生きて届かなくても乳酸菌は効果がある?
乳酸菌の生菌・死菌による違いはまだわかっていないことが多い
健康によいということで様々な医薬品や食品に活用されている『乳酸菌』。この乳酸菌が『生きている菌(生菌)』であっても『殺菌されている菌(死菌)』であっても効果が変わらない、というような話がネット上で話題になっていましたが、実際のところはどうなのでしょうか?
結論から言えば、今回話題になっている乳酸菌については、研究現場でもまだ明確な白黒がついていないのが現状です。
しかし、生きたまま腸に届くことで死菌にはない生菌独特の体内での作用があることは少しずつわかってきています。
逆に今までは生菌じゃないと意味がないと思われていたことが死菌でも大丈夫だった、ということもわかってきているようです。
ようするに、『生菌じゃないと意味が無い』とか『死菌も生菌も変わりはない』と一面的に答えを出すのは現時点では問題があると思います。
乳酸菌を体に取り入れたときの作用
まず、生菌を摂取した場合に起こる宿主への作用としては、2つの物があげられます。
1)生菌という異物が腸内に入ったことによる腸管免疫の一時的な活性化
2)一時的に腸内に善玉菌が増えることで、乳酸菌が腸内に常在している乳酸菌のエサになり、もともと腸内にいた乳酸菌が増えることで、腸内細菌のバランスが良好になる。
このような作用があると考えられます。
しかし、この1と2の働きは、死菌を摂取した場合でも起こると考えられますので、基本的に生菌と死菌では作用の質に差はないといえるでしょう。
事実、死菌を配合したサプリや食品を摂取した場合でも、データでは便秘の改善や多少の寿命の延長といった効果は動物実験の段階ですが見られているようです。
生きている菌は効果が強いとされる根拠とは
しかしながら、「生きている菌の方がより効果が強い可能性がある」と考えられているのは、いずれ駆逐されてしまうにせよ、生菌であれば腸内で増殖が可能であり、同数の死菌を摂取した場合よりも長く、あるいは強く働くことができると考えられているからです。
ようするに死菌だと腸内で増えることは無いですが、生菌だと腸内細菌を増やす可能性が大きいということです。
例えばですが、生菌10億個を含む製品と死菌100億個を含む製品とどちらが優れているか、というような実験は直接行わないことには何ともいえません。
生菌の10倍もあれば死菌のほうが効果はあるかもしれませんし、そうでないかもしれません。
今の段階では「生菌でなければ体に良い働きはない」という決めつけも良くないですし『死菌も生菌も変わらない』と結論付ける必要もないでしょう。
死菌に関して言えば、殺菌をして使用するので、食品として加工するには使用しやいなどのメリットもあるので、その辺りも上手に活用して消費者へ提供してくれるとよいですね。
状況により生菌のもの、死菌の物を使い分けていくぐらいの柔軟性があっても良いと思います。
健康に良いという情報を鵜呑みにするのは危険
今回の乳酸菌の『生菌・死菌』の話題を見るにつけ、一元的な情報に左右されないことが大切だと感じます。
1つの情報や論文だけで結論付ける必要もないし、踊らされることが無いようにしたいですね。
現在は『健康によい』とされている食品や成分が溢れかえっております。
注意していただきたいのが、医薬品と違い、食品で使用されている成分はその安全性や有効性が非常に曖昧で、未知数でよくわからないものが多いということです。
事実サプリメントなどを中心に食品での健康被害が非常に多く報告されています。
普通に飲食するうえでの安全性はある程度保証されているものでも、その食品の成分を何十個分、何千個分、物によっては何万個分も大量に摂取して本当に安全なのかは医薬品と違い、国が保証してくれるわけではありません。
せっかく健康のために、と摂取するものなので情報含めて注意して選んでいきたいですね。
(早川 弘太/健康コンサルタント)
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