津田大介氏、動画の「文字」アーカイブ化の重要性を語る

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メディア・ジャーナリストの津田大介氏(右)とニコニコニュース編集長の亀松太郎氏

 インターネットの発達とともにメディアの勢力図は変わってきたと言われる。特に今年3月11日に発生した東日本大震災以降は、「ソーシャルメディア」の存在感が増してきているようだ。では、インターネットが発達して、メディアの手法やジャーナリズムは具体的にどう変わったのか――。メディア・ジャーナリストの津田大介氏とニコニコニュース編集長の亀松太郎氏が2011年6月16日、「ネットのニュースは、今どうよ?」というテーマで語り合った。

 両氏は震災時にツイッターやニコニコ生放送など、インターネットのツールを用いて積極的に情報を発信してきた。そんな彼らの経験を踏まえながら、シンポジウムでの議論は進んだ。津田氏はソーシャルメディア時代の取材スタイルを紹介。さらにニコニコ生放送などで配信されている記者会見などの動画をテキスト化し、「文字」でアーカイブ化していくことの重要性を説いた。

■ソーシャルメディア時代の取材スタイル

「最近取材で東北に行く時は、何も決めないで直接(現地に)行っっています。この辺の場所に行こうと決めたら、ツイッターで『今ここら辺にいるんだけど、どこを見ればいいですか? どういう人に話を聞けばいいですか?』と聞く。すると現地の人がリアルタイムに『こういうところを見たほうがいい』と教えてくれる」

 津田氏は、「僕は(ツイッターの)フォロワーが多いので、だからこそできるスタイルなのかもしれない」と留意しながらも、ソーシャルメディア時代の新しい取材スタイルを自身の震災取材を元に紹介した。この取材スタイルの特徴として、津田氏は、

「どうしてもマスメディアは大きな情報を扱うので、小回りがきかない。でも、現地では細かい情報がいろいろある。ディテールをとにかくツイッターで流すことでリアリティを感じられる。これはマスメディアと喧嘩するわけではなく、マスメディアとは違う形の方法論」

と述べた。

■今後求められる、動画の「文字」アーカイブ化

 また、津田氏はニコニコ生放送などで行われる記者会見やフォーラムなどの生中継動画を「文字」でアーカイブ化していくことの重要性も指摘する。

「事業仕分けもそうだったが、日によっては8時間とか9時間もやっている。あれを最初から最後まで見る人はいない。なんだかんだでおいしいところをちゃんと要約してつまんだ上で、報道するフィルタリングとしての役目は重要。ただ、何かあった時に最初から最後まで検証できるようにアーカイブを残していくことが重要」

とし、さらに

「動画に関してはテキスト化が遅れている。テキストになっていれば、あとで検索してパッと見つけることができるし、1時間話した内容はテキストなら15分くらいで読める。それを1時間かけて見るのか、15分かけて読むのかの圧倒的な情報処理の差がある」

と、文字アーカイブ化について、検証性と効率性の双方からのメリットを主張した。

 亀松氏はニコニコニュースでも、ライブドア元社長の堀江貴文氏とジャーナリスト田原総一朗氏の対談や、山本一太・参議院議員の番組に出演した西岡武夫・参議院議長の全文など、ニコニコ生放送の番組を文字起こししていることを紹介。「生放送を観ている人よりも圧倒的に閲覧している」と述べた。

 ソーシャルメディアを用いた新しい取材スタイル、そして動画の生中継と全文アーカイブ化。どれもインターネット時代だからこそできる手法である。今回のシンポジウムで津田氏・亀松氏の両氏は、このような手法を用いるソーシャルメディアと、新聞・テレビなどのマスメディアは敵対するものではないことを強調。「逆に震災が起きたことでマスメディアもソーシャルメディアを使って連係した」(津田氏)とNHKなどの事例を挙げ、今後さらにインターネットが活用されていくことを期待させた。

(松本圭司)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]津田氏の「ソーシャルメディア時代の取材スタイル」解説部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv53519015?po=news&ref=news#1:51:05

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