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年間1350億円の医療費削減?セラピードッグが果たす役割

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介護施設や病院などで実施されている「アニマル・セラピー」

チロルという名の犬をご存知でしょうか?東京都中央区の公園の一角に、犬の親子の銅像があります。そこにあるのが、チロルという名の雑種犬とその子犬の像です。ある日、廃墟の裏に足に障害を持った雑種の母犬と5頭の子犬が捨てられていました。子犬たちには全て貰い手がつきましたが、地域の子供たちからチロルと呼ばれていた母犬だけは貰い手が見つかりませんでした。しかし、チロルはその後セラピードッグの訓練を受け、国内最初の「認定セラピードッグ」になったのです。

犬や猫、ウサギや馬、イルカまでさまざまな動物と触れ合う「アニマル・セラピー」は、現在、高齢者や障害者の介護施設、また病院や刑務所などでも実施されています。これらの動物は一方的な愛玩動物としてのペットとは異なり、「コンパニオン・アニマル」と呼ばれています。

中でも犬は、人間の喜怒哀楽に素直な反応を示してくれる上に、ネコやウサギと違い、人との接触によるストレスもあまり高くなく、また、馬やイルカよりも飼育が手頃だとされる点から「セラピードッグ」として知られるようになりました。

セラピードッグは専門職といっても遜色ない存在

どんな犬でもセラピードッグになれるわけではありません。例えば、日本で中心的な活動を展開している「国際セラピードッグ協会」では、人との間に十分なアイコンタクを取ること、車いすや杖の歩行のスピードに合わせて歩くこと、さらに、病院や高齢者施設などの個室で活動するため、入室からベッドまでの移動、退室するまでの動き方などの45を超えるトレーニングを2年間以上積んで初めてセラピードッグとして認定しています。いわば、専門職といっても遜色ない存在なのです。

その専門的な技量を身につけた動物たちとの触れ合いは、単に「癒やし」や「やすらぎ」だけでなく、「生理的な効果」や「社会性の広がり」にまで及びます。例えば、心理的な面では、高齢者の介護施設などにおいて閉じこもりがちな利用者の気持ちを和らげ、笑顔を生み出し、人間関係においても広がりをもたらすとことが確認されています。

さらに、自閉症や不登校の子どもたちが、乗馬体験やイルカとの触れ合い体験を通じて心理的に解放され、社会性の広がりを促す効果も確認されているのです。

年間1350億円の医療費削減につながるという試算も

また、生理的な面では、動物と触れ合うことによって「ドーパミン」という「人間の生きる意欲」を産み出す脳内物質の分泌が促され、それによって血圧も下がり、リラックスした状態になるという報告もあります。このような効果を最大限に見積もれば、なんと年間1350億円の医療費削減につながるという試算も報告されています。

昨今のペットブームが広がりを見せた結果、年間約17万頭を超える犬猫が殺処分されてきた現実を踏まえ、2013年に動物愛護法が改正されました。その結果、殺処分される数は減少し、地域の動物保護センターによっては殺処分ゼロという実績も報告されるようになりました。

しかし、それでも毎年多くの犬猫が殺されていることに変わりはありません。冒頭に触れたチロリの場合も、捨て犬として保健所に殺処分される予定だったところを救われたという経緯があります。もし、アニマル・セラピーを全国展開し、動物たちをセラピー・アニマルとして養育することができれば、それだけで約19万頭の動物の需要が増加するとも言われています。先にもあげた1350億円以上の医療費削の期待も考え合わせれば、今後、ますますアニマル・セラピーの展開を期待すべきではないでしょうか。

(岸井 謙児/臨床心理士・スクールカウンセラー)

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