復興基本法など
今回は石破 茂さんのブログ『石破 茂(いしば しげる)オフィシャルブログ』からご寄稿いただきました。
復興基本法など
石破 茂 です。
昨日より復興基本法の質疑が始まりました。政府案と自民党案の2つが提出され、並行して審議が行われます。
政府案と自民党案との基本的な相違は、復興にあたって新たに設けられる組織についての考え方です。
自民党案が「企画・立案とともに復興事業の実施までを担う“復興再生院”をできるだけ早く作る」としているのに対し、政府案は「企画・立案・総合調整を行う“復興庁”の設置を一年を目途に検討する」こととしています。
政府案は平成7年の阪神・淡路大震災の際に用いられた仕組みをそのまま踏襲していますが、被害が多くの県をまたがる形で広域にわたっていること、被災地域の多くが財政力の極めて脆弱(ぜいじゃく)な地方自治体であること、津波により生活再建の糧となる収入を得る職場が失われていること、原子力災害・電力不足というかつてない事象が同時進行していることなど、今回の災害は阪神・淡路大震災とは様相を全く異にしており、安易に阪神・大震災の仕組みをそのまま踏襲することは大きな誤りであると言わねばなりません。
この種の法律は対決法案とすべきではなく、政府と自民党との間で可能な限りの修正作業が行われなくてはなりません。自民党案の提出者を代表して、本会議で趣旨説明を行いました。原稿をそのまま載せておきますので、ご覧下さいませ。
「東日本大震災復興再生基本法案」提案理由説明(1105182.doc)をダウンロード
http://ishiba-shigeru.cocolog-nifty.com/blog/files/1105182.doc
農水大臣の時以来、久しぶりに議場全体を見渡せる閣僚席に法案提出者として座りました。
当時と今では当然のことながら景色が全く異なります。自民党全体よりも多い民主党の一期生はほとんど知らない顔ばかり。もちろん中には優れた人もいるのでしょうが、経験も積まず、権力のなんたるかも知らない人たちが作った政権が今のような有り様となるのはむしろ当然のことであったのだ、と改めて実感したことでした。
いつも申し上げることですが、このような事態を引き起こした責任の多くは我々自民党にあります。民主党が素晴らしいから政権交代が起こったのではなく、自民党が駄目だったので負けたというのがことの本質です。
“子ども手当は2万6千円、高速道路も高校もタダ、農家が損をしたら所得補償、普天間基地は国外移設、最低でも県外移設”などという、国民を愚弄しきった小沢・鳩山両氏の責任が極めて重大であることは言うまでもありませんが。
不信任案を出すべきだ、その決意が足りない、とのご指摘も多く戴きますが、ただ決意の表明として不信任案を出しさえすればそれでいいというものではありません。否決されれば内閣は信任されたことになってしまうのです。どのようにして過半数を確保するか、仮に小沢・鳩山両派と組んで可決したとして、その後の展開はどうなるのか、その構図が描けずして、ただ出せばいいとする立場には立てません。
今月の文芸春秋にも書いておきましたが、極めて難しいことではあるけれど、菅内閣を支える立場に居る人々が呼応してくれなくては展望は開けない、と私は思います。小沢・鳩山両派が、中間派も巻き込んで不信任可決に必要な数を集めた、との怪情報が最近飛び交っていますが、相当に眉唾物です。
与党でありながら不信任案に賛成するということがどれほど大変なことなのか、平成5年、宮沢内閣の不信任案に賛成した経験者である私は、あの時のことを終生忘れません。
私は当時小沢・羽田派でもなんでもありませんでしたが、大議論の末に小選挙区制導入を党議決定し、幾度も国政選挙の公約においてこれを掲げたにもかかわらず、小選挙区法案をあっさりと葬り去ろうとした宮沢内閣を信任することだけはできない、と固く信じておりました。
決意は揺るがなかったものの、正直怖くて怖くて、幾晩も寝られない夜が続きました。
小選挙区制が本当に正しかったのか、現状を見ると反省することが多いのですが、それはともかくとして今の民主党の若手議員にそれだけの覚悟があるのか、私は甚だ懐疑的です。
当時の自民党総務会長で、“小選挙区潰し”の中心人物であった佐藤孝行氏が逝去された、との報を聞き、暫しあの頃のことを思い出しました。
西岡参院議長は、その平成5年、小沢・羽田派以外で宮沢内閣不信任案に賛成した、たった4人の中のお一人です。それだけにきわめて強い信念の持ち主で、今回の「菅辞めるべし」という発言にも重みがありますが、議長という任はどの政党に対しても公平な立場に立たねばならないことは当然です。
西岡氏の発言は誠に正しいと思いますし、全面的に賛同しますが、果たして議長というお立場で言うべきことなのでしょうか。こんな時だから何でもありだ、正しければそれでいいのだ、という流れにはどうにも危うさが感じられてなりません。
原発事故の賠償に関して、その構図をどうするかいまだ決着を見ていません。感情論は十分理解できるとして、この構図は永続性のあるものでなくてはなりません。
長く政権を担い、原子力行政を推進してきた自民党の責任も含め、国の責任はどうなるのか。一義的な責任を負う私企業が、徹底したリストラを行うなどあらゆる方策を採るのは当然のことです。しかし、目的はあくまでも被害者の完全救済なのであり、そのための持続可能な方策を冷静に議論すべきです。
そして、電力網のあり方、発電部門と送電部門の分離なども、この際真剣に論ぜられなくてはなりません。“非現実的”の一言で片づけられる状況ではなくなったのですから。
いろいろなご批判を受ける立場であることは十分承知の上で、とにかく精一杯働くほかはありません。公職にある、というのはそういうことだと思っております。
執筆: この記事は石破 茂さんのブログ『石破 茂(いしば しげる)オフィシャルブログ』からご寄稿いただきました。
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