誤解だらけのアドバイスがママたちを追い詰める? ”吃音ドクター”が伝えたい生の声とは
言葉が円滑に発音できない吃音(きつおん)症。100人に1人の割合で存在し、「ぼぼぼく」のように言葉を繰り返す「連発」、「ぼぉーく」のように言葉を引き伸ばす「伸発」、「………ぼく」のように言葉が詰まる「難発」、の3種類が代表的な症状です。いずれも発症後3年で約7割の子どもが自然に回復すると言われていますが、原因や治療法はまだ確立しておらず、成人後も症状が続く人も存在します。
さて、みなさんは自分の周囲で「ぼぼぼくね」と、うまく話せない子どもを目にしたとき、母親に対して、以下のような言葉をかけてしまっていないでしょうか?
“母親の愛情が足りないんじゃないの”
“かわいそうだから、早くなんとかしてあげたら”
“厳しいしつけのせいでは?”
実は、吃音のある子の母親たちは周囲の無理解に傷つくことも多く、ママ友や義両親、ときには教育関係者からさえ、心ない言葉をかけられて、自分を責めてしまうことも少なくありません。
そんな悩めるママたちにおススメしたいのが、吃音ドクター・菊池良和(きくち よしかず)さんの最新刊『子どもの吃音 ママ応援BOOK』。
自身が吃音の当事者であり支援者でもある菊池さんは、これまでにも『ボクは吃音ドクターです。』(毎日新聞社刊)、『吃音のリスクマネジメント――備えあれば憂いなし』(学苑社刊)、『健康ライブラリー 吃音のことがよくわかる本』(講談社刊)などの著書を多数執筆。吃音に対する偏見や誤解がいまだに根強いことを指摘し、吃音の改善のためには、周囲が正しい知識を身に着け、適切な支援を行うことが必要だと述べ、啓発に尽力しています。
同書によれば、吃音は言語発達の盛んな2~4歳ごろに発症するものであり、「親のしつけが原因」「精神的な弱さが原因」というのは、まったくの誤解。「最新の研究でも、吃音を発症する子は言語機能が良い子が発症するデータが示され、急激な言語発達にたまたま生じる副産物」(同書より)と言われていることから、菊池さんも診察の場で”頭が良すぎるからだよ。頭の回転が速すぎて、口がついてこないからだよ”と肯定的に伝えるようにしたところ、子どもたちも笑顔になったことがあったのだとか。
また同書の中では、吃音と併存する場合もある症状、「場面緘黙(ばめんかんもく)症」に言及していることも見逃せません。
この場面緘黙症とは、家庭では普通に話せるのに、幼稚園や学校など特定の場面では一転して話すことができない症状で、200人に1人の割合で存在し、吃音や自閉症スペクトラム障害(ASD)などの問題と併存する場合もあります。 いわゆる”人見知り”や”恥ずかしがり屋”との違いは、1ヵ月以上の長期および広範囲で症状が継続し、幼稚園や学校などの社会生活に支障が出るほど症状が強いことです。
理解が進んでいない現状では、見過ごされ放置されることも多々ありますが、菊池さんは「吃音と同様に『わざとじゃないんだよ』と周りの友だちに伝える必要があります」(同書より)と述べ、早期支援の必要性を訴えています。
同書「あとがき」で「『吃音のある子のママは悪くない』この一言を伝え、応援するために、本書を書きました」(同書より)と述べるとおり、自身の臨床体験も交えて、菊池さんがママたちへのエールを込めて執筆した同書は、吃音に悩む子どもの親や関係者なら必読の1冊となっています。
【関連リンク】
一般社団法人 日本言語聴覚士協会
https://www.jaslht.or.jp/
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