これまでのRettyを壊す人材がほしい―― 武田社長が語るRettyの2020年

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月間100万人単位でユーザー数を増やしている実名グルメサービス「Retty」。運営する株式会社Rettyは今年、10億円の資金調達を実施し、年内の海外展開に向けてまい進している。

一見、その輝かしい実績を見れば順風満帆に見える同社だが、社長の武田和也さんは現状に危機感すら抱いている。Rettyが目指す次のステージはどこにあるのか――

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武田 和也(たけだ・かずや) Retty代表取締役社長

1983年愛媛県生まれ。地元の高校を卒業後、青山学院大学に進む。大学時代は、インターン先の社長に提案してECサイトを立ち上げるなどして過ごす。2011年に「Retty株式会社」を設立し社長に就任。現在に至る。

「まだゴール地点の2~3%」

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「Rettyは外から見れば大きな資金調達をして、成長している企業のイメージがある。だからRettyの成長に乗っかってみよう、伸びてるから入りたい、スタートアップが人気だから入ってみたいといった人はたくさんいるのですが、今、そういう人材はほしくないんです。Rettyはまだまだこれから。いくらでも変えられる。自分が入ればこういうことできるのに。そういう想いを持った人が必要なんです

武田さんは今後のRettyの成長のためには「採用」が鍵を握ると話す。

「前提として、Rettyがこれから目指すべきものはとても大きいです。先日、2020年に向けての構想を発表しました。国内、海外、インバウンドという3つの軸で、それぞれ目標を立てています。そのゴール地点に対して、今のRettyは2~3%くらいしかできていないと思っています。

そうなったとき、残りの97%を埋めてくれるような、今までのやり方とは違った方法を提案できるような人が必要になる。社内では『イノベーション人材』と呼んでいるのですが、そういった方々を増やしていきたいんです

2020年の市場環境を見据えた決意

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これまでのイノベーションや実績には目もくれず、ひたすら前を向く武田さんの目には、東京オリンピックを迎える「2020年」が映っている。

「2020年は、オリンピックによって日本が世界から注目を浴びるとき。日本にくる外国人も、今は1400万人くらいなのに、それが2000~3000万人になると言われています。そのぐらい、国内に来る人が増え、日本が世界から注目されているタイミング。そのとき、自分たちはどういう存在になっていたいかということを考えたんです。

すると『日本に来た方々に最高の体験をさせたい』という想いが浮かびました。海外の方が日本に来るとき、『観光』の次に興味があるのは『食』。日本に来る外国人がいいお店に出会えて、そこで日本をよく思って、帰ってもらう。それが2020年のゴール。『日本』というキーワードが世界中を飛び交うタイミングで、『日本といえばRetty』という状態にしたいんです」

一見、大それた目標にも思える。しかし、武田さんはこれまでもRettyとともに、大きなイノベーションと実績を得てきた。

イノベーションの2つの背景

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2010年の創業から、急激にユーザー数を増やしてきたRetty。ここまでの成長を遂げられたのには、「スマートフォン」と「インターネットの実名制の普及」という2つの背景があったと話す。

「これまでの口コミは、お店を評価する仕組みでした。『この店は何点だ』とか。でもRettyの場合は、自分の友だちに『あの店、おいしかったよ』と言うのを、そのままインターネットにあげているイメージなんです。

フェイスブックでも、あまり批判的なことを言う人はいないじゃないですか。どちらかというと、ポジティブな内容が多い。インターネットの発信コンテンツの質が、実名制によってどんどん変わってきているんだと思います

2010年創業当時は、フェイスブックはまだ日本でそこまで流行っていない。実名制がそこまで普及していないなかでRettyをスタートさせたのは、創業前にアメリカに行った際に見た光景から影響を受けている。

「創業前、どんなビジネスモデルで起業しようか考えるためにアメリカに行ったんですが、そこで衝撃を受けました。フェイスブックが、現在の日本くらい高い割合で普及していたんです。まったくIT知識がなさそうな子からあたり前のようにフェイスブックのアカウントを尋ねられる。これはすごいなと思いました。逆に、こうならなかったら日本はまずいとも思いましたね。当時の日本は「実名制なんてよくない」という流れがまだあったんですが、そこはもう、無視して進めていました(笑)

実名制だけではない、当時からスマートフォンが徐々に普及し始めたことが、Rettyを支えていたと言う。

「発信者の口コミを書く手段がパソコンをメインにしていたころは、ブロガーや口コミを書く人が1%未満に対して、見る人が99.9%以上でした。それが今では、スマホを使ってインスタグラムなどで知らぬ間に発信するようになった。これによって発信者と受信者のバランスは、20%対80%くらいに変動したんです。そして今後もこの比率はどんどん変動していくと思います。

スマートフォンが起こした影響は、発信する人を劇的に増やしたこと。これがいちばん大きなパラダイムシフトだったと思います。個人が発信できることによって、その質やユニークさはどんどん多様化されました。それによって受け手が得られる情報の価値も細分化されてきている。そのことはあまり外からは見えていないですが、重要なことだと思います」

「スマートフォンの普及」と「インターネットの実名制の普及」という2つの時流を掴み、ここまでの成長を手にしたRettyだからこそ、未来についても大きな覚悟ができているのだろう。

社内にRettyがもたらす未来が見える

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「職を通じて世界を変えていく」という社内スローガンはあるが、採用条件に「グルメであること」はない。しかし、自然と社員もユーザーとなって、Rettyがもたらす未来を体感していると言う。

「自分たちがサービスを使いながら、『どうせならおいしいものを食べたほうがいいよね』という発想に徐々に切り替わってきています。人によっては『どうせならいろんな店に行きたい』とか、どんどん行動も変わってきていて。これはとてもいいことだと思っています。

『Retty』を見ていると、行きたいお店があるから自然と『行きたい』ってボタンに手がいく。『どうせならおいしいところに行く』って、普通はある程度お金に余裕ができて、年を経てからたどり着く発想だと思うんですけど、でも『Retty』を通じて、そのタイミングが早くなる。これが、私たちが世界にもたらしたい変化です。社内の人間はすでにそのように変わってきていて、グルメでハッピーになってきている。『Retty』がもたらす未来が、Retty社内で実現できていることは、自信につながっています」

優れた人材をはじめ、より大きなイノベーションを起こすために不足しているものはまだまだ多い。しかし、これまでの実績と、社内に見え隠れするRettyがもたらす未来が、武田さんの背中を力強く押しているように思えた。

文・カツセマサヒコ

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