中国当局は何に怯えているのか? 中国社会の矛盾と不満を分析
中国は2010年のGDP(=国内総生産)で日本を抜き、アメリカに次ぐ世界第2位になった。停滞する日本を尻目に、順調に経済大国への道を歩んでいるかのようだ。しかし、時事通信の中国総局特派員として2002~2007年の間、中国で取材をした経験を持つ城山英巳氏は、中国社会には格差が広がり、多くの矛盾と不満が渦巻いており、「格差社会で悲惨な状況」と分析する。
現在も時事通信外信部に勤務する城山氏は2011年7月11日、ニコニコ生放送の番組「ニコ生トークセッション『中国人一億人ネット調査~共産党より日本が好き?~』」に出演。司会のマーケティングアナリストの原田曜平氏が「中国の若い人たちはどれだけ辛い状況にあるのか?」と質問すると、城山氏は、中国では大学生数の増加とともに就職できない若者が増えている現象を取り上げ、「就職できないからワーキングプアになって、北京市の郊外に本当に安い数千円のアパートに蟻のように住む(=蟻族)」と解説。城山氏によると、彼らは「社会不安分子になる可能性がある」という。
また城山氏は、不動産価格の高騰が起こっているため「就職したとしても家を買えない状況だ」とした上で「(家賃が安いので)地下に住んでいる人(=鼠族)も多い」と紹介。その上で城山氏は、
「中国当局は、地下に住む人たちを把握しにくいということもあって、どんどん取り潰している状況だ。この前も蟻族の街も壊したり、社会不安予備軍みたいな人を潰していって、社会の安定を保つという方向に行っている」
と語り、中国政府の社会不安への対処法を説明した。
■中国は何に怯えているのか
中国は近年、東シナ海・南シナ海で軍事演習を行うなど、海洋権益をめぐって近隣諸国とあつれきを引き起こしている。2010年9月には尖閣諸島中国漁船衝突事件が起こり、日本でも中国に対する不満や恐れの表れとして「中国脅威論」が唱えられることがある。だが、城山氏は「社会に不満が渦巻いているのが中国の現状ではないか」と疑問を呈する。城山氏は「中国共産党の歴史は、腐敗とか格差にまみれた王朝を、それに怒った民衆が倒す革命の歴史だ」とした上で、
「共産党はまさにそれに怯えている。『不安がどんどん膨らんでいったら、自分たちが今度は倒されるんじゃないか』いう危機感を抱えながら、政権運営している」
とし、「民(=人民)に怯えるのが今の中国の指導部」と持論を展開した。
この話を聞いていた原田氏が「ジャスミン革命が起こった時に、中国でも(中国版)Twitterもあるし、同じようなことが起こるんじゃないかという意見もあるが」と問いかけると、城山氏は「中国と(ジャスミン革命がきっかけで革命が飛び火した)エジプトの情勢は似ている」と返答。その共通点を「格差社会であり民衆の不満が高まっていること」「情報統制・秘密警察の存在があること」「ネット社会であること」と指摘し、
「『いま中東で起こっていることは、中国でも起きること』だと知識人の間でも広まりつつある」
とし、さらに
「天安門事件(1989年に起こった中国の民主化運動)とエジプトが似ているじゃないかと、記憶が蘇ってしまうことを(中国当局は)怖れた」
と語り、人民に怯える中国当局の心情を分析していた。
(山下真史)
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