「逃げちゃダメだ」 孫正義”校長”、経営者の危機克服の極意を語る

ソフトバンクグループの孫正義代表

 ソフトバンクグループは、孫正義代表の後継者発掘・育成を目的とした「ソフトバンクアカデミア」を開講し、毎年社内外から生徒を募集している。2011年9月2日に行われた特別講義「危機克服の極意」で孫”校長”は、「危機に直面したときにこそ、考え、自己進化できる」として、 「危機」を過去からの危機・現在の危機・未来の危機の3つに分類。スピードネットからの撤退やYahoo! BB顧客情報漏洩事件、リーマンショックなど、ソフトバンクの10の危機を例に挙げながら講演した。この模様はニコニコ生放送でも中継された。

 孫校長の危機克服法は、事業から撤退するときは、相手に心からの詫びを入れ、せめて被害を最小限に抑えられるように決断を早くするというもの。逆に攻めるときも、一気に注力して「勝ち癖」をつける。

 こうした姿勢は世間からの非難に対する態度にも表れている。孫校長は、

「もし我々が、50年も100年も続いている立派な会社だとしたら、何かあっても叩かれる度合いは小さい。ソフトバンクは新興勢力で、ただでさえ『如何わしい』と疑われている。だから、世間が大変なところにアクションを起こすと、『火事場泥棒だ』、『不幸に乗じて金儲けをしようとしている』と非難される」

「意図して(問題を)起こすのは言語道断だとして、どんな会社でも、何かのミスとか事故とか事件とか、必ず起きるものだと思ってください。それが起きたときにどう対応するかが物事の大きな別れ道になる」

などと語った上で、そういう困難なときにこそ、リーダーが腹を括り、先頭に立たなくてはならないと訴える。

■苦しいときこそ、包み隠さずに公開する

「ソフトバンクアカデミア」の模様

「何か欠陥が見つかった。それを見つからないようにするか、なるべく発表を遅らせるか、常務や専務に説明に行かせるか。そうではなく、トップが説明に真っ先に行く、記者会見を真っ先に、一刻も早く行う。そして、質問が途絶えるくらいまで洗いざらい行う」

 会社が開く会見では、一定の時間が経つと打ち切られ、質問等がシャットアウトされてしまうことが多い。しかし、孫校長は逆に苦しいときほど長時間の会見を開き、質問が途絶えるまで徹底的に答えるという。その理由は、隠していると思われると、バッシングはエスカレートしていくからだ。

 孫校長はこの会社とバッシングの関係を、ハンターとライオンの関係にたとえる。ライオンと遭遇したハンターは、決して逃げない。背中を見せて逃げだすと、ほぼ確実に襲われるからだ。そのため、一番怖いけれど、勇気を出して、ライオンの目と正面から向き合うことが大切だという。

「自分が心の底から公明正大で、心の底から本当に多くの人々のためを思ってやろうとしているかという自信があれば、逃げも隠れもせずに、誤解を受けようが、一時的に非難されようが、正面突破で行くべきだ」

 こうした勇気は、経営者・企業の揺らぎのない理念やビジョンに宿ると言えるかもしれない。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]「逃げないこと」部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv62172526?po=news&ref=news#1:15:56

(野吟りん)

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