直射日光を避けることで起こりうる重大な健康被害
子どもの頃、幼稚園や小学校で配られる「肝油ドロップ」を食べた記憶がないだろうか?
「肝油ドロップ」とはもともとサメやタラなどの肝臓の成分から作られたドロップで、ビタミンAやビタミンDといった不足しがちな栄養素を補うことができるとされる。
ところで、「肝油ドロップ」を子どもに配る目的の一つに「くる病(頭蓋骨の軟化やX脚・O脚を引き起こす骨の石灰化障害)の予防」というものがあるのだが、この「くる病」が日本で今増加しているのをご存じだろうか。
くる病の発症に大きく関わるとされるのが「ビタミンDの欠乏」だ。そして、ビタミンDは食物から摂取する以外に太陽光を浴びることによって体内で生成される。このビタミンDの欠乏の背景には、そもそも太陽光を浴びることの少ない現代人の生活スタイルや、美容の観点から直射日光を可能な限り避けようとする行動パターンがあるとも考えられるのだ。
工学博士であり、太陽光と健康の関係についての研究をしているリチャード・ホブデイ氏は、著書『1日15分、「日なたぼっこ」するだけで健康になれる』(藤井留美/訳、シャスタインターナショナル/刊)のなかでこの点に強い懸念を示している。というのも太陽光を浴びる時間の不足、あるいはビタミンDの不足との関連が指摘される病気はくる病だけではないからだ。
■骨粗鬆症
先進国を中心に増加しており「静かなる流行病」とまで呼ばれているのが骨粗鬆症だ。
特に折れやすいのは手首や股関節、椎骨で、いずれも日常生活への影響が大きい個所である。
本書によると、骨粗鬆症と太陽光を結びつける見方は主流ではないが、20年ほど前からビタミンDの欠乏が股関節骨折のリスクを高めることが指摘されているという。前述のとおり太陽光を浴びる機会の不足がビタミンD欠乏を招くことを踏まえると、両者の間に何らかの関係があることが今後明らかにされていくかもしれない。
■結核
近年、ふたたび脅威になりつつある結核はとりわけ太陽光との関連が強い。結核菌が紫外線に弱いことがかねてから認識されていることに加えて、ビタミンDレベルを保つことで結核の発症を予防できるとも言われている。
■がん
一般的に、太陽光は皮膚がんを引き起こす可能性があると考えられ、日本に限らず世界的に直射日光は可能な限り避ける、というのが主流になっている。しかし、がんというのは皮膚がんだけではない。この20年で太陽光ががんを抑制するという研究が数多く報告されているのに加えて、最近の実験結果では乳がん、大腸がん、前立腺がん発生にはビタミンD欠乏が大きな要因になっていることが確かめられている。定期的に太陽光を浴びることで得られる恩恵は、皮膚がんのリスクを加味しても大きなものだという意見もあるのだ。
「美容の敵」「肌の老化を招く」ということで敵視されている太陽光だが、古くから日光とともに生活を営んできた人間の健康には、やはり日光は不可欠なのかもしれない。事実、WHO(世界保健機関)や環境省、学会なども、短時間の日光浴はビタミンD生成の意味で、健康にとって大切なものだとしている。
もちろん、浴びすぎはよくないのだろうが、完全に太陽光を遮断しようとすることは果たして長い目で見ていいことなのだろうか?太陽光や紫外線への過剰な警戒は、実は重大な健康被害への最初の一歩かもしれないのだ。
(新刊JP編集部)
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