日本郵政で話題のIPO!上場にデメリットはないのか!?

日本郵政で話題のIPO!上場にデメリットはないのか!?

第一の目的である資金調達が容易になる

日本郵政と傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の3社が、東京証券取引所第1部に株式を同時上場したことで話題を集めています。インターネットにおいても、「儲かる」などと宝くじのような注目を浴びていますが、企業にとっての上場のメリットとデメリットについて、あらためて考えてみます。

企業が上場を狙う第一の目的は、資金調達でしょう。未上場の場合の資金調達は、金融機関からの融資が中心になり、金額的にかなりの制約があります。しかし、上場すれば市場から多くの資金を集めることができ、事業の拡大などが可能になります。この資金は返済する必要がないものでもあり、財務体質の強化にもつながります。

また、上場するにはさまざまな厳しい審査があり、この審査をクリアしたということは、会社の社会的信用が高まることになります。「上場企業」というだけでしっかりした企業だというイメージを持たれ、知名度は上がり、新規取引でも採用でも優秀な人材が集まりやすくなるでしょう。

創業者だけでなく従業員にもメリットがある

創業株主にとっても、上場することで膨大な株式売却益を得ることができます。創業者利益といわれるものです。実はこれが、上場の最大の目的である場合も多いようです。非上場会社では困難な株式売却が、上場時以後もしやすくなるメリットもあります。

一報、創業者だけでなく、上場企業になれば従業員にとってもメリットがあります。相手が会社名を知っていることが多くなり、たとえ知らなくても「上場企業」と加えるだけで納得してくれることもあります。妻も鼻高々、親も喜ぶことでしょう。また、会社の知名度が上がることは、住宅ローンやクレジットカードの審査でも有利になります。職場においても上場することで法令の順守について厳しくなり、ブラック企業にならない確率も上がると考えられます。

一方で費用負担増大や経営についてデメリットが

しかし、上場にはこのような大きなメリットがある一方で、デメリットもあります。上場の一番大きなデメリットが、思い通りの経営ができなくなることでしょう。上場すれば、不特定多数の株主の意見を聞く必要があります。株主には株式売却益が目的の株主も多く、こうした株主は株価が上がるように短期的な利益の実現を求める傾向にあります。利益が出るまで長期間を要する業種では、これが経営にとって悪い影響を与えることにもなります。また、株式を自由に買えるようになることは、競合相手や買収ファンドから買収されるリスクも増大します。

また、上場により間違いなく費用負担が増大します。上場準備のためのコストだけでも、証券会社や監査法人に対するコンサルティング費用や証券取引所の上場審査費用などで5千万円ほどかかるといわれています。

大企業でも上場を選ばない会社も存在する

新規上場後も上場維持コストとして、証券取引所や信託銀行、監査法人、証券印刷会社等への支払いが毎年数千万円は続きます。さらに、このような直接コスト以外にも新たな費用負担が発生します。上場企業は四半期決算など情報公開に追われることによる事務負担も大きくのしかかりますし、株主が多くなれば株主総会の関係費用も大きな負担になります。

このように、上場にはメリットばかりでなくデメリットもあるため、JTBやリクルートのように大企業の中でも、敢えて上場しない会社も、ワールドやポッカなどのように、上場会社が非上場化する例も出ています。上場を検討する場合は、上場によるメリットとデメリットを天秤にかけて判断する必要があるのです。

(米津 晋次/税理士)

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