パナマ文書で日本の詳細情報が開示されたらどうなる?
パナマ文書を公開したICIJってどんな組織?
パナマの法律事務所から流出したタックスヘイブンを活用する各国指導者や富裕層に関する内部文書、いわゆるパナマ文書がネット上に公開されるや否や、世界中でタックスヘイブン利用者に対するバッシングが始まっています。
ところで、そのパナマ文書を公開したICIJとはいったいどのような組織なのでしょうか。
ICIJは、The International Consortium of Investigative Journalistsという米国(本部:ワシントン)の所在の非営利組織です。
日本では国際調査報道ジャーナリスト連合と呼ばれています。
ICIJのウェブサイトによると、ICIJは1997年に設立され、世界65カ国に住む約190人のジャーナリストが共同で調査報道を行うためのネットワークということです。
メンバーには、米国の報道番組の著名な元プロデューサー、コンピュータの専門家、弁護士などが協力をしているとのことです。
今回のパナマ文書のプロジェクトはICIJ過史上最大の案件と言われており、日本人ジャーナリストとしては、奥山俊宏氏(朝日新聞)と澤 康臣氏(共同通信)がレポーターとして参加しています。
タックスヘイブンを利用して脱税するには・・
タックスヘイブンを利用して脱税を行うためには、
①まず、金融資産等を課税当局にわからないよう形で自国からタックスヘイブン国/地域に移す必要があります。
②さらに、現地での運用益について自国で所得税課税されないようなスキームを構築することが必要です。
③そして、最終的にはその資産は子孫等に承継されることになりますので、贈与税や相続税を回避できるスキームを構築することが必要です。
我が国の国税庁のタックスヘイブン対策はどうなっているのか?
しかし、タックスヘイブンを利用した資産運用等に関しては、近年どんどん新しい法律を導入し課税を強化しています。
例えば、金融機関を通じて海外送金を行う場合には、100万を超える場合には、金融機関から課税当局に支払調書が提出されてその状況を把握されるようになっています。
また出国税も導入されて、海外に出国する場合に多額の有価証券等を保有していると売却したものとみなして課税されます。
海外に信託を設立するスキームへの対策として、法人課税信託という新しい課税の仕組みが導入されています。
また、相続税に関しては、原則として相続人と被相続人がともに5年を超えて海外に居住していない場合には日本の財産も海外の財産も相続税の対象となります。
したがって資産の入り口(海外への持ち出し)や出口(運用益の相続)に対しては、課税の網がかかっており、実際のところ脱税は容易ではありません。
パナマ文書は、今後詳細な情報が追加開示される可能性がある
今後、パナマ文書の詳細な情報が追加開示されて、日本の有名企業及びそのオーナー、指導者、芸能人、スポーツ選手等の個人名が公表されることになるかもしれません。
人気のある成功者や知識人が、実はタックスヘイブンを利用して財テクを行っているということが判明した場合、それが上記の法律に抵触することがなくても、やはり世間から冷たい目で見られることでしょう。
グーグルは、ダブルアイリッシュ・アンド・ダッチサンドイッチといわれるスキームを駆使して合法的租税回避を実施していましたが、2014年、それが暴露されて世間から非難されると、同社は英国に対して200億円以上の税金の追加納付をすることとなりました。
アイスランドの首相は今回のパナマ文書で退任することとなりました。
もし、パナマ文書で日本の著名人の名前が公開された場合に、彼らはどのような対応をするのでしょうか・・・、注目したいと思います。
(田村 敏明/ThinkBuzanマインドマップ公認インストラクター)
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