「こだまでしょうか」ACのコマーシャルに登場する 金子みすず の詩と背景について「いいえ、誰でも」
こだまでしょうか
「遊ぼう」っていうと
「遊ぼう」っていう。
「ばか」っていうと
「ばか」っていう。
「もう遊ばない」っていうと
「遊ばない」っていう。
そうして、あとで
さみしくなって、
「ごめんね」っていうと
「ごめんね」っていう。
こだまでしょうか、
いいえ、誰でも。
ACのCMに登場する 『 こだまでしょうか』という詩は、1903年山口生まれの女性童謡詩人、金子みすず(金子みすゞ)の作品。没後80年以上経ってもその詩はまったく古びず、今、目の前で作られ、読まれたもののように自然に心へはいってくる。あまりにはやく亡くなった金子みすず。彼女の詩は没後散逸し、幻の童謡詩人といわれた。しかし、戦後「日本童謡集」という書籍に「大漁」という金子みすずの詩が掲載され、それが童謡詩人の矢崎節夫氏の目に偶然とまった。この作品に魅入られた矢崎氏は実に16年間にわたってみすずの作品を探し続けたという。
大漁
朝焼け小焼だ
大漁だ
大羽鰮(いわし)の
大漁だ。浜は祭りの
ようだけど
海のなかでは
何万の
鰮のとむらい
するだろう
そしてついに矢崎氏はみすずの没後50年後、500編をこえる金子みすずの詩が記された三冊の手帳にめぐりあう。この手帳はみすずが弟である正祐に託したものであった。弟の正祐はみすずの詩のよき理解者であったが、正祐はみすずが姉と知らされずに育てられた。幼くして父を亡くし、正祐は母の妹である叔母の嫁ぎ先へ養子にやられる。しかしやがて叔母がなくなり、そこへ実の母が再婚し入る。そのとき正祐には実の母であるとはしらされなかった。その後みすずは義父が経営する書店で働くことになるが、姉弟の関係であることはあかさないようにと言われた。なんとも不思議な話だ。正祐は作曲の才がありみすずの詩に惚れ込み、そして実の姉と知らず恋心を抱く。実ることのない悲恋である。義父はそれに気づき書店の番頭格である男とみすずを強引に結婚させる。正祐は抗議し家を出てしまうのだが、義父の仕組んだみすずの結婚もうまくいかなかった。みすずの代表作のひとつといわれる『私と小鳥と鈴と』を紹介する。
私と小鳥と鈴と
私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが、
飛べる小鳥は私のように、
地面(じべた)を速くは走れない。
私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のように
たくさんの唄は知らないよ。
鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。
500をこえる金子みすずの詩は20歳からのわずか5年間の間に創作されたものであるらしい。みすずが20歳のときに関東大震災が起きた。実の弟の正祐は東京へ勉強に出かけていたのだが震災を機に下関へ戻ってくる。そこからみすずの運命が変わりはじめる。そんなみすずがつくった詩が日々テレビやラジオで放送されわたしたちを癒している。なんとも不思議なものである。
さびしいとき
わたしがさびしいときに、
よその人は知らないの。
わたしがさびしいときに、
お友だちはわらうの。
わたしがさびしいときに、
お母さんはやさしいの。
わたしがさびしいときに、
ほとけさまはさびしいの。
こころ
おかあさまは
おとなで大きいけれど、
おかあさまの
おこころはちいさい。
だって、おかあさまはいいました、
ちいさいわたしでいっぱいだって。
わたしは子どもで
ちいさいけれど、
ちいさいわたしの
こころは大きい。
だって、大きいおかあさまで、
まだいっぱいにならないで、
いろんなことをおもうから。
金子みすずの命日は3月10日である。
※参考資料などのリンクはすべてガジェット通信本サイトに掲載しております。
ACコマーシャル動画『こだまでしょうか(1分バージョン)』朗読:UA
参考)
金子みすずの世界
http://www.owari.ne.jp/~fukuzawa/misuzu0,.htm
金子みすゞの簡易年譜
http://www.jtw.zaq.ne.jp/kamifu-sen/misuzunenpu.html
金子みすゞの詩
http://www2s.biglobe.ne.jp/~kuribou/misuzu.htm
こどもの本の店JULA・・・JULA(ジュラ)出版局
http://www.jula.co.jp/
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