ツイッターの”モニタリング”事業に日弁連が抗議声明「表現の自由を侵害する恐れが大きい」

日本弁護士連合会の抗議声明

 経済産業省・資源エネルギー庁が業者に委託した、いわゆる”ツイッターのモニタリング事業”について、日本弁護士連合会(日弁連)は2011年7月29日、抗議の声明を発表した。

 このモニタリング事業についてはインターネット上で「ツイッターの監視につながるのでは」という議論がなされるなか、7月15日に資源エネルギー庁の「総合的な評価」により落札業者が広告代理店のアサツーディ・ケイに決まっていた。日弁連の宇都宮健児会長は声明で、「政府が『不正確』と考える情報を一方的に批判することにより、情報を発信する者に対して萎縮効果を与える結果となり、憲法21条の表現の自由を侵害する恐れが大きい」としている。

 「ツイッター、ブログなどインターネット上の原子力や放射線等に関する情報を常時モニタリングし、風評被害を招くおそれのある正確ではない情報又は不適切な情報を調査・分析すること」――。以前、この事業に対して、ツイッター上では「いきすぎると言論統制」や「こんなもの違憲。絶対ダメ。恥を知るべき」といった批判的なコメントが多数を占め、ニコニコニュースでも取り上げた。

 同庁担当者は8月1日、ニコニコニュースの電話取材に応じ、「2業者が参加した入札でアサツーディ・ケイが落札した」「落札額は約7000万円」と話した。また、同担当者は、アサツーディ・ケイが落札した理由について「技術点(事業内容のプレゼンテーション)と価格点(予算の中で収まっているか)を総合的に評価してのこと」と語った。なお、事業期間は2012年3月30日までだが、開始日は「調整中のため未定」だという。

 一方、日弁連は7月29日、「原子力等に関する不正確な情報又は不適切な情報に対する常時モニタリングに関する会長声明」を日弁連のホームページ上で発表した。声明では、

「原子力発電や放射性物質の健康被害に関する情報は、科学的に評価が定まらないところもあり、何が『不正確な情報』であるかの根拠が不明確である。そのため、これによって、政府が『不正確』と考える情報を一方的に批判することにより、情報を発信する者に対して萎縮効果を与える結果となり、憲法21条の表現の自由を侵害する恐れが大きい」

とし、さらには九州電力の「やらせアンケート」や原子力安全・保安院の「やらせ質問」を糾弾。

「このような背景の下、市民はより正確な情報を求めようとして、これまでインターネットを利用する機会が少なかった人までもが、専門家やジャーナリストらがツイッターやブログで発信する情報を得ようとしたり、有益だと思える情報をツイッターなどで相互に伝えようとしているのである」

と、モニタリング事業を「直ちに中止」するよう求めている。

(山下真史)

◇関連サイト
・[日本弁護士連合会] 原子力等に関する不正確な情報又は不適切な情報に対する常時モニタリングに関する会長声明
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2011/110729_4.html

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