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アイデアを広げて深めるためのコツ

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■読者からの質問をめぐって
 前回の最後に4回目は「広げる」「まとめる」「深める」をどうつなげるかを説明するつもりと述べましたが、その後Amazonの「なか見!検索」が充実して本書の第4章を何ページも見られるようになりました。そのため、最終回は読者の立体的な理解の助けになることを期待し、『思考を広げる まとめる 深める技術』(中経出版/刊)出版以降に届いた主な質問に答えていきます。

  ◇     ◇     ◇

1、「広げる」における壁の越え方

質問:「広げる」とはいわゆるブレストのことと理解していました。壁にぶつかりアイデアが枯渇した時に、思考のベクトル、方向を変えてみることは(固定観念を捨てる)ということが分かったのですが、より効果的な壁を破る方法があればありがたいと感じました

回答:考えを広げるというのは新しい考えが出なくなった時に壁をこえていくこと、そう理解された上で、効果的に突破していくにはどうしたらいいのかという質問である。考えるテーマが重要だったり難問であったりするほど壁があるのは当然だ。当り前以上の案を出したいからである。
最も効果的と思う方法を8項目に集約して本に載せたわけだが、改めて考えてみてもそれ以上に薦めたい方法はなかった。8つのうちベクトルを変えて壁を破るイメージにもっとも近いのは「方向別に考える」であり、今まで考えていた空間と独立な方向を探すことである。質問者の趣旨は、「でもどうやって?」ということであろう。
これは、具体的な案を抽象的にまとめてみるのが一つのコツだ。本書で採り上げたボールペン新商品開発の例をとると、ある部分の素材をこう変えるという案を「使いやすくする」、「物理的に変える」などやや大きく抽象化し、「そうでない」案を考えると新しい方向性になっていることがある。
ところで、「広げる」のための心持ちをどう作るかも大事だ。この機会にヒントをまとめておきたい。助走をつけてうまく考えに入っていったり、考えが発展したりする流れを乗りこなしていくためのコツのようなものである。

取り掛かり
・(できれば)体力、周囲の環境が快適、落ち着いた状態で取り掛かる。
・安定した精神状態で、一旦心を空白にする。呼吸を整える(瞑想のイメージ)。
・ゆっくり考えられる体勢になる。広いテーブルに紙を広げるなど。ただし、きっちり机に座ってというのが窮屈であれば逆効果。ファミレスが最高という人も多い。慣れればランニング中なども(メモがとれないが)。

糸口を探る
・何を考えているのか、課題やテーマを改めて書いてみる。
・どこまで考えたのか、大まかな部分を書いてみる。
・(できれば)どう行き詰っているのか書いてみる。
・考え全体のバランスを確認する。
・その問題の本質を考える(何が大事なのか、要するに何が難しいのか等)。
・壁で行き詰まっているところや、それを突破する様子を視覚的にイメージしながら行う。

ペース配分する
・何回かに分けて考える。単純に疲れた場合は糖分などの補給も有効。行き詰った時には間をあけることも必要。
・再開する場合は0から改めて考える。前回考えた最後の部分をなぞって考え助走とする、加えて新しい方向性を探す。
・考えの発展は階段状に進み、踊り場があることを理解する。うまくその流れを読んで波に乗るようにする。

2、「広げる」ときの現実性

質問:「広げる」を行う時に実現可能性をどこまで考えるべきなのか

回答:小さく分かり易いテーマで考えることに慣れた人の場合、「まとめる」や「深める(確かめる)」をある程度同時に折り込みながら広げていくこともあり得る。次の例を考えてみよう。

例:東京から大阪へ向かう方法
1)フェリーでいく、ヒッチハイクでいく方法
現実性:低い。思いつきにくいが、状況次第では良いアイデア

2)ヘリコプターを使う、歩いていく方法
現実性:とても低い

3)宇宙船でいく、トンボに乗っていく方法
現実性:あり得ない

どこまで考えるかは状況によるが、一旦宇宙船やトンボを考えたことで中間のアイデアが連想されることもある。ヘリコプターは普通あり得ない選択肢だが、何百万円かけても早く着きたいという状況が生じたときには役立つかも知れない。
自由に制約なく考えることが重要であり、「現実性」の範囲は決まっていない。自分として普段より固定観念を外して考えられているなと思えれば十分だ。
一方、答えを見つけるのが困難だったり、本気で最高の答えを探したかったりする場合には、現実性は一旦忘れるのが原則である。

3、「深める」が苦手

質問:「広げる」「まとめる」については感覚的にも理解しやすいが「深める」については難しくあまりできていなかったので、もっと取り入れていきたいと思いました

回答:「深める」が難しいという意見は多い。「広げる」は企画力や発想法として、「まとめる」はプレゼン技術や文章作成術として多数の本があるが、「深める(確かめる)」は方法論として端的にまとまったものが少ない。「広げる」、「まとめる」に比べてゴールもはっきりせず、何をしていいかわかりにくい。そもそも必要性を意識していない人が多そうだが、思考力には不可欠の要素である。本書では17項目としつこいほど詳しく説明している。

慣れていくためには使う機会を見つけなければならないが、「いつ使えばいいのか?」が問題である。
何か考えた後に「正しさや深さにどうも自信がない」という時がチャンスだ。1〜2の深める方法をあてはめてみるといい。考えが深まったことが実感できればよし、次の機会を探していけばいい。
どこまでやればいいのかも難しいところだ。一旦十分考え尽くしたと思える、外に出すのなら「あまり恥ずかしくない」という段階等が目安になる。繰り返せば自然に「深める」程度が上がっていくだろう。

4、決断、組織決定

質問1:最終的なアイデイアを決定するキーは何か
質問2:特に中小企業のオーナーワンマン社長などの経営者は自分の経験・認識だけで物事を判断・決定してしまうのでこの方法をいかに活用させるか、難しい局面もあるかなと思います

回答:これは実際的な意志決定に関する質問である。
仕事では組織決定され実行されなければ考えても無意味である。決定が難しいのは、その決断が大きなリスクと結びついている場合が多い。生活や将来がかかっている場合は、感情や哲学も絡んだ決断になる。
ところで、情報不足のために正解が分からないということもあるだろう。状況が刻々と変わるダイナミックな課題では、時間が経つほど情報が集まり判断しやすくなる。一方、決断が遅くなるほど事態が深刻になったりオプションが狭まったりすることがあり「いつ決定すべきか」の判断は容易ではない。
一般論としては、必要になりそうな情報は早めに見当をつけて入手に動き可能な情報は得たうえで決定する。部分的に「やってみる」のも同じ効果がある。ただ、決定のタイミングを見極めることが重要で速いほどいいとは限らない。「即断即決」という言葉は最低限の情報を整理できた上での話で、静的な状況で思考力を鍛え、「シナリオを考える」などにより起こり得ることについてあらかじめ考えておけば、動的な環境への対応力も高められるはずだ。
また、十分考えた後に短時間で決定するにはもう一度状況をシンプルに捉え直すとやりやすくなる。最終的に大事なことは何か、最悪の結果は何かなどを考えるのだ。
上司や同僚との付き合い方においては、認識を合わせていくことが大事だ。意見があまり通らないと感じたら、環境認識を事前に少しずつ刷り込んでおく。自分の視野が十分でないこともあるので相手がどういう点から対象を見たいのか、早目に目線を共有しておくことも有効だろう。

5、会議の進め方

質問:この方法を会議等で取り入れる際に効果的なやり方を(ややもすると喧嘩になることもあるので)、教えて頂ければありがたいです。

回答:テーマが難題である場合、会議が思うように進展しないケースも多いがどうすればよいかという主旨の質問も頂いた。
本の中でも述べているように会議の目的をはっきりさせるのは基本的なことである。「広げる」目的での発言を現実性がないとして否定する、等のトラブルを避けることができる。
また紛糾を避けるためには議論の堂々巡りを避けることが必要だ。司会がホワイトボードを使って要旨をまとめていき、新しい内容のみが発言されるようにリードするのもいい手である。「言い足りない」ので、同じことを繰り返し発言するというのもこれである程度防ぐことができる。
発言がバラバラにならないようにするには一定のフレームワークの中に整理をしていくといいが、リアルタイムで司会をしながら行うとすると簡単な横軸、縦軸(場合により片方だけ)の表が便利だ。もちろん適切な軸、切口を使うには会議前に司会者が話の内容を予想して、どう整理するか考えておくことが必要であろう。
ところで、議論の内容に構造的な利害対立、個人の争いや交渉が絡んでいる場合には、多人数の場では意思決定できないことがある。しかし、多くの場合は認識の差異が紛糾や結論の出ない原因となっているため、論理的な方法により短時間で解きほぐしていくことができるか。まずは目指してみるべきであろう。

  ◇     ◇     ◇

以上5つの質問は、本を読まれた方が各々の状況に照らして具体的にどうすればいいのかを真剣に考えていただいたものであり著者として感謝します。繰り返しになりますが「急がばまわれ」、毎日数分間でも3つの方向性、さらには具体的なその方法を思い起こして考える練習をしてもらいたいと思います。スポーツや芸術などの分野では、小学生でもプロでも毎日の基本練習メニューは欠かせません。考える力を伸ばすのも同じことだと思いますが、圧倒的にメニューの提供が少なく具体的にどうしていいのか分からなかったのではないでしょうか。本書がこの一助になればと願っています。
(著者・太田薫正)


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