「冤罪事件の再発防ぎたい」 息子失った母、東京都を提訴
JR新宿駅で痴漢の容疑をかけられた都内大学職員の男性が、新宿警察署による取調べ後に地下鉄のホームから転落死した事件で、男性の母親が2011年4月26日、「息子は違法な取り調べによって精神的苦痛を受けた」として、東京都(警視庁)を相手取り、計1,000万円の国家賠償請求訴訟を起こした。
提訴したのは男性の母親・原田尚美さん(54)。訴状などによると、原田信助さん(当時25歳)は2009年12月10日の深夜、新宿駅の構内で「女子学生のお腹を触った」という痴漢の疑いをかけられ、新宿警察署で取り調べを受けた。信助さんは一貫して容疑を否認。むしろ、女子学生に同行していた男子学生に暴行を受けていたと主張し、110番通報までしていた。しかし、警察官らは信助さんを暴行事件の被害者ではなく、痴漢事件の被疑者として取調べを続けた。翌朝、 信助さんは処分保留のまま新宿署から帰されたが、その足で母校近くの地下鉄東西線・早稲田駅に向かい、ホームから転落死した。
訴状では、信助さんが110番通報をしたにも関わらず事情聴取をしなかったこと、黙秘権の告知をせずに被疑者として取り調べたこと、任意捜査にも関わらず自由に帰宅することも、電話することも認めなかったことなど、警察官らの行為を列挙して「その精神的苦痛はきわめて重大」と訴えている。
尚美さんは「息子の事件は明らかなる冤罪事件です。息子は新宿署の違法な取調べさえなければ死を選択することは決してありませんでした。息子と同じような冤罪事件が二度と起こらないように、事実を明らかにすることが必要と考え、このたび提訴いたしました」と提訴の意図を語った。
原告側代理人の清水勉弁護士は「警察の取り調べに一番の問題があった。警察のあり方を問う。警察の捜査の在り方一本に絞った裁判を起こすことになる」と述べた。
(三好尚紀)
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