今どきの人工衛星は、作付け中の「米の旨み」まで分かる
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2カ月にわたり公募していた、第一期水循環変動観測衛星「GCOM-W1」の愛称が2011年9月21日、「しずく」に決定した。GCOMとは「地球環境変動観測ミッション(Global Change Observation Mission)」の略で、宇宙から地球の環境変動をグローバルに観測することを目的とした計画。JAXAの担当者が10月12日のニコニコ生放送に出演し、この「地球環境観測」の取り組みについて説明した。
■人工衛星で「米の旨み」や漁場を観測
「地球環境観測」とは、人工衛星等を使い地球がどういう健康状態であるかを研究するもの。例えば太平洋の温度などを直接測るには莫大な時間と観測装置が必要になるが、衛星で上空から観察することで、広範囲の環境を一度に把握することができる。またレーダーを使うことで普通のカメラでは雲に遮られて見えない森林など地表の状況も分かり、経年変化による緑化や都市化の様子も観測できる。
私たちに身近なところでは、農業や漁場研究にも人工衛星は利用されている。光の反射量の違いから各地に作付けしている稲のタンパク質含有量が分かるといい、これを元にどの地域で美味しいお米が取れるのかなどの共同研究が、農林水産省や民間企業とともに行われているそうだ。また海の温度を知ることで魚の生息域も予測することができ、漁業関係者に情報を送っているとのこと。
■海の温度を0.5度の精度で測るスーパー衛星「しずく」
さて冒頭の「しずく」に話を戻そう。これは大気、海洋、陸、雪氷といった地球全体を長期間(10~15年)観測することで、水循環や気候変動のメカニズムを解明することを目的としたプロジェクト。水循環変動と気候変動観測を目的とした2タイプの衛星を各3基、計6基打ち上げる計画で、「しずく」は水循環変動を目的とした第1基目の衛星。JAXA 宇宙利用ミッション本部GCOMプロジェクトチーム・ミッションマネージャー伊藤徳政氏曰く
「1日に14、15回地球を回り、2日間回ることで地球の99%を観測できる」
「海の温度を0.5℃の精度で測ることができる」
というスーパー衛星で、2011年度の打ち上げを予定している。現在、電波適合性試験、振動試験、熱真空試験などいわば「卒業試験」の真っ最中で、打ち上げが待ち望まれている。
◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]「しずく」のGCOMプロジェクトから視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv66039238?po=news&ref=rews#53:48
(大塚千春)
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ウェブサイト: http://news.nicovideo.jp/
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