元外交官の佐藤優氏「”したたかな戦い”がこれからの沖縄には必要」

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ニコニコ生放送で対談した福島瑞穂社民党党首と元外交官で作家の佐藤優氏

 米軍普天間飛行場移設問題に関する米外交公文書がウィキリークスによって暴露された件について、鳩山内閣当時の閣僚だった福島瑞穂社民党党首と、元外交官で作家の佐藤優氏が2011年6月16日夜、ニコニコ生放送に出演し、「普天間問題とウィキリークス」というテーマで対談した。両氏はウィキリークスが正しい・正しくないではなく、「情報源として、これを元に事実を確認していく」と前置きした上で、「日本の公務員がどうしてアメリカに向いて、日本の政府を裏切るようなことを意識的にやっているのか」(福島氏)と憤りを隠さなかった。また佐藤氏は沖縄県の政治的困難な情勢について「沖縄県出身の外務省職員、防衛省職員が極端に少ない」と理由を挙げ、「沖縄出身の学生たちには、ぜひ外務省や防衛省に国家公務員として入ってほしい。(内部からの)したたかな戦いが必要」と語った。

 暴露された公電の内容は、「普天間飛行場の沖縄県外への移設を追求する鳩山由紀夫政権に対して、防衛官僚と外務官僚が米国政府に働きかけ、外圧によって自民党政権時代の辺野古移設案に引き戻そうとした」というもの。

 普天間飛行場移設問題では自公政権時の2006年、沖縄県名護市辺野古沿岸部にV字形滑走路を建設することで日米が基本合意したが、09年の政権交代に伴って民主党の鳩山前首相が県外移設を提唱。県民の期待を高めたが、移設先は見つからず、結局辺野古移設に回帰した。

 暴露された外交公電の内容に関して佐藤氏は、今までアメリカと一緒にやってきたことをやり直すのが嫌だから、日本の官僚はモラルが崩れて手抜きをしているとし、

「アメリカとの関係を強化したいと本気で思って外交交渉をしているのではなく、自分たちのグループ的な利益、あるいは個人的な利益でやっていると思う。こういう人間って、アメリカ人から利用はされるけれど、尊敬は絶対にされない。そうすると中国外交においても、『日本の世論は難しいので後ろで手握りましょうや』とか、ロシアとの関係でも『北方領土、形だけ怒りますからうまくやりましょうや』と、このへんの雰囲気が今日本外交では漂っているが、中国やロシアから公電が出てきても同じ問題が出てくると思う。これでも日本の外交官なのか」

と、このような問題は今回暴露されたアメリカとだけではなく、中国やロシアとの間にもあるのではないかと発言した。

 これに対し福島氏は、「国家というものもあるし、もう一つ国民の立場に立って政治をやるべきなのに、そこに配慮せず、今までの自分の個人プレーの続きで、一つの利権構造の中で続けているだけ」と、国家や国民を全く無視して政治が行われていると指摘。佐藤氏はその意見に同意した上で、「旧来の保守政治家だと利権が金だった。これに対して外務官僚の利権って出世なんですよ。ここで、アメリカ人たちとうまくやって、自分が成果を残したって形で出世したい」と、利権構造を批判した。

 また佐藤氏はこの対談の最後に、沖縄県民は日本人口の1%強しかおらず数の民主主義制度だと絶対に負けるので、知恵を働かせなければならないとし、

「沖縄情勢が困難になっている事の理由の一つは、沖縄県出身の外務省職員、防衛省職員が極端に少ない。沖縄県出身の、幹部職員じゃなくて中堅職員でもいい。30人でもいれば、『実際はこうなっているんですよ』ということを役所の中で言うことによって変わると思うんですよ。ですから琉球大学や沖縄国際大学や沖縄大学、それから本土で勉強している沖縄出身の学生たちには、ぜひ外務省や防衛省に国家公務員として入ってほしい。そうすれば10年後に情勢は相当変わる」

と述べ、沖縄出身の社民党・大田昌秀氏の「壁が厚い時は、向かっていくと当たって跳ね返される。そうするとだんだん無力感が出てくる、そういうときは壁の向こう側に友達を作ったり、人を送るんだ」という言葉を引用し、沖縄の人々へ「したたかな戦いがこれからの沖縄には必要だ」と、メッセージを送った。

(中村真里江)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]福島氏の「ウィキリークスを見ての怒り」から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv53336827?po=news&ref=news#22:57

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