地元と外国人観光客が繋がる 北九州に新しいゲストハウスが誕生

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北九州リノベスクール発 地元と外国人観光客を繋ぐゲストハウス

リノベーション好きの間では、じわじわと話題を集めているリノベーションスクール。そのはじまりの地・北九州で、スクールでの提案がきっかけで誕生した食堂兼宿泊施設「Tanga Table(タンガテーブル)」。国土交通省も空きビル支援としてサポートしているゲストハウスを訪ねてみた。
地域再生のエンジンとし注目されるリノベスクール

福岡県北九州市は、かつては工業地帯として製鉄などを中心ににぎわいをみせたまちだ。しかし、高齢化及び人口減少化という日本のまちがこれから抱えるであろう問題がいち早く現実化。小倉駅周辺の都心部でも空き物件(遊休不動産)が数多く点在している状況が続いている。

そんなまちの課題をリノベーションという手法で再生していこうと、2011年に北九州市との連携でスタートしたのがリノベーションスクールだ。その後、このスクールの企画メンバーを中心に北九州のまちの差配人を目指す「株式会社北九州家守舎」が設立されている。

北九州市内の実際の空き物件を対象に、全国から集まった受講生たちがその活用方法を計画。最終的に不動産オーナーへリノベーションのアイデアを提案するという実践的スタイルで行われるスクールだ。

このスキームは、同じような課題を抱える都市から注目を集め、全国各地で展開されるようにまでなってきた。北九州ではこれまで18軒のプロジェクトがスクールから事業化しているが、今回の「TangaTable」は、これまでにない大規模なリノベーション事業として注目を集めている。

【画像1】第9回のリノベーションスクールの様子。全国から多数の受講生が集まった(写真撮影:リノベーションスクール)

【画像1】第9回のリノベーションスクールの様子。全国から多数の受講生が集まった(写真撮影:リノベーションスクール)10年の空白時間を超えて再生した空間

舞台となったのは、北九州市の台所として市民に愛される「旦過(たんが)市場」を川で挟んだ6階建てのビル。その4階部分の広さ約170坪の空間だ。窓の向こうにはまちの風景を望む絶好のロケーションがありながら、およそ10年、空き物件として陽の目を見ることがなかった。

発端となったのは、2014年に行われた第6回のリノベーションスクールの提案だ。この時のユニットマスターとして参加した株式会社SPEACの吉里裕也さんと東京の豊島区で大家業を営む青木純さん。そして、株式会社北九州家守舎の代表を務める一級建築士の嶋田洋平さんが加わり、提案にブラッシュアップが加えられた。さらに、運営を実現化するために北九州小倉でカフェを営む遠矢弘毅さんが加わり、株式会社タンガテーブルを設立。

「100年の歴史を持つ旦過市場のそばに宿泊しながら、おいしい食事はもちろん、まちやひと、そこで起こることを味わいつくすための宿をつくりたい」という言葉どおりに、宿泊施設はもちろん、まちの人にも開放されたダイニングスペースも充実した空間ができあがった。コンセプトは、ブリコラージュ。フランス語で、「寄せ集めて自分でつくる」という意味だ。その言葉どおりに運営するメンバーをはじめ、空間やインテリアでもさまざまなパーツや文化を寄せ集めてつくられている場だ。

【画像2】オープニングイベントに集まった株式会社タンガテーブルのメンバー。それぞれ北九州だけでなく全国で活躍中(画像提供:Tanga Table)

【画像2】オープニングイベントに集まった株式会社タンガテーブルのメンバー。それぞれ北九州だけでなく全国で活躍中(画像提供:Tanga Table)

【画像3】リノベーションスクールのメンバーも参加して行われたダイニングスペースの施工状況(写真撮影:Tanga Table)

【画像3】リノベーションスクールのメンバーも参加して行われたダイニングスペースの施工状況(写真撮影:Tanga Table)ガイドブックには載っていない魅力と出会える

宿泊スペースは67床で、ドミトリータイプと個室タイプがある。ベッドタイプのドミトリーだけでなく、日本ならではの「畳に布団を敷いて……」という部屋があるのもユニークだ。

インテリアの随所にブリコラージュなテイストを織り込んだダイニングでは、ワンコインの朝食にはじまりフランス人シェフによるディナータイムまで食事を提供している。主な食材を隣の旦過市場から仕入れているのも特徴だ。

食の柱となるのは、料理研究家寺脇加恵さんが考案したソース。例えば「ぬか炊きのクリームソース」は、北九州の名産品をアレンジした味。地元の味に舌鼓をうちながら、旅行者と地元の人との交流が生まれるテーブルとなる予定。

また、ダイニングスペースの横には、宿泊者専用のキッチンを備えているのも特徴。ここでは、旦過市場で仕入れた食材を、宿泊者が自ら料理することも可能なオープンキッチンとなっている。

ターゲットとしているのは、外国人観光客。日本文化にふれたいと訪れる外国人のために、「まちと開かれた場所になり、まちの人との交流できる場になり、そして、宿泊者同士のコミュ二ケーションが広がる場になれれば……」と、嶋田さん。既に海外の旅行会社と提携も進んでいて、韓国や台湾などの近隣アジア諸国はもとより、スウェーデンやカナダなどからの予約も入っているそうだ。

【画像4】ドミトリーの一室。ブリコラージュをテーマに各部屋ごとにつくられたカーテンがオシャレ。眠りを重視してベッドはシモンズ製をセレクトと細部にまでこだわっている(写真撮影:アポロ計画)

【画像4】ドミトリーの一室。ブリコラージュをテーマに各部屋ごとにつくられたカーテンがオシャレ。眠りを重視してベッドはシモンズ製をセレクトと細部にまでこだわっている(写真撮影:アポロ計画)

【画像5】畳に布団を敷くタイプの和室。端に設置されたベッドは押入れの役割も果たす(写真撮影:アポロ計画)

【画像5】畳に布団を敷くタイプの和室。端に設置されたベッドは押入れの役割も果たす(写真撮影:アポロ計画)リノベーションがこれからのまちづくりを変える

今回のプロジェクトには、国土交通省の外郭団体である民間都市開発推進機構MINTOも支援を行っている。既存の建築物の活用を支援するケースとしては、日本初の案件となっている。
今後、ますます既存ストックの活用やリノベーションが注目されるなかで、まちの再生という意味でもその展開が注目されるプロジェクトだ。

【画像6】宿泊者以外も自由に利用できるダイニングスペースは、まちの人と旅行者との交流の場に育っていく予定(写真撮影:Tanga Table)

【画像6】宿泊者以外も自由に利用できるダイニングスペースは、まちの人と旅行者との交流の場に育っていく予定(写真撮影:Tanga Table)●取材協力
Tanga Table
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/11/18/100717/

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