パニック障害の夫と暮らす日常 心身に不調が出たら心と体に耳を傾けよう
改めましてこんにちは、漫画家の大原由軌子です。
上の漫画にもあるように、私のダンナさんはパニック障害を患っていました。ちなみにそのダンナさんとは、『精神科に行こう!』(文春文庫)の著作もあるフリーランスライターの大原広軌です。この書籍が発売された数ヵ月後に結婚生活がスタートしたのですが、パニック障害で一番苦しんだ時期は過ぎ去っていたようです。それでもやはり、これも漫画にあるように発作に襲われることがあり、見ていて辛そうではありました。
誰もが発症する可能性がある
ダンナさんを苦しめている病気がどんなものなのか知ろうと、私も当時いろいろ調べてみました。
パニック障害で一番厄介とされるのが、“パニック発作がまた来たらどうしよう……”と恐れおののく「予期不安」というものらしく、そのために次第に外出が困難になり社会生活破綻状態に陥ってしまうこともあるといいます。
病気の原因も調べましたが、かなり専門的な話になってしまうのでここでは割愛します。ただ、以前は「元々の性格やストレスによるところが大きい」といわれていたらしいのですが、最近では「脳内の神経伝達物質のバランス異常」と捉えられているようです。
とはいえ、まだはっきりとした原因はわかっていないのが現状で、100人に1~3人が罹る(かかる)病気とのことです。特に春は、環境が変わる時期なのでメンタル面への負荷も気になります。こういったことを踏まえると、パニック障害は「決して特別な病気ではなく誰もが発症する可能性のある疾患」と、いえそうです。
ちなみに彼が発症した1996年当時は、まだパニック障害という病気があまり知られていなかったらしく、ありとあらゆる臓器を調べたのですがどこにも異常は見つからず……。これはもう霊障に違いない!とお祓い(おはらい)を受けたり、酔ってしまえばワケがわからなくなれると過度の飲酒に走ったりもしたそうです。
どのように克服したのか
そんなダンナさんをパニック障害のふちから救い上げてくれたのは、精神科のお医者さんから処方された「抗不安薬」でした。「精神科で処方される薬」に関しては昨今、全否定するような意見などがネット上などで散見されます。いろいろな議論がなされることは悪くないと個人的には思います。
そのあたりのことをダンナさんに聞いてみると、「精神科の薬ってだけで拒否反応を起こす人もいるけど、骨折したときに使う“松葉杖”くらいに思っておけばいいんじゃないかな。足折ってるのに杖も使わないで歩けったって無理があるでしょ。薬もそれと同じで、鬱やらパニック障害やらの症状が治まるまでのサポート器具って思えばいいんじゃないのかな」とのこと。
ただし、少々注意も必要なようです。
それはコンスタントに服用していた薬を突然やめてしまうと現れるとされる「退薬症状」というもの。「もう治った」「薬がなくなったけどもらいに行くのが面倒」などといった理由で勝手に服用を中断してしまった故の「リバウンド現象」です。もちろんこの症状も、お医者さんの指示に従い段階的に薬を減らしていけば避けられるそうです。
そして、冒頭で「私のダンナさんはパニック障害を患っていました」という過去形を用いたように、ダンナさんのパニック障害は完治しています。しっかりとお医者さんの処方を守り、減薬しながら症状の推移を観察。すると、結婚3年目の長男が生まれるころには発作が兆すこともまったくなくなり、以来、向不安薬とは縁が切れました。もう松葉杖は必要なくなったというわけです。
新生活は心身に不調が出ることも。自分の心と体に耳を傾けよう
誰でも罹り得るけれども、服薬を含めきちんと対処すれば必ず治る病気――。それが大原一家のパニック障害に関する共通の認識です。
新社会人であれ、彼らを迎え入れる方々であれ、新しい環境にいろいろと緊張を強いられるこの時期は、心身に不調が出ても何の不思議もありません。そしてパニック障害をはじめとする、いわゆる心の不調は風邪などと同様、「早期発見」「早期治療」が基本だということもダンナさんを見ていて実感しています。もちろん「正しい治療」も。
そんなわけで、ちょっとでもおかしいなと感じたら無理せず専門機関を訪ね、そして自分の心と体に対して耳を傾けてあげてください(と、ダンナさんも言っています)!
著者:大原由軌子(おおはら・ゆきこ)
漫画家。1970年生まれ。長崎県佐世保市出身。デザイナーを経て2006年、パニック障害+神経症持ちの夫との日々を描いた『大原さんちのダンナさん このごろ少し神経症』で漫画家デビュー。ほかの著書に『お父さんは神経症』『京都ゲイタン物語』『大原さんちの食う・寝る・ココロ』などがある。2011年、生まれ故郷の佐世保市に一家で移住、九州での生活をメルマガ『大原さんちの九州ダイナミック』で毎週発信中。
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