医師たちの被災地レポート「野戦病院というより生き地獄」満足な医療を行えず

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トリアージについて 大阪医科大学ウェブサイトより

医師の会員制コミュニティサイト『MedPeer(メドピア)』では、東日本大震災で被災した医師および救援活動を行った医師の現地レポートを募集。3月23日~24日15時までに、『MedPeer』に寄せられたレポートは約300件で、同サイトではそのうち13件を紹介しています。

津波による壊滅的な被害を受けた仙台市若林区近くの病院で救護活動を行った一般内科医は「救急患者のトリアージ(傷病者を重症度と緊急性で分別するタグ)は死亡あるいは救命不可能を表す黒タグ(溺死多数)と軽症を表す緑タグが多く、阪神淡路大震災時とは違って(重症かつ救命可能性のある)赤タグの患者数が少ない」とレポート。他の医師たちも、地震よりも津波による溺死者が多いことを指摘し、「生きるか死ぬかの二者択一で、崩壊したがれきの中から救出される場面は少なかったようです」と報告しています。

トリアージタグ

このため、「生きている人は軽症か無傷がほとんど」で、「急患の多くは、低体温・感染症・外傷で薬や点滴注射の不足が深刻。医師より薬剤師支援が望まれる」と指摘する声が多いようです。また、「親を亡くして立ちつくす子どもにどう接したらいいかわからない。PTSDに関してアドバイスができない。発達が正常かどうか判別できない」など、小児に対する心のケアができるスタッフの必要性を説く医師のレポートも見られました。

14~15日に釜石市で救護活動にあたった東京都の一般内科医は、「電気、水道、電話、携帯など復旧の見込みもなく、(連絡手段がないので)救急車が突然患者を搬送してくるのを待つ状況。単純レントゲンと採血はなんとか使えますが、CTスキャンなどは動作しません。野戦病院というより生き地獄でした」と震災直後の被災地を振りかえります。

19日~22日に宮城県で死体検案書作成の仕事に携わった一般内科医は、「涙なしではとてもできる作業ではありませんでした」と心情を吐露。現地の状況はメディアによる報道をはるかに超えて「悲惨そのものでとても言葉で言い表せるものではありません」と書き記しています。

DMAT(Disaster Medical Assistance Team)で出動し、空港で中等症患者診療に当たった医師は、診療中にも繰り返し地震があり「被害にあっていない私たちでさえ、トラウマになりそうな状況」で「地震発生後数日たってから救助された泥まみれの患者さんを診療した時は、本当に日本で起きていることなのかと信じられませんでした」と報告。同時に、全国各地から救護活動に駆けつける人たちの姿を見て「日本も捨てたものではない」と感動したそうです。

支援活動を行う人たちのレポートは、メディア報道とは違ったリアルさで被災地の様子を伝えてくれます。こういった声を受け止めることが、それぞれの立場からできる支援のかたちを考えるきっかけになればと思います。『MedPeer』では、今後も継続して医師たちのレポートを公開していく予定です。
 
※トリアージ区分についての画像は大阪医科大学ウェブサイトより引用
http://www.osaka-med.ac.jp/deps/emm/triage.pdf

「東北地方太平洋沖地震 被災地現地リポート」について(MedPeer)
 

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Kyoko Sugimoto

京都在住の編集・ライター。ガジェット通信では、GoogleとSNS、新製品などを担当していましたが、今は「書店・ブックカフェが選ぶ一冊」京都編を取材執筆中。

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