プロレスを題材にした映画シリーズ:名匠の遺作にして人生再生ドラマとして名作と謳われる『カリフォルニア・ドールズ』

 プロレスを題材にした映画はVHSやLDになったことはあっても、BD/DVD化されない作品が多かったりします。
 今回ご紹介する『カリフォルニア・ドールズ』(1982)も、ロバート・アルドリッチ監督の遺作ということで映画ファンの認知度は高いものの、日本では使用楽曲の著作権問題で長らく実現せず、2015年4月にようやく日本語吹替も収録した形で待望の円盤化と相成った作品です。

 アルドリッチ監督といえば『特攻大作戦』『ロンゲスト・ヤード』などの男臭い作品を多く手掛けた一方で、『何がジェーンに起こったか?』『甘い抱擁』では女性の情念を過激に描いた名匠。
 本作も女子プロレスをテーマにしていますが、往年の無頼的な風味をベースにしつつ、ブルーカラーの多い米南部(プロレスが盛んな地域でもある)やその関係者たちが醸す”負の空気”を切り取った作品で、売れない女子プロレスラーコンビと大言壮語なオッサンマネージャーによる”人生再生ロードムービー”の趣になっています。

 マネージャー・ハリー(ピーター・フォーク)が面倒をみる美形コンビ「カリフォルニア・ドールズ(赤毛のしっかり者アイリスと金髪女子モリー)」は、人気もギャラも今ひとつ。試合が終われば、次の試合の会場を目指し、ガタガタのポンコツ車でドサ回りする日々だった……
 
 出だしはこんな感じですが、劇中の2戦目では、ミミ萩原、ジャンボ堀という本職の日本人女子プロレスラーが登場。ミミはローリングクラッチ、ジャンボはクルックヘッドシザースを披露していますが、ドールズ側も(その後出てくる対戦相手の女優陣も)なかなか頑張っており、劇中の各試合はしっかり”プロレス”として楽しめます。

 さておき、ハリーはドールズを各地のプロモーターに売り込むも話が来るのは安ギャラ試合のみ。ドールズも、まだ若いモリーがもう辞めたいと泣きを入れ、アイリスはアイリスで、カーニバルでの泥レスリング(キャットファイト)に出場する屈辱を味わい、プロレスラーとしてのプライドはズタズタに。

 ところが、そんな屈辱に耐え、各地を回り連戦連勝するドールズが少しずつ話題となり、ネバダ州リノでのビッグマッチ出場が決定。ハリーも活動資金を田舎街の賭場でイカサマして稼いで状況は上向きに! といっても”負の空気”を描いた作品だけあって綺麗に話が進むワケもなく、タッグ王座挑戦のために枕営業しちゃったりと何だか重い展開もあります。

 最後のタッグ王座戦では、王者(ヒール)のカバーへのカウントは早いけど、ドールズ(ベビーフェイス)のカバーに対しては超低速カウントをする”全女の阿部四郎”みたいな悪徳レフェリーがいい味を出すんですね。この流れでドールズ側が耐える展開で観客も肩入れして……とまあ、あとはあえて伏せますが、実にプロレスらしい晴れやかでスカッとするフィニッシュが待っています。

 ついでにいうと、メイン戦待ちのヘビー級王者ビッグ・ママ(とそのマネージャー)が控室のモニタで観ながらイチイチツッコミを入れるところもみどころ。決着時の”熱い手のひら返し”はお見逃しなく!

(文/シングウヤスアキ)

※ ちなみにアルドリッチ監督が生きていれば日本を舞台にした続編の計画があったとのこと。ドールズとクラッシュギャルズの対決なんてのもあったのかも?

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