今度のリーアムは“最強”じゃない! 地に足の着いた逃走劇が魅力な『ラン・オールナイト』[映画レビュー]

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RUN ALL NIGHT

『96時間』でアクション俳優の道を切り開いたリーアム・ニーソン主演最新作『ラン・オールナイト』が、5月16日(土)より公開中です。

【ストーリー】
自らの家族を守るため、マフィアのボスの息子を殺してしまった主人公。報復の舞台はニューヨーク。マフィア、最強の暗殺者、買収された警察、顔見知りの隣人すら敵かもしれない。夜明けのタイムリミットが迫る中、どこへ逃げても死に直面する徹底的な包囲網に生き延びる可能性は、ゼロ。冒頭から張りつめ続けるノンストップ・アクションの果てに、想像を超えたラストシーンが待ち受ける……!

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「また無敵のリーアム・ニーソンがカッコよく家族を助ける映画? もういいよ」…と思ってるそこのあなた! 5/16より公開中の『ラン・オールナイト』は違うんですよ!! 

リーアム演じるジミーは、かつてはNYを一手に牛耳るマフィアお抱えの凄腕の殺し屋でしたが、老いを迎えた今、その面影はみじんもありません。35年間ものつきあいで、現在も裏家業を続けているボスのショーン(エド・ハリス)のお情けで、酒びたりの日々を送る有様です。危険な仕事を優先し、家族を顧みなかったために今や孤独な人生。妻を亡くした後は一人息子のマイク(ジョエル・キナマン)から縁を切られても仕方ないとあきらめていたジミーでしたが、ある晩、マイクが殺人を目撃します。しかもその犯人は恩人ショーンの息子ダニーという最悪の事態。しかしそれがジミーにとって、自分の人生を立て直せるかもしれない、たった一度のチャンスとなるのです。

そのチャンスとは、なんとしてでもマイクの命を守ること。一度でいいから息子の役に立ちたい、後悔したまま人生を終わらせたくないという必死の思いで、ジミーは命がけでマイクを救う決心をします。

最愛の息子を殺されて復讐に燃えるショーンの手下、マイクを殺人犯として追う警察、マフィアと組んでいる汚職警官、冷酷な殺し屋、そしてニュース速報を観た一般市民さえもが彼らの敵。絶体絶命のジミーとマイクにNYの街は味方になってくれるのでしょうか。

今までのリーアム主演アクション映画といえば、かよわい女性を助けるため、次々に襲いかかる敵を完膚なきまでに叩きのめしてさすがリーアム!とスカッとする作品が多かったですが、今回は冒頭から絵に描いたような酔っ払いの役どころ。鍛え上げた肉体や、最新の武器も登場しませんが、逆に、派手なアクションシーンを抑え、地に足の着いたようなリアルな逃走劇が見所となっています。

父親の過去が事態をさらに悪化させ、自分の家族さえも危険にさらされてしまったマイクは、素直に父の助けを受け入れられません。昔のようなフットワークはかなわずとも、暗黒街ならではのサバイバル術で必死に自分を守ろうとするジミーと、そんな父を今や身体的には追い抜いてしまったマイク。二人三脚で逃亡しているうち、不器用ながらもだんだんと父子の絆を取り戻していきます。

そしてクライマックスには、家族よりも濃いつながりのジミーとショーンの対決が待ち構えています。監督はじめ、出演者たちが惚れこんだという脚本を、この二人の名優がどう演じているのか。最初から最後まで一秒たりとも見逃せません! 

リーアム・ニーソンといえば、ローレンス・ブロック『獣たちの墓』(二見文庫)を映画化した『誘拐の掟』の公開も控えていますが、その主人公、酔いどれ探偵マット・スカダー役とは一味ちがったリーアムを、ちょっとお先に堪能されてはいかがでしょうか。

【著者プロフィール】♪akira
WEBマガジン「柳下毅一郎の皆殺し映画通信」(http://www.targma.jp/yanashita/)内、“♪akiraのスットコ映画の夕べ”で映画レビューを、「翻訳ミステリー大賞シンジケート」HP(http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/)では、腐女子にオススメのミステリレビュー“読んで、腐って、萌えつきて”を連載中。AXNミステリー『SHERLOCK シャーロック』特集サイトのロケ地ガイド(http://mystery.co.jp/program/sherlock/map/)も執筆しています。

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