確定申告を漫画でマスター!元税務署員が描く『のうぜい!』作者まことじ氏インタビュー

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今年も確定申告の季節がやってきました。2010年分の確定申告は2011年2月16日(水)からスタートします。個人事業のクリエイターさんをはじめ、アルバイト収入を得ている学生の方にも他人事ではありません。ただ、納税は義務ですから確定申告ってどうしてもやらなければいけないことだとわかっていても、税金の事なんて難しくてよくわからないし、ついつい敬遠しがちになってしまいます。

そんな貴方に、ハーヴェスト出版発行の『のうぜい! ~同人作家のための確定申告ナビ~』(著:まことじ、フルカラー、税込み1500円)はいかがでしょう。帯には「これならわかる!確定申告をマンガでマスター! 元税務署員が執筆した“使える”フルカラーコミック!」と書いてあります。「同人作家のための」とありますが、それは特に同人作家が確定申告をする際につまずきやすいポイントを中心にまとめてあるためで、実際に読んでみると職業や活動に関わらず個人が確定申告をする際にまず知っておきたいことが描いてあり、確定申告とはどういうこと?という初歩の初歩からを楽しく学ぶことができます。

作者のまことじ氏は『ニコニコ動画』での動画作品「へんたいシリーズ」の大ヒットにより『ニコニコ静画』の公式サービス『ニコニコで漫画を描いてみた』にて『壱億返済日記』(http://seiga.nicovideo.jp/manga/1oku)を連載する大人気作家です。個人のウェブサイトとしては『たろ~うぃ~とユカイな仲間たち』(http://www.geocities.jp/tarowy85/)を運営されています。そこで今回、著者のまことじ氏と、まことじ氏が税務署勤務を辞してまでこの本を執筆するきっかけを作ったハーヴェスト出版の編集者である蒲澤宏和氏(通称:Kさん)に直接インタビューをすることとなりました。

まことじ氏は新潟県新潟市生まれ、商業高校を出て国家公務員Ⅲ種試験(税務)に現役合格して上京。関東圏内の税務署に異動を繰り返しつつ勤めた後、本書の執筆をきっかけに退職し現在は作家として活動しています。蒲澤氏は、やはり『ニコニコ動画』で活躍する春原ロビンソン氏が描く漫画作品『anime95.2』の編集なども行った、小説作品の多いハーヴェスト出版の中でも異色の作品を次々と生み出す編集者です。

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ガジェット通信as@地生(以下 as@地生): このたびはお時間をいただきありがとうございます。早速ですが、これまでは仕事ではなく個人で自由に動画制作や同人制作を行われていました。今回仕事で本格的に漫画を描くということになりまして、普段の制作と比べてなにか変化はありましたか?

まことじ氏(以下 まことじ): 今回の作品に関しては、基本的に全て自由に描かせて頂いたので、いつも描いている作品と変わるところはなかったですね。

as@地生: 編集側からは作品についての要望やアドバイスはありましたか?

蒲澤宏和氏(以下 Kさん): 税金のお話は専門家さんですから全てお任せですし、漫画に関しても全面的に信頼してお任せしておりますので、はじめに「ページが左右どちらにあってめくるとどうなる、という展開だけは意識してください」ということを言ったくらいですね。

as@地生: 本作を作ろうと思ったきっかけをお聞かせください。

Kさん: 2010年6月頃の話です。私が「描いてくださいよ~」と申し上げたことからだったのですが……。実は元々は弊社の社長が実用書っぽい作品を出したい、と言い出したことがきっかけでした。別件の仕事でまことじさんが税務署の職員さんだということが会社で話題にあがったのです。そして社長と私とまことじさんの3人で新宿を飲み回った時に交渉しました。もちろん辞めて描いて欲しいと申し上げたわけではなく、税務署の職員さんが本を出すことというのは前例があるようでして、同じように上司の方にかけあうことで出版できないか、というお話しだったんです。その次の日にまことじさんから『Twitter』のダイレクトメッセージ(直接、送った相手にしか読むことのできないメッセージ)が飛んできまして……。

まことじ: 春原ロビンソンさんが出された『anime95.2』の発売日にサイン会があったのですがその直前くらいでしたね。サイン会のあとの打ち上げやその後の飲み会でも誘われまして。僕もお話しをいただき本気でやる気になってしまいまして、やるなら仕事のしがらみを抜け出して本気でやっていきたいと思い、税務署の方を辞めることにしました。

as@地生: つまり完全に明確に絶対に確実にKさんのせいで退職なさった、と!

Kさん: まさか辞めるとは思っていなかったんです……。

まことじ: 国家公務員を捨てたので人生賭けています!!

as@地生: 現職職員が税務に関しての実用書を書くのが困難であるとはいえ、仕事を辞めてまでというと本作にかける思いは相当なことと思いますが。

まことじ: 特に同人界隈の皆さんや個人で事業をやっている方がみんな当たり前のようにきちんとした帳簿を作って、当たり前のように確定申告をするという、個人事業主たちの税務的にクリーンなイメージを作っていきたいという思いがありました。

as@地生: そんな人生を賭けた本作の制作期間はどのくらいでしょうか?

まことじ: 元々ずっと描きたい思いがありまして頭の中にプロットだけはかなりできあがっていたんです。そういうこともあり、フルカラーで約180ページの本だったのですが3ヶ月弱で完成しました。

as@地生: 3ヶ月弱!しかもフルカラーなんですよね。一体制作スタイルはどういった形だったのでしょうか。

Kさん: 本来描き下ろしで漫画の単行本を出す際は文章で事前にプロットを頂くのですけれど……。まことじさんのスタイルとして最初から下描きをした方が良いということでしたので、キャラ設定、キャラデザインと目次だけを先に送っていただきました。

まことじ: 文章にするより文字と絵を一緒に考える方が得意なので、最初から全ページ分の下描きをプロットとして送りました。

as@地生: まことじさんとKさんの信頼関係が3ヶ月弱という短期間の制作期間を生み出したわけですね。使用した制作機材やソフトはどのようなものなのでしょうか?

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まことじ: 全てパソコンですね。ペンタブレットはかれこれ5年くらい使い続けている『Intuos3』です。基本的に全て『SAI』で描いていて、一部に『Photoshop』と『ComicStudio』を使っています。
手順としては『Photoshop』でコマ割りと文字入れをして『ComicStudio』で枠線を作り『SAI』で絵を描き『Photoshop』に戻って印刷に適した形式に変換する、という方法ですね。

as@地生: Kさんの編集についてはどのようなことを行うのでしょうか。

Kさん: ソフトは『InDesign』を使っています。装丁などは別として、まことじさんのお手伝いとしては枠線の外に絵がちょっとはみ出ているのを綺麗にしたり絵の細かいゴミを消したりですね。あとは枠線の上に絵の色が乗っていたものについて、枠線が絵よりも上になるように修正するといった細かい修正サポートを行ったくらいです。

as@地生: まことじさんと言えば『ニコニコ動画』の動画制作者としても有名な方です。どういった経緯で『ニコニコ動画』に投稿を始めたのですか?

まことじ: 動画を作り始めたのは2008年のゴールデンウィークに実家へ帰省した時からです。実家は新潟なのですが、そこであまりにもすることがなくて、その頃から『ニコニコ動画』はよく見ていたので何か投稿しようかな~と思いました。ただビシッと気合いを入れた絵を描いて動画を作るとどうしても時間がかかってしまうので、もっと緩い気持ちで作って投稿しました。それが「へんたいシリーズ」の1本目である『へんたいかがみさん』です。最初の頃はひとつの動画を2時間くらいで作っていました。今はサムネイルを少しだけ凝るようになって3~4時間で作っていますね。動画自体を作る時間はあまりかわらないです。これまで作った数は合作などで作品リストに入れていないものも含めると150本くらいはあると思います。

as@地生: 確かに作品数も非常に多くて一度最初の話しを作るとそこから短期間に大量の作品を投稿する作家さんですよね。今回の本では「同人作家のための~」というサブタイトルがありますが、まことじさんは同人活動に関してはどういったことをされているのでしょうか?

まことじ: 同人活動については友人の出す同人誌について頼まれたゲスト作者としての参加や、イベントでの頒布のお手伝いくらいのことをしてきました。これは今後もスタンスを変えず、自分一人でのイベント参加はしないつもりです。

as@地生: 影響を受けた作家・作品についてお聞かせください。

まことじ: 『WORKING!!』(著:高津カリノ)というテレビアニメ化もされた漫画があるんですけど、アレは元々ウェブ漫画として連載されていたものなんですよね。それが前から好きでずっと読んでいました。

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as@地生: 自らの創作活動で大切にしていることはなんですか?

まことじ: 「とにかくわかりやすく」ということを大切にしています。自分の作品は漫画も動画も文字がものすごく多いんです。絵よりもむしろ文字がメインというくらいに。だから文字でわかりやすくすることを一番に考えて制作しています。

as@地生: 今後の活動についてお聞かせください。

まことじ: この本をきっかけに公務員を辞めてフリーに転向したばかりで今はまだ時間に余裕がある状態です。何でも描くので仕事ください!

Kさん: まことじさん、将来的に新潟に帰ることはあるんですか?

まことじ: 今は全く考えていないですね、ただ新潟に何かしら寄与したい気持ちは強いです。親善大使を狙っています。マスコットキャラとか描きますよ!新潟市さん!!

as@地生: そういえばまことじさん今は時間が結構ある状態なんですよね。これまでは毎日仕事があったわけですが、今急に時間ができて何をやってるんでしょうか。趣味などはあるんですか?

まことじ: 本当に無趣味なんですけど、普段は原稿をやるかうちで寝てるかなんです……。税務署時代は朝5時に起きて夜は0時くらいに寝てたんですけど、今は朝6時に起きてご飯を食べて新聞を読んで原稿をやって、12時くらいに昼食をとったら2~3時間寝て、また起きたら原稿をやって、そして夜1時~2時くらいに就寝していますね。

as@地生: 公務員を辞めても規則正しい生活から抜け出せないなんて羨ましいような大変なような、でも健康には良さそうです。いや外に出ないとやっぱり駄目ですかね……。まことじさんは新聞を読まれるんですね。最近は新聞を読まない若い方が増えましたが、何か理由があるのですか?

まことじ: 高卒後の13ヶ月間(現在は12ヶ月になっている)は陸の孤島のような千葉の西船橋にて税務署の研修をしていました。研修中はパソコンやテレビなどの娯楽は基本的に禁止。ギリギリ雑誌や漫画くらいしか許されていませんでした。大げさな言い方をすると、新聞だけが唯一外の世界を知るための情報源だったんです。

as@地生: な、なるほど。研修ってそんなに過酷なものなのですね。驚きました。パソコンが1年も使えないなんて今は想像がつかないです。まことじさん、Kさん、今回はどうもありがとうございました。今度こそ最後になりますが、インタビューをご覧の方にまことじさんから一言お願いします。

まことじ: 皆さん税金のことをもっとよく知ってくださいね!

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インタビュー中は終始優しい表情で爽やかな雰囲気を保ちつつ、伝えたい思いについては真剣で熱い目を輝かせるまことじさんの活動を今後も追っていきたいと思います。『のうぜい!』の書籍内容紹介動画は『ニコニコ動画』にて公開中です(http://www.nicovideo.jp/mylist/22635789)。
 

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