【資料公開】千代田区「特別職報酬等審議会」答申案への疑問(地方議会ニュース調査員 深水英一郎)

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2015年12月10日10時より第12回千代田区特別職報酬等審議会がおこなわれました。そこで配布された資料を公開します。

千代田区特別職報酬等審議会 答申案
https://drive.google.com/file/d/0B1_qJYetJNwAakpKOTBvMlV4aE0/view

この審議会の議論は「政務活動費を議員報酬に組み込んで使い途をわかりにくくしようとしているのではないか」として話題になり、メディアからも注目されています。

開始前から騒然、ピリピリした雰囲気に

今回おこなわれた第12回審議会は、多くの傍聴者とメディアが参加しましたが、冒頭、会長から報道側に撮影禁止が求められたり、委員から報道関係者の参加を疑問視する趣旨の発言がされるなどして騒然となっていました。また審議会の後半では答申の白紙撤回や継続審議の声も委員からあがっていましたが、会長は、変更はおこなわずこのまま終了すると述べ、審議会は終了となりました。

答申の内容を見ると、注目されている政務活動費の議員報酬への組み込みについてはそのままで、政務活動費を減らし議員報酬を増やすことによってお金を使いやすくするという考え方になっていました。これで透明性が保てるのか疑問です。

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調査せずにフルタイム前提

報酬に関しては、議員や区長らの勤務実態をフルタイム勤務相当であるとして算出されています。しかし議員アンケート等不十分で、実態の調査もおこなわないまま「フルタイム勤務相当」であるとしており、根拠が不明確です。例えば千代田区の議会開催日数は90日程度ですが、議会が開かれていない時は何をしているのか。フルタイムと言ってもよいのか、もっと調べる必要があります。審議会の議事録をみると、年末から翌年2月ぐらいまでは毎日何件も忘年会や新年会をはしごする実態について話し合われていますが、それって仕事なのでしょうか。きちんと調査すべきだと思います。データや調査に基づいていないということはすなわち印象のみでおこなわれている審議といってよく、これでよいのかと疑問を感じました。

会長にその点をきいたところ「議員さんにアンケートしようとしてくれたんだけど、協力してもらえなかった、協力できない理由はこっちが知りたいぐらいだ」とのことでした。では何を根拠に「フルタイム前提」なのかときくと「私の知ってる議員さんはそうだから」とのことでした。ここでも、もっときちんと調査すべきではないかと感じました。

理由不明確なまま期末手当を出す

期末手当については「議員報酬月額に45%を加算した額に支給基準率を乗じて算出」となっているのですが、審議の過程で「その45%を加算する理由が不明確」という問題提起があったようです。しかし結局不明確なまま、そのままで良いというまとめになっています。不明確なものを支払う理由などそもそもないと思うのですが、結局のところ理由がうやむやなまま議論は終わっていました。こんなことでいいのだろうかと思います。

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領収書の整理に時間を使うのはもったいない

会長の武藤氏に政務活動費をなぜ報酬に組み込む必要があるのかときいたところ、「議員が領収書の整理などといった細かいことに時間を使うのはもったいない」「議員は志の高い人達なのだからもっと信用すべき」といった持論を語っていただけました。ただこれはあくまで会長個人の持論であって、多くの人の納得を得られるものではないと思います。

結局、審議会の出した答申案をみると、まず報酬の考え方のベースとなる部分、「議員ら特別職はフルタイム勤務相当」というところからして根拠不明確ですし、なぜ公務員一般職の最高位である部長を基準として議員の報酬が決められるのかさっぱりわかりません。公務員一般職と選挙で選ばれた議員や区長をなぜ同列に扱うのでしょうか。そのあり方はまったく別物であるはずです。そもそも千代田区議会は年間90日程度しか開催されていないわけで、通常の感覚から言えばこれはフルタイム勤務とは言えません。そうではないというのであればきちんと調査すべきですが、それがなされていません。「これまで議論を積み重ねてきたのだから答申はこれで十分だ」という声もありましたが、大事なのはかけた時間ではないのではないでしょうか。

今後千代田区の議員や区長など特別職の報酬に関する議論はどうなっていくのか、引き続き注目していきたいと思います。

(地方議会ニュース調査員 深水英一郎)

参考資料)
審議会議事録より「千代田区議会活動概要
https://drive.google.com/file/d/0B1_qJYetJNwAWTUxb1JRcmdqWjA/view

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深水英一郎(ふかみん)

深水英一郎(ふかみん)

トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

ウェブサイト: http://getnews.jp/

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