【書評】凶悪連続殺人犯に殺害予告を受ける主人公 / 刺激ある小説『殺人犯といっしょ』(古川春秋)

marder

『殺人犯といっしょ』という違和感あるタイトルが目をひく小説が、話題を呼んでいる。殺人犯という残酷さを覚える単語と、「いっしょ」という、かわいらしさを感じさせるかな文字が同居しているのがなんとも不気味で気になったので手にとってみたので、感想を添えながら内容を紹介したい。

・「僕はあなたを殺します」と凶悪連続殺人犯に宣告をうける
おおまかなストーリーは、うだつのあがらない冴えない男性(主人公)が婚約者とのデートの待ち合わせに向かう最中に、美少年をはねてしまう。慌てて少年に駆け寄ると、少年はサバイバルナイフを手に主人公を脅し、主人公は少年とドライブすることに。

そして、あろうことかこの少年は「ジャバウォック」という名で世間を脅かしている凶悪連続殺人犯だったのだ。主人公は少年に「僕はあなたを殺します」と宣言をうけ、脅されながら犯罪に巻き込まれていく怒涛の一夜を描いたものである。

・就職? 結婚? 犯罪? 殺人?
コンビニで働く主人公には、美人でハイキャリアな婚約者がいた。入籍を控えていたのだが「延期にしてほしい」と彼女から一方的に告げられ、思い悩むところから物語はスタートする。
彼女は美人でしかも年収一千万越えというハイスペックな女性。

一方、主人公は、三十歳にしてコンビニ勤務の契約社員という、格差をかかえており、自分と彼女は不釣り合いなのではないかと思い悩んでいた。

冒頭部分では、このような恋人問題といった親しみやすい葛藤が出てくる。しかし物語が進むにつれ、「この場から逃げ出せないか」「ジャバウォックの言うことを聞くべきかどうか」など生死に関わる葛藤に、苛まれることになる。

葛藤の内容がより、手に汗握るものへとか変わっていくので、物語が進むにつれ、主人公が感じている緊張感がヒリヒリと伝わり、よりスリリングな興奮を覚える。

・キャラクターがアニメっぽくて想像しやすい
「殺人犯といっしょ」の登場人物は「甘粕新吉」「御手洗真悟」など変わった名前の人物が多いが、それ以上に個々のキャラクター像やビジュアルが際立っておりイメージしやすいものとなっている。

・ジャバウォックは色白美形で黒パーカーをかぶった少年
ジャバウォックを追う刑事、高岡は筋骨隆々の雄々しいヘビースモーカー。婚約者の真由美は気の強いツンデレ美女。

と、オーソドックスなキャラクターが多く登場するので、アニメや映画を見ているように、キャラクターのビジュアルが想像しやすい。300ページ近くあるが、ひっかかるところがなくストレスなく読み進めることができる。

・ラスト8行に残る「後気味悪さ」
『殺人犯といっしょ』は、テーマのわりにグロテスクな表現が少なく、スプラッター嫌いでも、嫌悪感を抱くことがほとんどないように思われる。

快楽殺人犯のジャバウォックが、まるで実験かのようにさまざまな方法で殺人を繰り返すが、鮮明なグロテスクな表現は控えられているので、読んでいる最中に吐き気をもよおすようなことはない。

・秋の夜長に刺激をあたえてくれる
しかし、物語のラスト8行に「後気味悪さ」がぎゅっと詰まっており、すっきりとした気持ちで終焉を迎えられる作品というわけではない……。美しい凶悪連続殺人犯と過ごす、悪夢のような一夜が描かれた『殺人犯といっしょ』。秋の夜長に刺激をあたえてくれる一冊である。

https://youtu.be/LtfeQUZk70Y

書評: 原田まりる

もっと詳しく読む: バズプラスニュース Buzz+ http://buzz-plus.com/article/2015/11/10/together-with-murderer/

Via: 殺人犯といっしょ(KADOKAWA/角川書店)

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