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【米光×中村 ぷよぴったん対談】その1:パズルゲームクリエーターの2大巨頭が出会う

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『ぷよぷよ』『魔導物語』『バロック』などの名作ゲームを生み出した米光一成氏と、人気ゲーム『もじぴったん』シリーズのディレクター、プロデューサーを務めた中村隆之氏。現在、米光氏は立命館大学で講義を持ち、電子書籍を対面販売する“電書部”を主宰、中村氏はバンダイナムコゲームスを退社して現在は講演を中心に活動するなど、ゲーム業界とは少し離れたフィールドにも軸足を置いて活躍しています。“国産2大パズルゲーム”を世に送り出した2人は、今何を教え、ゲームについて何を考えているのでしょうか。ガジェット通信はこの2人の対談を企画、このとき初対面という2人に「遊び」「学び」「ゲーム」「電子書籍」をキーワードに語っていただきました。第1回は、中村氏から米光氏への自己紹介から。『もじぴったん』が生まれた背景から、その面白さの分析へ話は進み、ゲーム業界の当時の動きが2人の対話から見えてきます。

聞き手:ガジェット通信 宮原俊介(shnsk)

※第2回「【米光×中村 ぷよぴったん対談】その2:「世界は全部ゲームになる」 “米光予言”が示唆する新しい学びの姿」はこちら( http://getnews.jp/archives/96967 )

・だれもが無理だと思った『もじぴったん』

中村:僕は元ナムコで『もじぴったん』の初期から……もともとはプログラマーでかかわっていて、企画をやったのが後藤君(後藤裕之氏、『もじぴったん』のゲームデザインを担当)。彼が入社2年目だったので、ディレクションは僕がやるよという形になって。僕はメインプログラムとディレクターを兼任して、アーケード版の『もじぴったん』を最初に作りました。家庭用にやるときにはプロデューサーという立場になって。そのときはしばらくプロデューサー兼ディレクター。プロデューサーになってからはゲームの中身だけじゃなくて、売り方とか考えなきゃいけなくなって、当初は試行錯誤でやってました。

今言うのもアレなんですけど、PS2版の『もじぴったん』を出した後に、目標は「『テトリス』と『ぷよぷよ』の次」だったんで、第3のパズルゲームになりたい、みたいな感じで頑張ろうとしてたんです。そこまではいけてないかもしれないですけど、パズルゲームというよりは、「知的な好奇心くすぐるパズルゲーム」と僕らが言っているカテゴリーで、そこそこ認知されるようになったかなとは思います。

米光:アーケードとPS2版、やりました、ハマった。“パズルゲーム+α”みたいな感じがあって。言葉を使っていくところが。驚いた。言語を使う企画は考えたことあるんですよ。僕はアナログゲームが好きなんで、アナログゲームだとああいう言葉を使った融通をきかせられる遊びが凄く面白い。そういうのがコンピュータゲームになると面白いと思うけど、でも難しいなと。

中村:普通そうですよね。

米光:言葉として正当かどうかっていう判定をすることを、どうするんだ、と。今だとネットがあるから、もう少し発想が広がるけど、当時だとなかった。「ガンダム」って言ったときに、それを認知する方法があまりにも難しすぎると思ってるところに『もじぴったん』が出て、「わあ、何それ?」って思って。

中村:「できるんだ」と。

米光:「どういうこと?」って思って、やってみると「ああ、辞書みんな持ってるのか!」という。なんて言うんだろう……。

中村:力技で。

米光:ホントに力技! その後、雑誌か何かのインタビューで後藤さんが企画をプレゼンして、「それできないよ」と言われたら「もう辞書作ってます」って答えたってのを読んで。

中村:彼がプレゼンをしたとき、僕がその場にいて「面白いよ」と。「面白いけど、辞書作るの大変だよ」と言ったら、「もう2万語作ってます」と。「なんじゃこいつ」と思いましたね。

米光:僕、その話好きで。今、学生とかに教えてるんですけど、その話するんですよ。「お前ら企画って言ってるけど、2万語の辞書用意してから言ってるのと、用意してないで言ってるのは明らかに違う」と。

中村:それは違いますね。

米光:用意してると、「じゃあ、やらせてみようか」っていう。その覚悟というか、愛というか、そこまで掘り下げているのかどうかっていうのはやっぱり……ねえ。

中村:そうですね。当時同じ反応があったと思うんですよ。面白いけど、「難しいよ」「無理だよ」っていう反応だったと思うんですけど、そこが「できてる」って聞いて。なおかつ会社の後藤君の席に行ってみたら紙が貼ってあって、「これ何?」って聞いたら「ギネスブックの認定証です」と。見てみると円周率暗唱世界記録で。「これは本物だ!」と思って「すぐ作ろう」って言って作り始めましたね。

・試作したら企画が通った

中村: 『もじぴったん』の原型は最初社内のウェブでJava版を公開したんですよ。話それるんですけど、僕干されてたというか、社内でホントに窓際になってたことがあって。ホントに窓際にひとりだけポツンといる状態になってました。それは自分がやっていたプロジェクトが、上司が代わって解散になってしまって、僕が1人、残ってしまったんですよ。でもプログラマーだし、「よし、こうなったら1人でゲーム作ってやる」と思って。目標1か月に1本、3か月連続でJavaを使ってゲームを作って。

Javaを選んだ理由は、当時ドコモの『iモード』にJavaが載るというウワサだったんで、これは携帯電話向けのゲームを先に考えておいた方がいいだろうと。それで作り始めたんですよね。そうしたら案外作れるもので、1本作って、2本作って、3本作って、素材も全部自分で用意して。

米光:どんなの作ったんですか?

中村:最初に作ったのは『パックマン de パズル』というパックマンの素材を使った、『チューチューロケット』みたいなルールのパックマン版パズルゲームを作ったんですよ。Javaだとブラウザで遊べるんで、社内のウェブにのっけて、「みんな遊んで」って言って。アンケートページを作って、みんなどれぐらい面白いか5段階でとって。結構好評で。パパっと試作して、みんなにやらせるのはアリだなと思ったんですよ。

そんなときに後藤君の企画の発表があって、「これは面白い」と。辞書の問題さえクリアになればできると思ったので、行ったら辞書ができてるっていうから「じゃあやろう」と言って。1か月で20面ぐらいの試作版を作って。僕はプログラムで、後藤君がゲームデザインやって、デザイナーさんと音楽1人の4人で1か月で作って。これが結構受けてですね。いろいろ問題はあってもかなり可能性を感じてたんで。

アーケード版の企画を通すときとかも、Javaの試作版をCDに焼いて事前に配っておいたら、説明要らずで。会議が始まってから普通はもめるんですけど、「なかなか面白いんじゃない」「やってみれば」と。

宮原:企画書は作ったんですか?

中村:企画書も作りましたね。

宮原:それは社内手続き上必要という?

中村:社内手続き上というより、後藤君がゲームのシステムを説明するために作ってました。一番最初に連鎖の仕組みとか、彼の頭の中でできあがってて、たとえば5連鎖起こる仕組みを何ページにもわたって説明したりとか。結構分厚い企画書になりましたね。彼の頭の中ではできあがっているので。

米光:脳内プレイしている感じですね。

中村:プレイしている感じのものを作ったんで、こっちもイメージはつかみやすかったですよね。でも現実に落とすために、いろいろやりながら調整していったところがあって。最初は文字がランダムに出てくるようにしてたんですけど、クリアできない可能性があったので、最初から準備したものにしようとか。それでいろいろ形になってきて。

結果としてシリーズ通算で100万本は超えたんですけど、僕は正直、そこまで売れるものと思ってなかったんですが……。当時ウェブ版を作り終わったときに、「これは社内に眠らせておくには、あまりにもったいないから、オレが頑張ってなんとか世の中に出そう」という燃えた気持ちが。

米光:使命感みたいな。

中村:使命感がありましたね。

・PS2の登場で変わったゲーム業界

中村:当時って、『プレステ2』が出たときで、『鬼武者』とか画面が暗くてリアルで、というものの全盛で、社内もほとんどみんな「どうやってリアルな絵を出すか」というのをプログラマーもデザイナーも考えてて、企画はシナリオのボリュームを出すという。

米光:ナムコなのに。

中村:(笑)。ナムコなのに。

米光:そこは言っておかないとね。ナムコなのに!

中村:それに抵抗を感じてたんで。僕としてはすごくやりがいがあったんですけど、案外周りからは当時、冷ややかな目で見られましたね。アーケード版で、ほとんどマスターだったROMを販売の人に回したら電話かかってきて「絵が仮絵なんだけど」って。「できてないんだけど、ちゃんとしたROMちょうだい」って言われて「それ完成版なんですけど」と(笑)。

僕としてはファミコン時代のゲーム、スーパーファミコンぐらいまでのゲームがすごい好きで。あの当時って画面に表示できるものって少なかったから、「これは敵」「これは味方」というのがはっきり分かる。だんだんグラフィックが豪勢になっていくと「オレ、これ当たっていいのか」とか。

米光:PS2の最初のころ、そうでしたよね。3Dで、アイテムがリアルなので、背景に埋もれて見つかりにくい。だから、わざわざ光らせたりして。頑張ってリアルにしたのに光るのかーって感じで、難しいところに来てるなと。

中村:昔は宝箱は宝箱でしたからね。

米光:あとは青空みたいな。

中村:そのへんがちょっと引っかかってたんで、僕としてはそうじゃない方向に行きたかった。ナムコ信者なんですよね。ナムコ大好きでナムコに入ってきたから、そっちの方がナムコっぽいと思って。たまたま後藤君との出会いがあって、いい具合にいったという感じなんですよね。

・ゲームが新しい面白さを手に入れた

米光:『もじぴったん』が凄いなと思ったのは、“ナムコスピリッツ”と僕たちが思うものを持ちながら、ファミコンではできないじゃないですか。単純なノスタルジックなゲームじゃない。辞書の問題が凄く大きいと思うんだけど、辞書がただの辞書じゃなくて、やってるうちにこの辞書を作った人のキャラクターがだんだん見えてくる。最初はゲーム性や“ナムコスピリッツ”というところでワーっとやってるんだけど、だんだん「あ、この辞書作った人はこんな人だな」と。ちょっとした冗談が入っていたりとか。

中村:遊びが入ってるんですよね。

米光:遊びが入ってたりとか、言葉のセレクションや解説の面白さみたいなものが。いろいろ制約もあるんだろうけど「ここは頑張って入れてる」とか。

中村:それはそういう職業をやられていると分かると思います。18文字ですべての言葉の意味が入るというのは奇跡的というか、ホントに才能なんですよね。Wii版の最後の辞書は14万語ぐらい入ってるんですけど、全部意味を入れてるんですよ。

米光:意味が正しい説明じゃなくって。「おお!」みたいな。こういう意味と言うかと。やってるうちに徐々に面白さが分かってくるところが、これはちょっと新しい“ナムコスピリッツ 2.0”だなと。

中村:後藤君が聞いたら喜ぶと思います。

米光:やってて発見して、自分でも嬉しかったりとか、ゲームがまた新しい次の面白さを手に入れた瞬間だなと思って。

中村:そんなこと言ってもらえると感激です。

・日本語2文字で68%のゲームバランス

米光:あと、2文字の言葉をどうするかという議論はなかったですか? 2文字の言葉が入ってることによって連鎖も起こりやすくなるし、初心者がやりやすくなるけど……。

中村:何文字の言葉がどれだけできるかがゲームバランスを左右してるので。実は9文字の言葉を追加するのは辞書を作っている後藤君に言えばどんどん入るけど、2文字は慎重になっていて。

米光:そうですよね。パズル的に考えると、2文字を禁止にした方がパズル性が高くなりますよね。2文字だとなんとなく分からないときに「適当に入れてみよう」とか「こんな言葉あったんだ」で行けてしまうから、ゲームとしてはあれがあることでやりやすくなってるんだけど、パズルマニア、ルールマニア的には、「ナシにする手もなかったか?」と思いながらやってたんだけど。そこは難しいですよね。

中村:すごい初期の段階なので今は変わっているかもしれないですけど、確かランダムな2文字を持ってきても、68%は言葉ができるというバランスだったんですよ。7割弱ぐらいできると。逆にこれを減らしてしまうと、すごいストレスがたまるんですよね。入れてもなかなかできないし、難しくなるし、でも増えすぎるとパズル性がなくなってしまうところがあって。初期に68%が決まったところから、実は2文字の言葉ってほとんど追加していないんですよね。バランスが崩れちゃうんで。

米光:2文字でバランスが決まっちゃうところが、パズルマニアとしては「そこかあ、そこで決めちゃうか」と。

中村:逆に言うと、日本語以外のほかの言語ではまったく同じルールができないんですよね。英語版を試しに作ってみたんですよ。だけど、英語で2文字の言葉ってほとんどなくて。まったくできないからゲームにならないんですよ。「at」とか「of」ぐらいしかない。

だからあれは日本語の、日本語自体が持っているバランスが、微妙なゲームバランスを不思議に実現しているという。

米光:英語版を作るとなると、ルールを大きく変えないと。

中村:英語版は全然違うルール、パズルとしても違うものにしないとダメだと思いますね。僕らは作ってるときは連鎖を積む、『ぷよぷよ』で言うと連鎖を組んでおいて、最後にバーンって連鎖を起こす計画的連鎖が後藤君の考えていたゲーム性だったんですけど、案外作ってみたら、言葉なんで、自分が思ってもみない言葉ができても嬉しいんですよね。というかむしろそれが、パズルをあまり好きじゃない人も「こんな言葉あるんだ」というのが嬉しく感じるというのがあって、それが作った後の発見ですね。

最終的に僕はプロデューサーになって、ゲームの売りを言うときに「ひらめきと偶然が言葉を紡ぎだす 知的好奇心をくすぐるパズルゲーム」というコピーをつけたんですけど、ひらめきはひらめきで、こういう言葉があるだろうという「あか、あか……茜(あかね)!」というひらめきと、置いたら全然違う、思ってもみない言葉ができた偶然と、このバランスの具合がきっといいんだろうなと。

あと知的好奇心をくすぐられる感じというのがこのゲームの実は特徴なんじゃないかということで、そこを売りにしたんですよね。結果的にお客さんの声とか聞いてても、必ずみんなそこを言ってくるので、当初計画したものとは違うかもしれないけど、日本語の偶然性とかが重なって、いいゲームになったのかなって思いますね。

※第2回は2月4日に公開を予定しています。

米光一成氏のブログ『こどものもうそうblog』
中村隆之氏のブログ『元もじぴったんプロデューサーの生の知恵ブログ』
【米光×中村 ぷよぴったん対談】その2:「世界は全部ゲームになる」 “米光予言”が示唆する新しい学びの姿


対談の動画はこちらから。

この対談は『エキサイトレビュー』との共同取材。また違った切り口で記事が公開されています。
「ぷよぷよ」と「もじぴったん」が対談! モンハン様にあやまれよー!(エキサイトレビュー)

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宮原俊介(編集長) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます

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