<連載 第10回>スパガ個別インタビュー:才色兼備の知性派 勝田梨乃 夢とアイドルの狭間で揺れる心と5年のプライド
avex初のアイドル専門レーベル iDOL Streetの第1弾グループにしてトップランカーであるSUPER☆GiRLS。春から続いたこの連載ももう終盤戦、そんな第10回にご登場いただくのは天然系から脱皮した才色兼備 勝田梨乃だ。
15歳のころにスパガに加入してころは、ほわほわとした天然系のたたずまいで人気を集めてきたが、近年は関西での大学生活とアイドル活動の両立という忙しない日々の中で、広い視野と明晰な分析力を身につけた。ライブではMCでも存在感を示し、他のアイドルとのトークでは踏み込んだ“プロレス”ができるスキルを併せ持つ彼女は、かつて肩を並べていたももいろクローバーZやでんぱ組.incの背中を眺めている現状をどう捉えているのか。
5周年という節目を背水の勝負所と明言しつつも、なかなか好転しない現状の問題点や打開策、そして5年の活動の中で見つけた大きな目標とアイドル活動の間で揺れる素直な心境まで。当連載のトリ前を担当していただくにふさわしい、読み応え十分なインタビューです。
<東京オリンピックに携われるスポーツキャスターになるのが夢>
--最近ブログに5年間を振り返る投稿をされていましたよね。
勝田梨乃:ライブDVDとかを見直すんですけど、2周年のころとかはメンバーがみんな楽しそうで瞳がキラキラしてて、わからないなりにがんばってたんだなって。5年目って芸能界でも分かれ目だって言われているので本当に今年が勝負で、その中で歯がゆい想いをすることもありますし、メンバーと一緒に喜び合える仕事もあったりと一進一退を繰り返してますね。
--勝田さんはアイドル活動と学生生活をしっかり両立していますよね。
勝田梨乃:今年で20歳になりまして、大学3年生になりました!スパガになった時にはまだ夢がなくて、スパガとして形にしようと精一杯だったんですけど、自分の夢が明確になってきた中で、それ以外の時間をどう使うかが非常に大事だと思うようになってきました。
--その夢とは?
勝田梨乃:2020年の東京オリンピックに携われるスポーツキャスターになるのが夢です!そのために英会話スクールに通ってますし、大学でも語学を専攻しています。視野を広げて多角的に物事を見られるような授業を選んだりして、あんまり頭でっかちにならないように色んな人の話を訊こうとセミナーに出席したりもしてます。
学校では特別扱いはありませんし、だからこそスパガを客観的に見られる。スパガでは各分野のプロフェッショナルな子たちから刺激をもらって、学校ではより広い視野を持っている人たちからの意見をもらえるので、本当に毎日が刺激的です。
--高校のころは北海道に居て、今は関西で一人暮らししているんですよね?
勝田梨乃:そうです。ですので、自分でやらなければいけない環境に慣れてるのかなって。一般の高校や大学で社会のルールも学んでいるので、大変ですけど1人で生きていく力は人一倍あると思います。
<今はまだこの場所で戦っていかなければいけない>
--勝田さんって結成当初は天然のイメージでしたよね。
勝田梨乃:本当に無知でしたけど、あれが真剣だったんですよ!(笑) 北海道にいたころは箱入り娘……って自分で言うのも何ですけど、「梨乃ちゃんはお勉強だけしていれば良い」っていう家庭に育ったので、それしか知らなくて。当時はすいませんでした(笑)。
--20歳という節目を迎えた今、たとえば仲が良かった菊地亜美さんはアイドルを卒業し、所属していたアイドリング!!!もこの秋で現メンバー全員が卒業します。
勝田梨乃:明確な夢や目標ができた中で、今のスパガの活動がどうリンクするのか。どちらかに専念した方がいいんじゃないかって悩むことも少なくないんですけど、いつも思うのが「スパガで何ができたの?」ってことです。スパガで紅白に出られていないとか、レコ大の金賞を獲れていないとか、そういう状況に未練や想いがあって、まだまだだなって。それに昔の映像を見たりすると、あの12人から始まったんだなぁとか感慨深くなっちゃって、今はまだこの場所で戦っていかなければいけないと思います。
もちろんアイドルのマーケットが縮小していることは肌でも感じていますし、近年のアイドルブームが頂点にあった2012~3年ごろとでは温度が違うので危機感は覚えています。
--最近のシーンはより厳しい状況に突入していますよね。
勝田梨乃:やっぱり歌とダンスだけでは限界があると感じていて、たとえば後輩のGEMは今、勢いがあります。最近はLDHさん所属のグループみたいなかっこいいダンスが流行っていて、そういう方たちがアイドルシーンと上手く融合して、E-girlsさんのような人たちが活躍している。GEMもその流れに乗れていると思うんですよ。
王道アイドルって廃れはしないと思うんですけど、AKB48さんやモーニング娘。さんのような勢いはもうしばらくは来ないだろうと認識してます。だったら何で勝負するかと言えば、やっぱり個人活動。田中美麗が月9ドラマ『ようこそ、わが家へ』に出ていたりとか、個人の夢を追いかけているメンバーが結果を出してきているので、その子たちにあやかって(笑)、他のメンバーも夢に向かってがんばっていくことかなって。だって14歳で小説が好きな子とか、面白いじゃないですか!
<“ずっと”はないんだなって痛感した5年間>
--確かにメンバーに話を訊くと“個人の活動をチームに還元していく”と応える人が多かったんですよね。ただ、1つ心配なのが、そこでバランスを間違えると一気にバラバラになる恐れがあるってことで。
勝田梨乃:それは課題だと思っています。でんぱ組.incさんは個人が多方面で活動していて、グループとしても上手くいっている好例だと思うんですけど、今まで肩を並べていたアイドルがいきなり突出するのを眺める機会がスパガは多いんですよ。以前はももクロさんとも一緒にやってましたし。
--スパガほど、ブレイクするアイドルを傍らで眺め続けたアイドルもいないですよね。
勝田梨乃:私たちはお膳立てされすぎたというか、すべてに恵まれていた上で素人だった。スパガって素人の子が選ばれたグループだからすべてが初めてでしたし、そこに用意されている環境が普通になってしまっていました。
でも、引いていくものや抜かれていくものも感じてましたし、“ずっと”はないんだなって痛感した5年間でもありました。メンバーもずっと12人だと思ってましたから、卒業していくメンバーがいて、入ってくるメンバーがいて……、色んなことを経験しましたね。
--そういう想いがあるからこそ、自分の進退も難しくなってきますよね。
勝田梨乃:ただ、そういう想いだけで躊躇しているのも違うと思うし、なにより自分が抜けてから紅白に出たら嫌ですもん(笑)。初期メンでがんばってきたのに、そんな悔しい想いはしたくないので、虎視眈々と自分のチャンスを狙いつつ、夢に近づく準備はしています。アイドルブランドを活かして、出る所は出ていければっていうちょっとズルい考えもありつつ(笑)。
<私がいなくなって紅白に出られるのは嫌>
--ただ、アイドルという肩書きがネックになるケースもありますよね。
勝田梨乃:私、アナウンサーになりたかった時期があって、紺野あさ美さんがやっているのを見ていたんですけど、「やっぱりアイドル」と言われてしまうことがある。それは自分で振り払っていくスキルを身につけるしかないんですよね。肩書きで認めてもらえないなら、そのフィールドで戦える力をつけたいです。
芸能の世界を支えているスタッフさんって、一般の世界で学んできた人がほとんどじゃないですか。だから、その感覚がなければその人たちとはお仕事できないと思っているので、アイドルという観点だけでは見下されてしまうこともあるのかなって。私がやりたい仕事はそれじゃダメで、そういう方たちと対等にお話しできるような知識や教養をつけていきたいと思いますね。そのフィールドにも踏み入れさせてもらえる権利を得るために、自分ができることを考えています。
--では、それだけの見識を持っている勝田さんが思う、今のスパガに足りないものは?
勝田梨乃:やっぱり視野が狭いと思います。囲み取材の一言とかも狭くなりすぎていると思っていて、たとえば今の政治や経済を少しでも絡めたら記事になるとか、誰々がこう言っている裏にはこういう動きがあるとか、少しでも分かれば単純な「がんばります!」の先に行けると思うんです。アイドル=かわいいでは成立しない時代なので、何かを付随させなければ注目してもらえない。ただかわいいだけのアイドルはもう必要とされていないと思うし、世間も飽きていると思うんですよ。
--今、スパガは2015年イトーヨーカドーの新作水着「恋水着」のCMに出演していますが、これも結成当初から連綿と続いていることであり、変化なく王道を続けてきたからこそ得られたチャンスでもある。だからこそ、そのバランスは本当に難しいと思います。
勝田梨乃:たまに思うんですけど、「私って運営なのかな?」って思うくらい考えることがあって(笑)。普通のタレントやアイドルってここまで考えないよなって所まで考え込んじゃう時があって、アイドルより運営の方が向いてるんじゃないかなって。
--では、これからのスパガはどういうアプローチで進めていくべきだと思いますか?
勝田梨乃:やっぱり基本的にメンバーが不変で大所帯のアイドルって、今はあんまり目立っていないですよね。スパガはメンバーも年齢が良い時期になってきていますし、6年目、7年目となると打ち出し方が難しくなっちゃうんですよね。だからこそ、この節目の年に何かを掴まないと。何もなかったらどうしよう……って落ち込みそうにもなるんですけど、今はそんな事言っている時期じゃないなと思っています。
撮影:杉岡祐樹
◎SUPER☆GiRLS ライブ情報
【SUPER☆GiRLS LIVE 2015 5th Anniversary TOUR ~SUPER☆CASTLE~】
6月20日(土) TOKYO DOME CITY HALL
【@JAM in上海】
6月28日(日) 上海浅水湾文化芸術センター
【IDOL NATION × TOKYO IDOL FESTIVAL ~KOO MEETS IDOL KOO輩 大集合!~】
8月3日(月) 国立代々木競技場 第二体育館
【@JAM EXPO 2015】
8月29日(土) 横浜アリーナ
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