予想されていた台風直撃だったのに首都圏で帰宅困難者が出たのはなぜか

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エキサイト天気より引用「台風15号9月21日0時時点での進路予測」

【今回のまとめ】
●「台風進路予報図」がざっくりしすぎてる
●地域ごとの「暴風域に入る確率」がめちゃ便利なので台風が来たら要チェック
●鉄道の運休予報のようなものができると帰宅困難者が出るのを回避できるかもしれない
●台風のときはNHKをチェックしよう。NHKの災害報道はわかりやすい

台風15号が日本を直撃しました。震災被災地をも台風が襲い、仮設住宅から避難された方もいらっしゃったようです。お見舞い申し上げます。

今回は台風と首都圏の帰宅困難者について考えたことを書いてみます。21日は学校等では休校も多かったようですが、首都圏では通常通りに出勤した方もおり、多くの帰宅困難者が出たと報じられています。東京都内主要駅では、一駅で「数十万人の帰宅困難者」が出て、駅の周辺で行列を作っている方の映像がニュースで流れていました。たいへん危険な状態だったようです。

ガジェット通信編集部は東京の渋谷区にあるのですが、台風が直撃する21日は仕事場への出勤を控え自宅勤務に切り替えることを前の晩のうちに決定していました。

なぜそうしたかというのを簡単に書きます。

台風が21日昼過ぎから夜まで首都圏を直撃し暴風域に入るという予報

つまり帰宅時に電車が運休する。みんな家に帰れなくなる

というわけで、出勤せずに自宅待機、自宅作業にした

もし鉄道網の停止による混乱にスタッフが巻き込まれ、駅や電車内に閉じ込められるようなことになったとしたらスタッフの疲労は相当なものになってしまいますので、それは会社としても大きな損失となります。翌日疲れて仕事にならないという場合も考えられます。そんなわけで、ガジェット通信編集部メンバーは台風が接近した21日、基本自宅で仕事をしていました。その日、ゲストを迎えて生放送の予定もありましたが、ゲストの方に連絡の上放送内容を大幅に変更し自宅からの放送に切り替えをおこないました。

同じように自宅待機とした会社もあるとは思いますが、21日は結局大変な数の人が帰宅困難となり、主要駅には数十万人の人が押し寄せたという報道も見ました。つまりこれは、その日出勤をさせた会社が多かったということです。台風直撃の日に「出勤させない」という判断ができなかったのはなぜなのでしょうか。気象のことはよくわからないのですが、その理由などをつらつらと考えてみます。

ニッカンスポーツサイトより引用「台風15号の予想進路(共同)」

※画像はニッカンスポーツサイトより引用

いわゆる台風の進路予想がざっくりしすぎてわからんかった説

台風のときによく見る、台風の進路予想を示す予報円が描かれた図。あれが結構ざっくりしすぎててよくわからんのではないかという気がしてます。特にスピードの速い台風では顕著です。あの図は、何時間かおきの台風の位置の予想を示し、中心の円に台風が入る確率は70%。24時間後までは3時間刻みの予想が発表されているらしいですが、媒体によって図の細かさはさまざまで、6時間刻みだったり、12時間刻みだったりと、かなりざっくりしています。あの図で、だいたいの進路はわかります。例えば今回首都圏を直撃するのもわかります。しかし、何時頃、自分が居る場所が暴風域に入るかってのは、さっぱりわからないんじゃないでしょうか。

要するに、「来るのはわかるけど、いつ自分のとこで暴風が吹くかはよくわからん」のです。そこで思ったのが、主要都市の台風通過予想時間をわかりやすくメディアで発表すると良いのではないか、ということです。例えば、

東京が暴風域に入る予想時間帯は13時~19時です

みたいな感じです。

実はその情報、発表されているんです。「暴風域に入る確率」という情報で、東京都が暴風域に入る確率は気象庁サイトのここで確認できます。

暴風域に入る確率:東京都
http://www.jma.go.jp/jp/typh/storm-319.html?t=1115

暴風域に入る確率が、時間帯ごとに区切って表示されます。台風15号では東京の場合、昼から夜まで暴風域に入る確率がとても高いとすぐ確認できました。要するに、ここでグラフが立ってたらその時間帯は外に出るな、ということになります。そして、都市部であればその時間帯交通網は停止するということがわかります。この情報をもっとわかりやすく各メディアが伝えると、いつが危険かということが一目瞭然となり、自宅待機にするか迷っている会社幹部の背中を押すこともできるのではないでしょうか。

台風が加速して接近するという情報を知らない人が多かった

のろのろしていた台風が偏西風の影響で加速していくというのはNHKニュース等では繰り返されていましたが、私の周りでもそれを知らない人が意外と多かったです。ネット上の新聞サイトでもそのことはとりあげられていましたが、さほど注目されていなかったのでしょうか。やはり、台風が近づいている時などは、災害情報に重きをおいているNHKニュースのチェックはやったほうがいいように思います。ネットでファンの多いNHKニュース7の「たけたん」こと武田真一アナウンサーも台風15号には「最大級の警戒を」と繰り返していましたよ。

「電車が止まるでしょう」ってのはどこも書いてない

首都圏で働く人達の最大の関心事は「電車が動くかどうか」です。早い段階で「帰りの電車は止まるでしょう」と言われてたら、出勤前に自宅待機を指示する会社も多かったでしょうし、可能なら自主的に出勤を控える人もいたのではないでしょうか。というわけで例えば

東京の鉄道運休予報 午後運休のおそれ
首都圏の鉄道は本日13時~19時の間暴風域に入るため運行をとりやめるでしょう。復旧までには時間がかかるでしょう。

みたいな予報を出せたらどうでしょう。もしかしたら今回のような帰宅時の混乱は避けられたのではないでしょうか。

もちろん、先にご紹介した「暴風域に入る確率」を見ればどの時間帯に暴風域に入るかわかりますし、暴風域に入れば鉄道は止まるだろうということはわかるのですが、それをもっと誰でも直感的にわかるようにメディアが表現してあげると、混乱が避けられるのではないかと思うわけです。

台風での帰宅困難は予測可能

半年前、3月11日の大震災の後も首都圏では鉄道網が停止し、多くの方が帰宅困難となっていました。この時は予想ができなかった大地震が原因でしたが、今回は予想されていた強力な台風の通過です。本来であれば、台風通過時の帰宅困難者の発生は避けることができたはずです。

さらに東京の23区のうち17区で、帰宅困難者への具体的な対策をとらなかったという報道もありました。NHKの取材に対し「台風が過ぎれば復旧するので帰宅困難者とは言えない」と回答した区もあったとのこと。ちょっとびっくりする回答です。台風通過後、必ずすぐに電車が動き出すとは限りません。先日の台風では和歌山のJR紀勢線で鉄橋が流されていました。台風の影響で鉄道設備に何らかのトラブルが起きる可能性がゼロだとは言えないのです。

台風による帰宅困難の問題に関しては、予想しあらかじめ防ぐということとあわせて、実際に帰宅困難者が出た場合の対応についても再度考える必要があるように感じました。

※トップ画像はエキサイト天気より引用「台風15号9月21日0時時点での情報」より


参考)
防災気象情報:台風15号
http://www.jma.go.jp/jp/typh/1115.html

■偏西風の影響で加速し高速縦断する台風

【台風15号】のろのろ一転、高速縦断 – MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110921/dst11092100350003-n1.htm

asahi.com(朝日新聞社):台風15号、種子島から北北東へ 偏西風で加速の見込み – 社会
http://www.asahi.com/national/update/0920/TKY201109200091.html

■台風の予想進路

台風15号、浜松市上陸 死者は6人に – 社会ニュース : nikkansports.com
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20110921-838316.html

台風15号:名古屋市内で車水没 7台から運転手ら救助 – 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110920k0000e040096000c.html

台風15号の特徴(2011年9月20日) – 日直予報士 – 日本気象協会 tenki.jp
http://tenki.jp/forecaster/diary/detail-3806.html

写真:台風15号、首都圏直撃の恐れ 日本気象協会が特徴・被害の恐れを発表 | 財経新聞
http://www.zaikei.co.jp/photo/81368.html

台風15号 九州の南海上を北上(20日)(2011年9月20日) – 日直予報士 – 日本気象協会 tenki.jp
http://tenki.jp/forecaster/diary/detail-3803.html

台風15号 情報第128号 | 台風情報 | エキサイト天気
http://weather.excite.co.jp/typh/t-1115-128/
21日0時発表の情報

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深水英一郎(ふかみん)

トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

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