全国初!ごみ屋敷を京都市が強制撤去!撤去に欠けていた法的根拠
全国初、京都市がごみ屋敷のごみを強制撤去
京都市は50代男性が自宅玄関前に積み上げたごみを、行政代執行によって撤去したとの報道がありました。昨年11月に施行された「ごみ屋敷条例」に基づく措置で、私有地に放置されたごみの強制撤去は全国初の事例とのことでした。
他人から見ればごみにしか思えない物を大量に家に溜め込んでいるごみ屋敷が、全国各地で問題視されています。ごみ屋敷は、近隣住民からすれば景観や異臭、虫の発生などで生活環境を悪化させ、火災の不安を与える存在です。他方でごみ屋敷といわれる家の住民としても、精神的あるいは経済的な問題から自主的な撤去が難しくなっているケースもあり、居住する住民を非難するだけでは何も解決しません。
今回の京都の事案は、京都市の「不良な生活環境を解消するための支援及び措置に関する条例」に基づいた処置です。市長の勧告や命令を経て、行政代執行法の規定に基づいて撤去されています。
これまで撤去には法的な根拠が欠けていた
これまで市町村などの行政が強制的にごみ屋敷のごみの撤去ができなかったのは、撤去することについて何らかの法的規制があったからではなく、撤去できる法的な根拠が無かったからでしょう。
市町村や都道府県が義務を課したり権利を制限するには、法令や条例によらなければなりません(地方自治法14条2項)。行政が個人の所有する土地上に置かれている個人所有の物を処分するのは、まさに権利を制限する場合ですので、市長がそのような処分をするには法令や条例の根拠が必要です。憲法は個人の財産と私有財産制度を保障しています(憲法29条1項)。行政などの権力が、個人の財産に属する物をごみと決めつけて勝手に処分することは原則としてできません。
廃棄物処理法ではごみ屋敷問題に対応できない
いわゆるごみ屋敷のごみの撤去は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)で対応できなかったのかという指摘があります。廃棄物処理法では、廃棄物とは汚物・不要物のこととしています。そのため、ごみ屋敷の「ごみ」の所有者が不要な物ではないと主張すれば、「廃棄物」として扱うのは困難でしょう。また、ごみ屋敷の住民を廃棄物を排出する事業者や廃棄物の収集等を業とする者と位置付け、ごみ屋敷を事務所や事業場と判断するのも難しいと予想され、廃棄物処理法に基づいて市長が職員に立入調査させることはできないでしょう。
なお、廃棄物処理法では、土地・建物の占有者等はその土地建物の清潔を保つよう努めなければならないとされています。しかし、この清潔というのも主観的で曖昧で、努力義務でしかありません。従って、廃棄物処理法ではごみ屋敷の問題に対応できません。
国会が早期に適切な法律を成立させるべき
昨年、国会でごみ屋敷禁止法案が提出されています。しかし、成立に至っていません。このときの法案は、勧告や罰金で現実にはごみを撤去してもらえないだろうと批判されているようです。
ごみ屋敷は特定の地域に限った問題ではなく、全国各地どこでも生じている問題です。条例の制定されていない地方自治体では対応が難しいでしょうから、国会が早期に適切な法律を成立させるべきでしょう。
(林 朋寛/弁護士)
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