超高齢社会が本格化の一途をたどる中、「ヤングケアラー」や「Wケアラー」といった介護やケアに関する課題もまた、深刻化しています。医療・介護・保育を全国展開するニチイ学館(本社:東京・千代田区代、表取締役社長 社長執行役員:中川 創太)は、こうした“ケア”にまつわる社会課題に向き合うべく、新プロジェクト『MY CARE ACTION(マイ ケア アクション)』を2025年6月23日より正式スタートしました。
社会全体でケアや介護に対する理解を深めるため、企業向け研修、就労支援、学校教育支援の3つの柱で取り組みを展開。企業ブランディング支援で知られるパラドックス社(本社:東京都渋谷区、代表取締役:鈴木 猛之)と協働し、多様な立場の“ケアラー”問題に取り組んでいく方針です。
なぜ今、“ケア”が社会課題に?中学2年生の約17人に1人が「ヤングケアラー」に該当
令和5年10月1日現在で、日本の総人口1億2,435万人に占める65歳以上人口は3,623万人となり高齢化率は29.1%にも上っており、今後も高齢化率は上昇する推計となっています。
そんな中、「ヤングケアラー」や「ビジネスケアラー」、「Wケアラー」といった“ケア”に関する社会課題も浮き彫りに。厚生労働省の調査(2021年)[※1]によれば、調査対象では、中学2年生の約17人に1人が家族の介護や世話を担う「ヤングケアラー」に該当。進学や就職の機会に制約を受けるケースも少なくありません。さらに、働き盛りの世代では、親の介護と仕事の両立に悩む「ビジネスケアラー」、子育てと介護を同時に担う「Wケアラー」も増加傾向にあります。
こうした課題に対応するため、2025年4月に改正された育児・介護休業法では、介護離職防止のための雇用環境整備が義務付けられました。さらに、6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025 ~『今日より明日はよくなる』と実感できる社会へ~」(骨太方針2025)には引き続きケアラー支援対策が盛り込まれるなど、社会全体で取り組む体制づくりが加速度的に進められています。
※1「ヤングケアラーの実態に関する調査研究について」
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000767891.pdf
“ケア”の課題解決へ―― ニチイ学館の新プロジェクト『MY CARE ACTION』の3つの柱
こうした超高齢社会に伴う社会課題を解決するため立ち上げられたニチイ学館の新プロジェクト『MY CARE ACTION』では、「就労支援」・「職場研修」・「教育支援」の3つの柱を掲げ、多角的な取り組みが進められています。
1.就労支援:「いばしょに就こうPROJECT」
一般社団法人ヤングケアラー協会(本社:東京都品川区、代表者:宮崎成悟)監修のもと、「いばしょに就こうPROJECT」を始動。ヤングケアラーの就労機会を広げるため、ヤングケアラー向けに資格取得支援や柔軟な勤務体制を整備するほか、就労前に就労者と家族が職場とケア現場を事前に見学できる体験型支援「ふたりで無料体験」制度も導入予定。2025年6月より埼玉・愛知エリアで開始され、2026年以降は全国展開を予定となっています。
2. 職場研修:企業向けケア理解促進プログラム
ケアと仕事の両立に関する職場や社会全体の理解を目的とした職場研修も実施。ヤングケアラーの就労支援などを行う株式会社ENCHORD(本社:東京都港区、代表取締役CEO:高垣内 文也)監修のもと、ヤングケアラーや若年層のワーキングケアラーの実体験をもとにしたケーススタディを中心に構成した研修を通じ、当事者の悩みに対しての理解促進につなげていきます。6月から埼玉・愛知の拠点で順次実施、全国展開も予定。
3. 探究型学習:「ケア探究学習」
広告会社の株式会社TBWA HAKUHODO(本社:東京都港区、代表取締役社長兼CEO:内田 渉 )とコラボレーションして、ケアを探求する独自授業を開発。子どもたちが「ケア」を“自分ごと化”する思考力を育む教育プログラムで、次世代のケア理解を育むことを目的に2025年秋より一部の学校で試行、その後も全国展開を視野に検討中です。
埼玉・愛知から全国へ、社会に根ざす「わたしごとのケア」をめざす
ニチイ学館は、教育機関や企業などと連携し、次世代育成、職場風土の変革、そして若者の就労支援の3方面から「誰もが“私もできるケアがある”と感じられる社会」をめざし、取り組みを進めています。
2025年は埼玉・愛知にて段階的に展開していきますが、2026年以降は企業や教育機関との連携・協力を強化しながら全国へ広げていく予定。また、成果やノウハウを社内外に発信し、ケアに関する意識改革を推進していく方針です。
“ケア”を自分ごと化して「理解すること」が第一歩
高齢化率が年々上昇する中、“ケア”の問題は他人ごとではありません。誰もが当事者となり得るいま、社会全体で向き合い、“自分ごと化”して日常生活や職場、教育の一部に落とし込んで取り組んでいく必要があります。ニチイ学館の取り組みは、その状況に「向き合う」「理解する」「支える」ための実践的な第一歩。今後の広がりや社会的波及にも注目すべきプロジェクトです。