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「”脱原発”ではなく”原発ミニマム”論者」 孫正義×堀義人 対談全文書き起こし(2)

孫正義氏

 原子力から自然エネルギーへのシフトを訴えるソフトバンク社長の孫正義氏は2011年8月5日、ビジネススクールなどを展開するグロービス代表で「電力安定供給論者」の堀義人氏と、日本のエネルギー政策について公開討論を行った。

 堀氏が「100年先を見据えたエネルギー政策を、子供たちの未来のために」というテーマでプレゼンを行い、「性急な脱原発は現実性を欠いており財政危機を招く」と語ったのに対し、孫氏は「猛省しているのか」「どういうコスト試算をしたのか」と疑問をぶつけた。そして孫氏は、自身のプレゼンの番を迎えると、原発の真のコスト試算や電力会社の問題点を挙げながら、一方で自らを「脱原発」や「減原発」ではなく「原発ミニマム論者」と語った。

・番組を視聴する – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv58739430?po=news&ref=news#31:46

 以下、孫氏と堀氏のやりとりを全文、書き起こして紹介する。

「脱原発を叫ぶ前に――」 孫正義×堀義人 対談全文書き起こし(1)
http://news.nicovideo.jp/watch/nw97044

■原発の真のコストとは

孫正義: (テーマは)「日本の未来のエネルギーを考えて」。原発は3つの神話があった思います。一つは「安定的な供給電源」。いま、堀さんも仰いました。原発が無くなると、安定的な電源が無くなって、産業界が成り立たなくなるのではないか。「安い」という神話があった。これが高くなると産業が成り立たない、人々の生活が苦しくなる。「安全」だという神話があった。これもどうであろうか。この3つの神話について、今日僕は「この3つの神話は崩れた」ということを申し上げたい。

 一発目は、「安全、安定的な電力の供給源である」ということ。今回の大事故の前に、既に東京電力は、例えば2003年の所でトラブル隠し。今回の事故で僕は初めて東京電力は「とんでもない会社だ」という風に実は思ったのですが、これはどうも体質であった。過去にもトラブルがあって、それを隠して、社長、会長がクビになって、原発も全面停止、運転停止ということが過去にありました。全面停止になると、いきなり今まで30%とか頼っていた電力が、ズドンとゼロになるわけですから、オール・オア・ナッシングの危険性がある。これは安定的な電力供給源であろうか。全停止のリスクがある。新聞にも出ています、「東電の原発すべて停止。トラブル隠し」。「隠匿体質」というのは、今回だけではなくて、昔からあったのだなと、改めて僕は今回学びました。

 2番目の点、「安い」。本当に安いのか、安価なのかという点ですが、「原発のコストが安い、安い」と、堀さんも仰いました。多くの原発擁護論者は言います。でもそのコストは、国民が負担している税金の中から負担している交付金。僕に言わせれば、地方への賄賂です。「このお金上げるから、原発を抱えて下さい」。交付金漬けになってしまって、財政がそれに頼っている。今回の事故の賠償金、それから産業の被害、つまり、今まで交付金だけでもどのくらいあったのか。原発1基につき、開始前で1基当たり450億円。運転を開始してから35年間で1基当たり約2000億円。1基当たり合計で2500億円。これを54基で掛け算すると、13兆円もの交付金が今まで払われていて、それは今まで電力会社の電気代には表れていない。でも本質的には電気代ではないのか。原発のコストはこれを足すべきだ。これをオミット(除外)して原発が「安い」というのは、全然これはいかさまだ。

 今回の事故でも、法案(東電救済法案こと原子力損害賠償支援機構法案)がまさに8月3日に可決ということがありましたが、「援助に上限を設けない。何度でも援助する。全額援助する。電力会社を債務超過にさせない、潰さない」。つまり丸抱えの国による補償ですね。「上限なし」。これはすべて国民が払っているお金だ。これはすべて、原発の真実のコストの重要な部分だ。今議論されている原発事故の補償金の額は、本当はもっとはるかに大きいのではないか。チェルノブイリで起きたもの、ベラルーシのところだけで事故後30年間で約19兆円、損失額に対して見積もられています。IAEA(国際原子力機関)です。堀さんのお兄さんのところです。これはウクライナとかロシアとかそういうところは足していません。ベラルーシだけでそれだけの金額。これを3つ足すと一体どのくらいになるのか、恐ろしい金額になる。つまり事故は起きて、その1年2年で処理が終わるのではない。30年40年、いまだにまだずっと続いているということ。

 産業被害、農産物、今もう、牛の肉を食べるのでも「この肉は大丈夫か」とドキドキしながら、ロシアンルーレットでもするような感じで食べる。これっておかしくないかということです。農産物、観光、例えば食品の輸入規制が各国で、日本の福島あるいはその近辺のものについては、全食品を輸入規制、全面停止というような所が続々と現れている。この被害コストは原発のコストではないのか。それから観光客も半分に減ってしまっている。この産業のロス、産業被害、これはまさに原発のコストではないのか。

■3つの安心神話は崩れた

 それから、先日国会でも児玉先生(東京大学アイソトープ総合センター長:児玉龍彦氏)から発言がありました。感動的な内容でしたけれども、「イタイイタイ病」のカドミウム汚染。この土地の地域の除染をするのに、国費の投入で1500ヘクタールで約8000億円かかったという話がありました。今回の福島の事故はその1000倍ぐらいになるのではないか。もし仮に1000倍だとすると、800兆円。恐ろしい金額になる。800兆円本当に使っていいのかどうかは別として、そのくらい除染にはコストがかかるということです。長くて暗くてつらい作業だ。

 つまり13兆円の交付金と、無制限の上限なしの賠償金、産業被害のもの、除染コスト、こういうものを入れ始めると、本当に原発は安いのかとつくづく疑問が出てくる。なぜかと言うと、10社の電力会社、すべて足しての年間の売上が15兆円。それをはるかに超える被害額がある。つまり、すべての売上をはるかに超える。これって一体どうなるのだろう。もちろん、すべての電力が原発で賄われている訳ではありません。ですから、原発のコストだけに換算すると、ものすごい一番高いものにやっぱりついたのではないか。過去40年分の原発によって得た利益は、一発の事故で全部吹っ飛んだということです。

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