“このミス”第1位の傑作ミステリーを映画化! トム・ハーディ主演『チャイルド44 森に消えた子供たち』監督インタビュー
2009年版「このミステリーがすごい!」海外編で1位を獲得したトム・ロブ・スミスのミステリー小説「チャイルド44」。現在大ヒット中の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のトム・ハーディを主演に迎えた、映画『チャイルド44 森に消えた子供たち』が現在公開中です。
本作は、1950年代、スターリン体制下のソ連を舞台に、子どもを狙った連続殺人事件の行く末を描いた社会派ミステリー。監督はデビュー作のデンゼル・ワシントン、ライアン・レイノルズ主演『デンジャラス・ラン』で一躍人気監督になったダニエル・エスピノーサ氏。今回はダニエル・エスピノーサ監督に電話インタビューを敢行し、映画について色々とお話を伺ってきました。
―本作は大ベストセラーとなったミステリー小説が原作となっています。映画化にあたってプレッシャーはありましたか?
ダニエル・エスピノーサ監督:原作物を脚色するという行為は、誰かの子供をお借りして、違う服を着させて「ほら、同じ子供でしょ?」と納得させないといけないという難しさがある。原作を読んでいる人が映画を観て、少しでも自分の想像と違う部分があるとガッカリしてしまうからね。読者によって想像も異なるだろうし、ある意味不可能なチャレンジとも言えるだろう。
―私は原作も拝読したのですが、映画版も見事にまとめられていて、特に脚本に時間がかかっているのでは無いかと感じました。
ダニエル・エスピノーサ監督:そうだね、脚本にはすごく時間をかけているよ。リドリー・スコットによって、僕が監督に決まる前から脚本は温められていたんだ。大体4年くらいかな。
―日本出身の私からすると、ソ連の政府がこんなに恐ろしい事をしていなんて……と驚いてしまうのですが、スウェーデン出身の監督からするといかがですか?
ダニエル・エスピノーサ監督:もちろん衝撃を受けたよ、これをショッキングに感じなかったら、その人は人格として問題があるだろう。でも僕の両親はチリの圧政化で難民になった経験を持っているので、この映画の様に政府の陰謀で恐ろしい事が起きる、という事自体には驚かなかったよ。あってはならない事だよね。
―トム・ハーディの抑えた演技も素晴らしかったのですが、彼を起用した理由を教えていただけますか?
ダニエル・エスピノーサ監督:トム・ハーディは、我々の世代にとってのマーロン・ブランドの様な存在でしょう。純粋のその才能を感じるね。人としてもとても美しく、人柄も素晴らしく、今は仲の良い友人の一人だよ。この映画では彼自身も、これまでに無い役柄に挑戦して、新しいスタートをきれたんじゃないかな。
―ちょうど今日本では『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が公開されていて、トム・ハーディに注目している人が多いので、この『チャイルド44』でもまた違う彼に注目していただきたいですね。
ダニエル・エスピノーサ監督:本当だね! 彼は見た目もゴージャスだし、心もイケメンで、最高だよ!
―ゲイリー・オールドマンの起用についてはいかがですか?
ダニエル・エスピノーサ監督:トムの起用が決まった後、ネステロフ将軍を誰にやってもらおうかと考えた。そこで、ずっと一緒に仕事をしてみたかったゲイリー・オールドマンに依頼をしたかったんだけど、コネクションが無かったんだ。そうしたら、トムが以前一緒に仕事をした事があり、彼を紹介してくれたんだ。初めて仕事をしてみて、ゲイリー・オールドマンはこれまで会ったどの俳優よりも準備万端で現場に挑む人だったよ。そして、20、30代の俳優よりもパワフルだ。以前『デンジャラス・ラン』で仕事をした、デンゼル・ワシントンと似た様な資質を感じたよ。
―ソ連の物語でありながら、イギリス人俳優を起用するという事もチャレンジだったのでは無いでしょうか?
ダニエル・エスピノーサ監督:ロシアにルーツがある俳優ももちろん探したし、ロシアの俳優を起用し、ロシア語で映画化するという事も考えた。でもそれよりも、キャラクターを忠実に演じる事の出来る力を重視したんだ。結果、トム・ハーディと、ゲイリー・オールドマンという素晴らしい俳優2人と仕事が出来て、僕はとても満足しているよ。
―2人と仕事が出来て良かったとおっしゃいましたが、リドリー・スコットとの仕事も、映画監督にとってはとても特別だったのでは無いでしょうか。
ダニエル・エスピノーサ監督:映画業界に携わっている者として、リドリー・スコットと仕事をする事は、夢見る事すら許されない様な夢であるよね。今回、仕事をご一緒して、彼の色々な話を聞いたけど、幼少期から今に至るまでの話を聞いているだけで、一つの映画を観ている様な気持ちになったんだ。
―そもそも監督が映画の仕事を目指したきっかけというのはあったのですか?
ダニエル・エスピノーサ監督:僕は非常に貧しい家庭に育ったので、将来映画の仕事に就けるなんて思ってもみなかったんだ。でも、16歳の時に1年間服役をしていて、その後養護施設に入った。そこで、ラッセ・ハルストレム監督(『ギルバート・グレイプ』『サイダーハウス・ルール』)の息子さんに出会ったんだ。それをきっかけに、ラッセ・ハルストレム監督に会う事も出来て、話したんだけど、自分の父親と比べると自分の父親の方が素晴らしい人間だなと感じる事もあって。だから、ラッセが偉大な監督になれるなら、僕もなれるかなって思ったんだ(笑)。
―なんとすごいエピソードでしょう(笑)。監督は実力はもちろん、幸運の持ち主でもあるのですね。これからの作品作りにも期待しております、今日はありがとうございました!
『チャイルド44 森に消えた子供たち』ストーリー
53年、ソ連で9歳から14歳の子どもたちが全裸で胃を摘出され、溺死した変死体として発見される。しかし、犯罪なき理想国家を掲げるスターリン政権は、殺人事件は国家の理念に反することから、事故として処理してしまう。秘密警察の捜査官レオは、親友の息子の死をきっかけに、自らが秘密警察に追われる立場になりながらも事件の解明のため捜査を開始するが……。
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