石原慎太郎×田原総一朗(2) 「東京に『隣組』を復活させたい」
石原慎太郎・東京都知事は、2011年5月17日に放送されたニコニコ動画の討論番組『田原総一朗 談論爆発!』で、銀行批判を展開した。「ケチで、金を使いたがらない」「なんでも出し惜しみする」と不満が喉からあふれ出る。一方、4期目の都政について聞かれると、震災に備えて「現代の『隣組』を作りたい」と抱負を口にした。
(石原慎太郎×田原総一朗(1) 「国の官僚はバカだから、地方の成功をマネしない」)
以下、番組でのやりとりの全文を書き起こして紹介する。
田原総一朗氏(以下、田原): 僕は「石原さんが(都知事選)出るためのシンポジウムをやるから出てくれ」と言われてOKしたのに、「やっぱり(石原氏が都知事選に)出ないからやめた」という話になった。それなのに、なぜ出たのか。
石原慎太郎東京都知事(以下、石原): いや、だからその他、この他で。東京が混乱すると困るし、再選挙なんかになったらみっともないしね。
田原: 息子(石原伸晃氏)に口説かれて「親バカ」として出たのか。
石原: そんなことはない。冗談じゃない。僕はいろんな自分の人生のことを決めていたんだから。一番大好きなヨットレースも、久しぶりに「太平洋横断レース」に出るつもりでエントリーしていた。
田原: それで、(都知事選に)出た。当選した。出たら当然、当選すると思っていたが。これから何をするつもりか。
石原: そのあと、この大災害(東日本大震災)が起こった。これはなかなか、福島の原発の問題もあって、僕は詳しくあなたに事情を聞きたいが、いろいろ入ってくる情報がたくさんありすぎて、整理がつかない。このあいだ平田(直)さんという、東大地震研究所の教授を呼んで幹部にブリーフィングをしてもらったが、やはり日本を支えているトラフ(海底の地形)がかなり動いている。とにかく、その余波か何か知らないが、東京はあなたも感じない、僕も感じないけども、体感はないけれども、地震計ではかると10分に1回地震が起きている。
田原: 東京で?
石原: 東京で。地震計で測っている(とそうなる)。
田原: 10分に1回?
石原: これは怖い。地震を測っている。これも大災害以後のことでしょう。それでいろいろ詳しく聞いたが、東京湾も調べてみると、フィリピントラフと太平洋トラフとユーラシアと日本を支えるトラフ(編集部注:プレートのことと思われる)が3つ重なっているところがあって、そこは非常に微妙に重なっている。これも直下型の地震の震源にたり得ると言う。これがどういう形で爆発するかということは、今の地震学ではとても予測できないらしいが、ただ可能性だけは言えるという。
田原: 今は盛んに「東海地震が起きる」と(言われている)。
石原: 東南海(地震)とか。
田原: うん、東南海とか。東海地震が「(今後)30年間に94%(の確率)で起きる」とか言っている。直下型も起きる可能性があると言っている。
石原: それはパーセンテージでは言えないが。(これまでは)言わないほうがいいと思っていたが、あえてこのごろ公言しているのは、東京にも木造密集地帯「木密地帯」がいくつかある。戦前からの町がある。僕は神戸地震(阪神・淡路大震災)のあと、運輸省に頼まれて港湾の視察に行ったついでに長田地区と東灘区とをふたつ見た。住宅地。木造住宅は全部潰れている。
田原: 全部潰れて、そこがものすごい火災を起こした。
石原: チャチでも鉄骨・鉄筋は残っていた。やっぱり木密地帯を変えないと。そこは、心張り棒でも入れないと。ところが面白いのは、人間の心理と同じように――人間というのは誰でも必ず死ぬと知っている。敦盛の歌じゃないが「人間五十年、下天の内をくらぶれば、ひとたび生を得て滅せぬもののあるべきや」で。それを歌った信長は、(やはり)死んだらしいけれども。人間は必ず死ぬと皆わかっている。(でも)自分が死ぬと信じている人間はひとりもいない。
田原: その通り。
石原: だから「石原さん、地震来るよ」「気をつけなきゃね。東京もやばいよ」「あんたの家もちょっと危ないんじゃない?」(と言うと)、「いや、うちは大丈夫」と必ず言う。そういえば、このあいだ条例を変えて、「皆のために耐震性を測る義務があるんだから測りなさい。場合によっては援助もしましょう」とした。今度の災害(東日本大震災)では、それをもっと強化しないと。
田原: それはそうだ。リアリティが出てきた、どーんと。
石原: でも条例で測らせても「あなたの家はすぐぶっ壊れる」と、「ガンじゃないが、1、2、3、4の4段階で、押しても壊れる」と、たとえばそういうステッカーを貼ると財産権の侵害になる。
田原: 「4期ガン」の家があるのか。いっぱい。
石原: いっぱいある。
田原: それで「あなた4期ガンだ」と言うと「レッテルを貼ってけしからん」と。
石原: そう。そういうことになるから、どこまで規制できるかわからない。せいぜい今度やりたいのは、東京に昔の隣組作ろうと。このごろ人情も”紙風船”で、皆それぞれエゴが強いから。ただ、地震の時にはちょっと責任を持って「向こう3軒両隣だけはちょっとカバーしましょう」と。自助・共助・公助の補強をするために、新しい隣組の制度を作ろうと思う。これはきめ細かく、何丁目全体が「町会」ということではなく、自分の家のまわり10軒くらいで組長みたいな人を決めて、何かあったときには「住んでいるおじいちゃん確かかな」と確かめる、そういう責任を果たそうと。新しい現代の隣組を東京からもう一回復活させていこうと思っている。
田原: ただ、今の話は石原さんにしては地味なんだな。やっぱり「東京にオリンピックを持ってこよう」とか。あるいは「銀行はすごく儲けているのに、全然税金払っていない」とか(といった話を聞きたい)。
石原: 今度もひどいよ。台湾の銀行が、(以前)こちらが台湾をいろいろヘルプした恩義で(東京に寄付してくれた)。東京のハイパーレスキュー隊が(被災地に)行って、バカな大臣が「行かなきゃクビにするぞ」と脅かし、機械1台をダメにしたが、それを聞いてみんな死ぬ思いでやってる。(すると台湾の)ひとつの銀行が1億円を寄付してくれた。東京の消防に。日本の銀行協会はデカい銀行が何百あるが、集まって1億円しか出さない。台湾は、1銀行が1億円。
田原: 日本は全体で1億なのか。
石原: 日本銀行協会、なんだか知らないが。
田原: なんでそんなケチなのか、銀行は。
石原: ケチだし、彼らは金を使いたがらない。とにかく銀行というのは本当によくない。
田原: 何がよくないのか。
石原: とにかく何というか、役人との結託かなにか知らないが。てめえが預っているから自分の金みたいになってしまっているが、何でも出し惜しみするし、とにかく預金の減ることが自分の身を削るみたいになるのか(どうかは)知らない。だから僕は外形標準(課税)をやった。
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http://live.nicovideo.jp/watch/lv49658192?ref=news#10:22
(ふじいりょう、村井克成、亀松太郎、秋本直樹、大住有、岩本義和、土井大輔、丹羽一臣)
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