OKAMOTO’S『OPERA』インタビュー

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昨年2014年にデビュー5周年を迎えた4人組バンド、OKAMOTO’S。モダンなセンスを溶かし込んだオーセンティックなロックンロールで行く手を切り拓いてきた彼らが、最新アルバム『OPERA』で大きな変貌を遂げた。家の鍵、携帯、財布をなくした男を主人公としたストーリー(オフィシャルHPにはOKAMOTO’S×草薙洋平による小説版「OPERA」の一部が公開。書籍化も発表された)が展開されるロック・オペラ形式のこの作品は、バンドが心血を注いだ歌詞に合わせて、メンバーそれぞれがオーセンティックなロックンロールからはみ出すように育んできた豊かな音楽性が一気に開花。10年代後半のさらなる飛躍の足がかりとなるOKAMOTO’Sの重要作を前に、意気上がる4人に話を訊いた。

――OKAMOTO’Sの未来を切り拓く、大きな可能性に満ちた新作アルバム『OPERA』について、お話をうかがっていく前に、まず、デビュー5周年を迎えた2014年までの活動を振り返っていただけますか?

ショウ「俺たちは中学の時に出会って、そこからずっと一緒に活動してきたので、学校の音楽室から飛び出したような感じで、下積み時代がないまま、ライヴでやっていることをそのまま作品にしてきました。それが初期衝動的な作品と呼ばれている間は何が何だか分かっていなかった節もあって、そのうちに「どうやら、これはそういうものらしい」ということが分かってきて。もう少し伝わるため、伝えるためには、テクニックだったり、楽曲としての作りを考え直さないといけないらしい、と。そこで、いいメロディ、いいアレンジの曲を書いていこうと思ったのが、2013年の『OKAMOTO’S』であり、2014年の前作『Let It V』でした。そして、自分たちのデビュー5周年を記念した野音のワンマンライヴを昨年の10月に無事終えたのが、前作までの大きな流れですね」

――そうした流れとバンドにとっての節目を経た今回のアルバム『OPERA』で、ザ・フーの『トミー』に象徴されるロック・オペラという壮大なテーマに挑んだのは?

ショウ「この作品は、音楽好きとの話で出てくる、いわゆるロック・オペラとは少し違う要素もあると思っていて。ザ・フーの『トミー』なんかがそうですけど、ロック・オペラには主人公の成長や生まれてから死ぬまでを描くような長いストーリーと、そのなかですごい精神世界にも入り込んでいくし、深いところに行くために、音楽的にも複雑になっている作品が多いじゃないですか。でも、俺らはそういうことをやりたいがためにロック・オペラを作ったわけではなく、一つの物語があるというアルバムのフォーマットを借りたくて、それがつまりロック・オペラだったという感じです」

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――なぜ物語が必要だったんですか?

ショウ「まず一つは、バンドが転換期を迎えたということで、今までのようにいい曲、いいメロディという武器だけに頼らず、リスクを背負って、濃いものや挑戦的なものを作らないと、10周年を迎えた時にすごい景色が見られないんじゃないかと思いました。だからこそ、「変わったね」と言われるスゴい作品を作りたかった。でも、当初はそれが何なのか分からなかったんです。でも、その後、くるりの岸田(繁)さんをプロデューサーに迎えた楽曲「Dance With Me」を作ったことでみえてきたものが、曲調が超展開していくサウンドはもちろん、俺たちにとって、何が大きかったかというと、歌詞でした。最初に「この曲を一緒にやりたいんです」と、デモを持っていったら、岸田さんにはっきりと歌詞をダメ出しされて、「歌詞が何を言いたいのか分からないのに、曲がやりたい放題の展開でどうしたらいいか分からないから、まず、4人で話し合ってみて」と言われたんです」

――なるほど。

ショウ「そのうえで、「こういう節目のタイミングの曲はメンバー全員で書くべきなんだよ」というアドバイスを受けて、4人で出し合った言葉を元に歌詞に組み上げていったら、一人で書いた歌詞のような簡潔さはないものの、俺たちがずっとモヤモヤと抱えていた想いを初めて言葉に出来たような、そんな歌詞になったんです。そのなかでも象徴的だったのが、コウキが書いた「ローリングストーンズが最高ってことになんで みんな気がつかないんだろう?」という一節で、「もうホント、それ!」っていうことを簡単に言えるコウキはスゴいと思ったし、「やっと、こういう曲が書けた」と自信が持てる1曲になった。そこから、この曲があまりにいいので、今回のアルバムではこの楽曲に至るまでの自分たちの心の動きを描いていったらいいんじゃないかと思いつきました。更に、バンドとして変わりたいという想いも相まって、アルバムに物語を付けようということになったんです」

――そして、サウンド面に関して、OKAMOTO’Sの4人は、ヒップホップやダンスミュージックを含め、古今東西の音楽を聴きつつ、これまではバンドの基本となるロックンロールをブレずにやってきたと思うんです。今回、バンドが変革期を迎えたタイミングで、これまで敢えて抑えていたものを解放しようという気運が4人のなかで高まっていったんですか?

ハマ「これまでのOKAMOTO’Sは、メンバーそれぞれに音楽の幅がありつつ、昔のオーセンティックなロックの要素が入っていて、それでいて、センスがよくて、みんなが好きになってくれるロックバンドのフォーマットのいい落としどころを考えてきたんです。でも、今回はその点を一番に意識せず、まずは「Dance With Me」に端を発する歌詞のストーリーに沿ってアルバムを作っていくなかで、音楽ありきというより、その歌詞の場面に合った音楽を考えていったことで、結果的に音楽性の幅が広がりましたし、今まで表に出ていなかった部分が形になっていきました」

ショウ「あと、今までの作品では、ライヴで再現出来ないことをやらないようにしていた節があったのですが、今回は音源としていかに面白いかということを意識して作っていきました。それと、作品制作の手綱を握るのは基本的に俺なんですけど、みんなからの提案に「NO!」と言わないようにしたんです。というのも、今まではオーセンティックなロックがすでに格好いいので、極力崩さないようにしようとしていたんですけど、それぞれの持つ異なる音楽テイストがもっと混ざって、新しいものが生まれたら、それがOKAMOTO’S色の旗になるんじゃないか、と。だからこそ、自分たちのオリジナリティがどこまで出せるのか挑戦したい時期が来たのかもしれない」

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――アルバム中では、レイジくんがビートメイクした「アップサイドダウン」はミニマルなテクノやアシッドハウス、「楽しくやれるハズさ」はヒップホップの影響が前面に出ていますよね。

レイジ「2、3年くらい前には4つ打ちはダサいと思っていたんですけど、一度、自分達でやってみないとなんとも言えないと思って、2013年にシングル「JOY JOY JOY」をはじめ、何曲か作ってライヴで演奏しているうちにどんどんハマっていって。岡村靖幸さんのDJユニット、OL Killerのプレイを聴いたりしているうちに、ハウスやテクノに開眼したんです。そして、開眼したからには、超渋い打ち込みから始まるダンスチューンを作ったら格好いいんじゃないかと思って、「アップサイドダウン」でビートを組みました。あと、「楽しくやれるハズさ」のビートは、そもそも、OKAMOTO’S用に作ったわけじゃなく、個人的に作ったものを、音楽友達としてショウに聴かせたら、「いま自分が考えているアイデアと、このビートが合うかもしれないから、データで送って」と言われて。それでショウに送ったら、アルバムで完成された曲に近いものが返ってきたんです。だから、このアルバムに持ち込んだというより、ショウが取り入れてくれた感じです。あと、ちょっと話が変わるんですけど、今年の4月に六本木のEX THEATERでライヴをやった時、アンコールでRIP SLYMEとのコラボ曲「Wanna?」のオケを流して、その曲のラップを4人でやったら、思っていた以上に反応が良かったし、俺らとしても手応えがあったんです。その経験もバンドの殻をやぶるのにプラスに作用した気がしますね」

――そして、コウキくんが歌詞を書いて、初めてフルヴォーカルをとった「ハーフムーン」なんかは、ごりっとしたOKAMOTO’Sには珍しく浮遊感漂うダブ・ポップですよね。

コウキ「このアルバムで自分を含め、みんながそれぞれ書いた歌詞は、どうして「Dance With Me」に辿り着くのかを説明していて、どの楽曲も最終的には言っていることが一緒だったりするんですよ。歌詞に筋が通っているからこそ、サウンド面で好きなことがやれたんです」

ショウ「この曲はバンドに持ってきた時、すでにコウキが「これは俺が歌いたい」って書いてあったよね(笑)」

コウキ「そうだったっけ?」

レイジ「もともと「コウキが歌う曲があった方がいいよ」って、俺が言ってたから、たぶんその流れだよね?」

コウキ「そうそう」

――ハマくんがアレンジを手掛けた「うまくやれ」は、いなたいPファンク感が実にベーシストらしい曲ですよね。

ハマ「「うまくやれ」は、ここ最近、巷ではファンクをお洒落風にやるのが流行っているので、それだったらファンクが誕生した頃の生まれたてのファンク風にアレンジしたら、歌詞の世界と相まって、頭の悪い感じが出せるかなと思ったんです。でも、この曲は4人のセッションから作ったもので、実はこのアルバムだと一番普通というか、スムーズに出来上がったんです」

ショウ「そう。他の曲はかなり密に構成が決まっていたからね」

――最新作のダフト・パンクを思わせるディスコ・ファンクが色んなパターンでどんどん展開していく「TOMMY?」なんかは構成をきっちり決めた曲ですよね?

ショウ「そうです。きっちり決めておかないと、こういうあり得ない展開は続かない。あと、この曲もそうですが、DJでかけたり、ダンス・ミュージックとして楽しめるアルバムにしたいというのは、アルバムの裏コンセプトでした」

コウキ「ハマくんは結構早い段階から次はダンス・アルバムにしたいって話してたよね」

ハマ「OKAMOTO’Sは、8ビートの曲に、16ビートのニュアンスを織り込んだアレンジを施してライヴをやったりしていますが、作品ではそういう曲が無かったので、ファンクやディスコをやるということではなく、リズムの裏を意識したダンス・アルバムにしたいなと思っていました」

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――アルバムのイントロを経て、「Dance With You」から始まって、「Dance With Me」で締めくくられる作品ですもんね。そして、作品の大きな流れとして、ザ・フーのロック・オペラ『トミー』では視覚、聴覚、発話障害を持つ主人公の設定を下敷きに、このアルバムの主人公は家の鍵、携帯、財布をなくした男の物語になっていますよね。

ショウ「今回、ロック・オペラを作るとなったら、ザ・フーの『トミー』でしょと一番に思いましたし、三重苦を背負った主人公が物語を通じて、何かを得ていくという話が分かりやすくていいなと構想していました。それと、岸田さんのアドバイスとして、「自分が歌いたいと思うことを自分のために歌った方がいいよ」と言われたんです。そのアドバイスを踏まえて、自分の実体験に何か歌詞のモチーフとなるものがないかなと考えた時、俺、しょっちゅう物をなくすんですよ。現代において、物をなくすと、すぐに見えない、聞こえない、話せない状態になるじゃないですか。なので、「家の鍵、携帯、財布をなくした男の物語はどうかな?」と、メンバーに提案したら、キャッチーでいいねということになりました」

――なるほど。

ショウ「今回のストーリーは物をなくさない人にはぴんと来ないかもしれないけど、よく物をなくす人にはぐっと来る。今回のアルバムはそういう内容にしたかった。つまり、分からない人には分からないかもしれないけど、分かる人にとっては強烈に刺さる作品。「Dance With Me」でコウキが書いた「ローリングストーンズが最高ってことになんで みんな気がつかないんだろう?」という一節はまさにそういうことなんですよ。その一節は「ローリングストーンズ」ではなく、聴く人がそれぞれ置き換えてくれたらいいんですけど、俺たちが歌っていることを経験したり、感じたことがある人にこの作品をいかに届けるか。今までは不特定多数により広く伝わるように考えて作品を作ってきましたが、今回、伝え方を大きく変えたことで、アルバムの反応を含めて、今後の展開が自分たちとしても本当に楽しみですね」

撮影 倭田宏樹/photo  Hiroki Wada(TRON)

文 小野田 雄/text  Yu Onoda

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OKAMOTO’S

『OPERA』

9月30日発売

(Ariora)

OKAMOTO’S

オカモトショウ(Vo)、オカモトコウキ(G)、ハマ・オカモト(B)、オカモトレイジ(Dr)。2010年5月にアルバム 『10′S』、11月に『オカモトズに夢中』、2011年9月に『欲望』を発売。2013年1月に4thアルバム『OKAMOTO’S』を発売し、7月に は両A面シングル“JOY JOY JOY/告白”を、11月6日にニューシングル“SEXY BODY”をリリース。2014年1月15日に岸田繁(くるり)を迎えた5th アルバム『Let It V』を、8月27日にはRIP SLYME、奥田民生、黒猫チェルシー、東京スカパラダイスオーケストラ、ROY(THE BAWDIES)らとコラボを果たした5.5 thアルバム『VXV』を発売。2015年9月30日、6th『OPERA』をリリースする。11月1日 (日)東京・新宿LOFTより「OKAMOTO’S TOUR 2015-2016“LIVE WITH YOU”」をスタート。

http://www.okamotos.net

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NeoL/ネオエル

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