W杯アジア2次予選初戦は今日! ハリルホジッチに求められる手腕とは?
2018年FIFAワールドカップロシア大会に向け、いよいよアジア2次予選が始まる。11日のイラクとの親善試合では、宇佐美選手らの活躍によって4−0で快勝し、勢いに乗っているサッカー日本代表。今日6月16日にはシンガポールと対戦する。
アギーレ監督の解任後、次の監督はいったい誰になるのかと日本中の注目を集め、3月、ハリルホジッチ監督の就任が決まった。アジアカップの敗戦から、ハリルホジッチ監督就任後の初陣からは3連勝。球際の強さや縦への速い攻撃もうまくいっていた。
あくまで親善試合ではあるが、今の日本代表はいい状態に見える。それだけハリルホジッチ監督の力は大きいのかもしれない。ただし、負ければ、まず批判されるのも監督。そして、チームの課題をあぶり出し、解決していくのも監督だ。
本書『サッカーは監督で決まる』(清水英斗/著、中央公論新社/刊)では、モウリーニョら世界的な巨匠のメソッドから、監督に必要な力を導き出し、その指導術をふまえて日本代表監督を検証し、課題を浮き彫りにしている。
ハリルホジッチ監督が手を着けなければならない最重要課題は「世代交代」だと著者は述べる。
現在の主力選手である本田圭佑選手、長谷部誠選手、内田篤人選手、香川真司選手たちは、次のワールドカップが行われる2018年には軒並み30歳前後。ベテランの何人かは残るとしても、中核をなすメンバーは、もう少し下の世代になるのかもしれない。それは2012年ロンドン五輪の世代だ。山口蛍選手、宇佐美貴史選手、永井謙佑選手、酒井高徳選手、権田修一選手、あるいはロンドン五輪には選出されなかった武藤嘉紀選手や柴崎岳選手らだ。彼らを中核としつつ、ベテラン選手、16年リオ五輪からの若手をミックスしたチームがロシアに乗り込む日本代表23人のベースになるだろう。
著者は、結論からいえば、ハリルホジッチ監督は「世代交代」の問題は解決できるとしている。監督には、世代交代に向くタイプと向かないタイプがある。
アギーレ監督は、自由にプレーしてほしいという方針だったゆえに、その裁量に任せて組織プレーを成立させるには、自然とザッケローニ時代のメンバーとなり、世代交代には不向きだった。
アギーレ監督は選手に指示を出す場合、アドバイスは具体的なものではなく、ニュアンスだったのに対し、ハリルホジッチ監督は「こうやってプレーしなさい」というモデルが決定される。明確なチーム戦術の正解を打ち出したのだ。それによって、選手の反応が真っ二つに分かれていた。
武藤選手、宇佐美選手、酒井高選手といった選手たちは、素直にハリルホジッチ監督の指示に従った。
その一方、ハリルホジッチ監督の要求に対する戸惑いを見せたのが32歳のベテラン、今野泰幸選手だった。オシムジャパンの頃から継続的に代表に呼ばれてきた今野選手は、他の選手たちほど、スムーズには順応せず、葛藤を抱えながらプレーすることになったという。
この現象は、経験値がモノをいったアギーレ監督時代とは正反対であった。「こうプレーしなさい」と具体的な指示をするハリルホジッチのチームでは、逆に経験値が足を引っ張る。自分を変えられないベテランは淘汰されてしまうかもしれない。それは、自然な世代交代が進むということだと清水氏は指摘している。
本書では、モウリーニョ監督、グアルディオラ監督など、異なるタイプの世界的な名監督の指導メソッド、共通点や相違点を見つけ、サッカー監督の世界観を知ることができる。そうすることで、ハリルホジッチ監督のことも見えてくる。
ハリルホジッチ率いる日本代表の厳しい戦いはこれからだ。サッカー監督のことを知ることで、より深く日本代表の試合を楽しめるはずだ。
(新刊JP編集部)
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