どんな影響が!?マイナンバー制度を分かりやすく解説
国民一人ひとりに付与されるマイナンバー(個人番号)とは
平成25年5月に成立した「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」に基づくマイナンバー制度は、平成28年1月から実施が予定されています。
そもそも、このマイナンバー制度は住民票を有する国民一人ひとりに12桁のマイナンバー(個人番号)を付与し、社会保障、税及び災害対策の3分野の行政手続の中で利用することにより、「公平・公正な社会の実現」「国民の利便性の向上」「行政の効率化」を図ろうとするものです。
マイナンバーが利用される行政手続
具体的に説明すると、「公平・公正な社会の実現」はマイナンバーを利用することで、個人の所得やほかの行政サービスの受給状況を把握しやすくなるため、負担を不当に免れることや給付を不正に受けることを防止するとともに、本当に困っている人にきめ細かな支援を行うことができるというものです。
「国民の利便性の向上」は、国民が年金や福祉などの申請時に用意する必要のある書類を削減することができるため、行政手続が簡素化されて国民の負担が軽減され、行政機関にある自分の情報を確認でき、さまざまな行政サービスの情報をスムーズに受け取ることができるというものです。
最後に「行政の効率化」は、行政機関における複数の業務の間で連携が進み、作業の重複などの無駄が削減されるなど、国民の行政ニーズにこれまで以上に迅速に対応できるというものです。
改正によって制度の利用範囲が金融や医療などにも広がる
この10月から国民一人ひとりにマイナンバーが通知され、前記の通り平成28年1月から3分野の行政手続で実施されることになっているのですが、まだ実施前の本年9月3日、この制度を改正する法律が可決成立しました。
この改正は、マイナンバー制度の利用範囲を、金融や医療などの分野にも広げることを目的にしています。まず、預貯金口座に対してもマイナンバーを付することによって預金情報を効率的に利用できるため、社会保障制度における資力調査や税務調査がしやすくなります。また、医療等の分野でマイナンバーを利用することにより、加入する健康保険が変わった場合でも、特定健診等の情報が引き継がれるようにして効果的な保健指導が行えるようにし、地方公共団体間で予防接種の履歴を連携できるようにします。
個人情報流出の危険性が指摘される
このようなマイナンバー制度については、さまざまな個人情報と結び付いて管理されるため、システムが攻撃されて多くの個人情報が流出してしまう危険性も指摘されています。最近でも、日本年金機構が約125万件もの個人情報を流出させる問題を引き起こしています。
外部からの不正アクセスが原因であるとはいっても、セキュリティーの問題が解決されない状況下においては、マイナンバー制度の利用範囲をどんどん拡大させていくことに疑問の声が上がるのも無理はありません。利便性を追求するばかりではなく、その裏にある危険性にも十分に配慮してもらいたいところです。
(田沢 剛/弁護士)
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