「終わりなき日常」の終焉 東浩紀、再び大災害が起きたら「みんなパニックになる」
批評家・東浩紀氏による言論誌「思想地図β』とコラボレーションしたニコニコ生放送「ニコ生思想地図」。第2回放送では編集”家”・竹熊健太郎氏をゲストに招き、「『終わりなき日常』の終わり」をテーマにした討論が行われた。番組で東氏は、東日本大震災直後に政府や東京電力から発表された情報は「結局は不正確」だったとし、「これに似たような災害が次回起きた時は、みんな今度は最初から政府の言うことを信じない前提になるから、パニックが起こる」と語った。
番組タイトルにある「終わりなき日常」は、かつて社会学者・宮台真司氏が著した『終わりなき日常を生きろ』で知られるようになった言葉で、延々と”日常”が続く状態をいう。番組に出演した竹熊氏もまた、95年のオウム真理教事件を受けた自著『私とハルマゲドン』において、自分たちがハルマゲドン(終末戦争)を待ち望んでいた世代であることを認め、結局それが起こることはなかったとしている。
だがそんな「日常」は、3月11日に発生した東日本大震災によって、もろくも崩れ去った。地震とそれにともなう福島第1原発の事故により、事態はまさに劇的に変化した。これについて竹熊氏は「いま思えば、オウムの事件は3.11の予告編だったような印象を受けている。日本の成長を支えてきた仕組みが崩壊した。これは20年前から続いていたが、いよいよどん詰まりにきた」という。
■震災直後盛んになった”安全厨”、”危険厨”のレッテル貼り
「世界に誇る日本の技術で作った原発だ。メルトダウンは起こりえない」。「いや、それは正しくない。政府や東電の情報は鵜呑みしてはいけない」。――”日常”が終焉を迎えた震災直後には、こうした議論がツイッターを中心にインターネット上で盛んに交わされ、前者は”安全厨”、後者は”危険厨”としてそれぞれ「レッテル貼り」がなされた。
東氏は震災直後から「原発事故は甘くない」と政府や東京電力が発表する情報について疑問を投げかけてきたため、ツイッター上では「不安を煽るな」などと一部から”危険厨”に認定されてきた。だが東氏は、政府や東電が伝えてきたことは「結果的に不正確」であったとし、
「原発がメルトダウンしているかどうかわからない状況の場合は、最悪のことを考えて行動すべき」
と当時を振り返りながら、
「あの時(震災による原発事故発生直後)は『政府とか東電のいうことを信じようよ』というのが多数派だった。もし、これに似たような災害が次回起きた時は、みんな今度は最初から政府の言うことを信じない前提になるから、パニックが起こる。それは仕方がない。今回、政府は最悪なことをやったと思う。政府は短期的には情報を隠してきたんだろうけど、それによって信頼が落ちたから、次回は信じてもらえない」
と語った。
これに対し、竹熊氏も「『メルトダウン』と(インターネットに)書こうものなら叩かれた」と同じく”危険厨”とされたエピソードを語り、「危険厨に越したことはない」と東氏の考えに賛成した。その上で、
「原発政策が間違っていたわけだし、『安全だ』と言って(おきながら)、ろくに安全対策をやってなかったことがバレた。。…虚脱感です」
と政府の対応を振り返った。
(松本圭司)
◇関連サイト
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