宮台教授、脱原発依存の本質を語る 「菅首相が狂っていても、原発止めれば大変な功績」
なぜ「脱原発依存」が必要なのか――。首都大学東京の宮台真司教授は、原発社会からの離脱が、”依存体質”の根強く残る日本社会を変えて、共同自治体を確立することにつながると主張する。2011年7月25日に放送されたニコニコ生放送「福島みずほ×宮台真司ニコ生対談『原発社会からの離脱』を語る」に出演した宮台教授は、「脱原発」の本質に迫り、「菅首相が狂っていても、原発止めれば大変な功績」と語るなど、その重要性を説いた。
■原発社会からの離脱の真の意味は?
以前から「依存脱却」や「共同体自治」を訴えてきた宮台教授。日本社会の問題点は依存体質にあると指摘する。その一つが電力会社への依存。宮台教授によると、電力会社は地方の企業に多額の出資をしているという。さらに、文化活動にも精力的にお金を出しており、「地域社会全体が、地域独占供給体制を持つ電力会社にほぼ依存する状態」と指摘。その上で、このような依存体質が「日本社会の治らない病気の中心的部分」と苦言を呈した。
なぜ電力会社への依存が悪いのか。宮台教授はこう説明する。「ヨーロッパ等の各先進国が発送電を分離するときの、いくつかある動機の重要な部分は、巨大電力会社に何もかも依存してしまうことによって、国論が歪むこと。つまり、『何が妥当なのか』『何が合理的なのか』についての政策的な議論が歪むことが大きな理由」と述べ、電力会社への依存が政策決定過程で本質を見失わせることを指摘した。
そして宮台教授は「脱原発」が、日本社会の構造を変えるためにも重要と主張する。
「原発社会からの離脱の真の意味は、従来の巨大システムに依存するかたち、あるいは集権的な中央政府に依存するかたち、あるいは自明性に依存するかたち、巨大マスコミに依存するかたち、地方の産業を中心に電力会社の資本に依存するかたち、こういうのを全部やめて、共同体自治を確立するということと、実は自然エネルギーは表裏一体」
と語り、原発依存からの脱却が日本社会に蔓延する依存体質からの脱却、ひいては共同体自治につながると訴えた。
■菅vs.海江田は、狂っているもの同士の幻魔大戦
宮台教授は、今後のエネルギー政策について「脱原発依存」を基本に据える方針を表明した菅直人首相に一定の評価を下す。脱原発という理念さえ貫き通すのであれば「菅首相が狂っていても何でもいい」と、ツイッター上でも発言している持論を展開。「菅さん、ごめんなさいね」と言いつつ
「(たとえ)菅が狂っていようが何であろうが、原発を止めてくれるだけで大変な功績」
と述べた。さらに、「『菅おろし』もいいけど、菅をおろす側がエネルギー問題について、あるいは共同体自治について見識がある政治家であれば、『菅おろし』にも大賛成。そこは単純な問題で優先順位」と語る。そして宮台教授は、菅首相と海江田万里経産相の対立についても触れ、
「菅さんが別に狂っていてもいい。海江田さんも狂っているから。狂っているもの同士の幻魔大戦みたいなもの。さて、ここでどちらに加担するかみたいな話。菅さんが全幅の信頼を寄せられる人間か、素晴らしい政治家かなんて、簡単に言えば”どうでもよろしい”。今問題なのは物事の優先順位で、原発に依存する=電力会社に依存する=中央政府に依存する、巨大システムに依存する、自明性に依存する、任せて文句をブーブーたれる――みたいな政治文化をそのままにすること。そこから舵を切るために、最初のきっかけ、そのトリガーを引く。狂っている菅でもいいから、引かせろよちゃんと。そうしたら、いろんなことにつながっていく可能性が出てくる」
と舵を切るのは誰であろうと、「脱原発依存」が最優先課題との認識を示した。
また宮台教授は視聴者から「マスメディアの原発関連の報道をどう見ていけばいいのか?」と質問されると、「マスコミを信じない。以上」と切り捨てた。その上で、
「じゃあ、『何を信じればいいのか』ということは考えないでほしい。『絶対安全』とか『絶対危険』などの議論を、誰かに頼るのをやめてほしい。リスクマネジメント的な評価を自分たちで行って前に進む。誰かの情報に依存して前に進むのはやめる。マスコミや特定の研究者・専門家の議論に依存するのは絶対にやめてほしい」
と述べ、ここでも「依存」からの脱却を訴え、個人で判断することの重要性を強調した。
◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]「菅首相が狂っていても何でもいい」発言から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv57490831?po=news&ref=news#05:53
・[ニコニコ生放送] 視聴者の質問から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv57490831?po=news&ref=news#28:35
(三好尚紀)
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