「ぎりぎりの予算を出すから、映画を作って来い。もう我々をほっといてくれ」って感じでね。僕たちとしては大喜びさ。現場に誰も指図する人もいなかったし、規制する人もいない。
でも、デッドプールは第四の壁を壊すし、変わり者だし、特殊なジャンル映画だから、フッテージを観てスタジオに何回か怒られたことがある。僕がスタジオのお偉方の名前を具体的に言う場面があったんだけど、それは気に入らなかったみたいで、カットさせられた。あと、予算が足りないからX-MENのキャラを2人しか登場させられなかった。「なんだよ、こんな大きな館に2人しか居ないの?」って思うよね(笑)。本当はもっといろんなメンバーを出したかったよ。
『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』は「間違っていた」
Q:メイクの話を聞かせてください。マスクの下の醜い顔を初めて見た時はどのように思いましたか?
司会者:でも、2009年の『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』で既に同じ役はやっているよね?
レイノルズ:あれがデッドプールの顔かどうかは議論の余地があるね(笑)。今回のメイクデザインはオスカーも受賞しているアーティストのもので、彼は天才だ。でも最初に予定していたメイクよりは随分と抑えたものにした。これに関してはスタジオ側から「ちょっと顔が気持ち悪すぎる」という意見が出たからなんだ。結果的には良かったと思う。人間らしさが崩れ、大切なものをすべて奪われて、二度と愛を取り戻せないと彼が感じるようにしたかった。顔のメイクだけでも4時間かかった。顔と両腕に6時間。彼が全裸でエイジャックスと戦うシーンは毎日8時間から10時間かかった。
司会者:メイクだけで、そんなに?
レイノルズ:そう。それから撮影スタッフが到着して、撮影を14~5時間やるんだ。僕は1日で2日分の仕事をしている感じだった。かなりキツかったね。他の人たちは普通の労働時間でも、僕は一番長いときで26時間労働だった日があった。もう最後のほうは麻薬中毒者かドラッグをやってる変なヤツみたいにろれつが回らなくなった。
司会者:それもデッドプールらしいけどね(笑)。
Q:今回のデッドプールは、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』の出演時とは異なる、全く新しいキャラクターだとお考えですか?
レイノルズ:全く新しいキャラクターだと思ってるよ。『X-MEN ZERO』に登場したデッドプールは間違っていた(笑)。いや、マジで。もう全然違っていたんだ。最初のほうに登場するウェイド・ウィルソンは正しい。でも、デッドプールとしては、スタジオの誰が決めたか分からないけど、デッドプールが持っている本来のパワーを全部封印されてしまった。彼の特徴を全部消されてしまったんだ。すごく不満を感じたよ。僕は当時、「こんなことではデッドプールに呪われるぞ」って言ったのを覚えている。僕自身も呪われると思ったよ。でも、「これでいいんだ、信用してくれ」って言われて、あのような形で描かれてしまった。当然のことだけど、デッドプールのファンたちは非常に怒った。今作を初めて観たとき、僕は泣いてしまったよ。今までずっと思い続けていた、夢見ていたデッドプールだったからね。コミックからそのまんま抜け出してきたみたいだった。
『グリーン・ランタン』は「フラストレーションが溜まった」
Q:グリーン・ランタンとデッドプールという2人のコミック・キャラクターを演じていますが、どちらがより挑戦的な役でしたか?
レイノルズ:僕はグリーン・ランタンよりデッドプールの方が断然好きだ(笑)。でも挑戦的だったのは『グリーン・ランタン』かな。スタジオが「ポスターはできた。スターも用意した。脚本はまだできていないけど、とりあえず撮影始めようか」って感じだったから(笑)。それって挑戦的だよね。フラストレーションが溜まったし。僕は自分でも脚本を書くけど、あの脚本はなかなか決まらなくて。
あの映画に関わった150人が一所懸命に働かなかったわけじゃないよ。でも大変だった。みんなにとって、挑戦的な映画だったんじゃないかな。それに比べると、『デッドプール』は全然楽だったよ。僕たちが撮影を開始したとき、スタジオでは『X-MEN:アポカリプス』を含めて他に何本もの映画を撮影中だった。僕たちのチームがトラブルメーカーになると思われていたみたいだけど、フタを開けてみると、『デッドプール』はスケジュール通りに予算内で終了した。他の作品はみんなそれができなかった(笑)。スタジオ側はかなり驚いていたみたいだ。でも考えてみると、もう6年も前に脚本が完成していたし、準備万端だったんだ。ただ資金がなかっただけで。予算さえ揃えば映画は順調に撮影できた。
日本との関係性
Q:デッドプールは日本刀を持っていたりして、日本からの影響がふんだんに織り込まれている印象がありました。ポケモンやハローキティも登場します。
レイノルズ:そう。ハローキティはたくさん登場しているね。ジョー・ケリー原作のコミックでは相撲部屋も登場するしね。
Q:『ウルヴァリン: SAMURAI』は日本でロケが行われましたが、『デッドプール』の続編も日本で撮影する可能性はありますか?
レイノルズ:そうなったら最高だよ! 素晴らしいアイデアだね。デッドプールのキャラクター作りにおいて、日本からの影響をたくさん盛り込んでいるから、ぴったりだと思うよ。次作にはついてはまだ何も決定していないんだ。今ちょうど次作の話を始めたところでね。デッドプールの今後を色々と練っているところだよ。
オマケ
Q:あなたがデッドプールみたいになって家に帰ったら、美しい奥さんはどうすると思いますか?
レイノルズ:「歯のついたキンタマ」みたいな姿で帰宅したら(笑)? 妻はまだ僕を愛してくれるだろうか、ってこと? 結婚は契約なんだ(笑)。しかも、僕のほうが年上だから、妻はいずれ僕のオムツを替えたりもしなくちゃならない。多分、妻は僕に連れ添ってくれると信じているよ。
Q:では次に、赤ん坊の寝ているベビーベッドへ行く。ふっとのぞき込むと、なんと、赤ん坊の顔がヒュー・ジャックマンの顔になってる!
レイノルズ:君(質問者)が吸っているモノを吸ってみたい(笑)。
司会者:僕も同じことを思ったよ。
レイノルズ:多分、見つかったら刑務所行きになるやつじゃないかな(笑)。赤ん坊がヒュー・ジャックマンの顔になってたら……、ヒューはいい友達だし、伝説的な人物だけど、うちの赤ん坊は女の子だから、大人の男の顔になったらすごく変だよね。まず、赤ん坊の身体には多分、顔が重過ぎると思うんだ。だから、まず僕は頭を支えてあげるね。
司会者:すごく寛大だね。僕がブレイク・ライヴリーと結婚していて、赤ん坊がヒュー・ジャックマンの顔だったら、真っ先に「これは一体どういうことなんだ? 最近、ヒューと食事に行った?」って責めると思うよ(笑)。
レイノルズ:そうだね。「なんで、赤ん坊にモミアゲがあるんだ?」ってね(笑)。
映画『デッドプール』特集 ガジェット通信が俺ちゃんを徹底解剖!
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