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『イミテーション・ゲーム』脚本家インタビュー 「アラン・チューリングの物語を正確に伝えなくてはという責任を感じた」

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3月13日(金)より公開となった、ベネディクト・カンバーバッチの主演映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』。本作では、第2次世界大戦中に世界最強の暗号“エニグマ”を解読し、戦争終結を2年以上も早めて1400万人以上の命を救ったと言われる実在の天才数学者、アラン・チューリングの知られざる物語が描かれています。

先日発表となった『第87回アカデミー賞』では、本作の脚本家グレアム・ムーア氏が脚色賞を受賞。自身が経験した過酷な人生を振り返りつつ、世界中の悩める若者たちへ向けた感動的なスピーチを行った彼に対しては、「今年度のベストスピーチだ!」と絶賛の声が相次ぎました。

このたびガジェット通信では、本作で製作総指揮も務めたグレアム・ムーア氏に電話インタビューを実施。作品に込めた思いや見どころなどをたっぷりと語っていただきました。

<ストーリー>
第2次世界大戦時、ドイツ軍が誇った世界最強の暗号“エニグマ”。世界の運命は、解読不可能と言われた暗号解読に挑んだ、一人の天才数学者アラン・チューリングに託された。英国政府が50年間隠し続けた、一人の天才の真実の物語。時代に翻弄された男の秘密と数奇な人生とは――。

自らのヒーローを映画化

――まずは、今作でアカデミー賞脚色賞を受賞された感想をお聞かせください。

グレアム・ムーア:とても光栄で重みを感じています。受賞した後に周りの方から映画に対するサポートをもらったし、とても記憶に残る夜になりました。オスカー像には自分の名前しか刻まれていませんが、この作品を作り上げる中で本当に仲良くなったみんなで受賞したと思うし、チーム全員があの場で集まって祝福されたことが何よりも嬉しかったです。

――みなさんで喜びを分かち合えたんですね。

グレアム・ムーア:監督やベネディクト、キーラともいっぱい祝杯をあげることができました。それ以降はまた執筆活動に戻っているので、映画の世界から小説の世界に戻った感じですね。


――アカデミー賞やその他多くの賞を通じて、この映画やアラン・チューリングという人物に注目が集まる意味合いは大きいと思いますが、いかがでしょうか?

グレアム・ムーア:我々としても、まさに注目が集まる意味合いはとても大きいと思います。元々彼を知らない人たちに彼を知ってもらうこと、あるいは彼のアメイジングな物語に触れたことがない人たちに、彼をより知ってもらうということを念頭に置いていたので、そういう結果になったことはとても嬉しいです。

――本作はグレアムさんの脚本をきっかけに制作がスタートしていると思うのですが、なぜアラン・チューリングという人物に興味を持ったのでしょうか?

グレアム・ムーア:もともと10代の時に幸運にも彼について知ることになったのですが、それは自分がコンピューターオタクだったからなんです。僕は、いわゆるスペースキャンプ(アメリカのU.S.ロケット&スペース財団が主催する青少年向けの体験学習)に足を運ぶようなティーンエイジャーでした。テクノロジー系の、オタク系のティーンエイジャーはやっぱりいろんな人との関わり合いにぎこちなさも感じるわけで、そんな自分たちにとって大きなインスピレーションとなったのがアラン・チューリングという人物でした。

――ご自身と近い感覚の持ち主だと感じたわけですね。

グレアム・ムーア:彼はアウトサイダーの中のアウトサイダーであるにも関わらず、あれだけのことをやり遂げました。だから年を重ねるなかでも、彼は僕の大きなインスピレーションであり続けるんです。

――アメリカやイギリスでは公開からしばらく経っていますが、すでにこの映画を鑑賞した観客の反応をどのようにとらえていますか?

グレアム・ムーア:最初に見た方々が感動して手紙をくれたりして、すごく嬉しく思っています。8月に初めてプレミアを開催したときには、上映後にライトがついて拍手の感じが割と静かだったのでヤバイ……と思ったんです。でもドキドキしながら振り返ったら、何列か後ろのジャーナリストの方々がすすり泣きをしました。お互いにそれを見られないように隠しながら泣いていたものだから、そのせいで拍手が控えめだったことに気づいてモルテン(監督)と目を合わせて安堵しました(笑)。映画がちゃんと伝わったね、というふうに思ったのを覚えています。

観客に“正確な物語”を伝えるための脚本

――伝記や小説など、原作がある題材を映画的ストーリーに作りあげていく際、脚本家として最も大切にしていることは何ですか?

グレアム・ムーア:今回はとにかく、アラン・チューリングという人物を公正に正確に責任を持って描く、そして伝えるということをいちばん大切にしていました。この映画を見ていただくときには、アラン・チューリングがどんな経験をしたのか観客の方が体験できるような、そういう作りになっています。

――確かに、だからこそ彼のことを知らなかった人ほど、なるべく予備知識なしで鑑賞した方が作品を楽しめると感じました。

グレアム・ムーア:アラン・チューリングという人物は歴史によって不当な扱いを受けてきていると僕は常々思っていたので、その分だけこの作品に関わっている間は彼の物語を正確に伝えなくてはという責任を感じていたんです。


――アラン・チューリング本人がもし生きていたら、完成した映画について何と言うと思いますか?

グレアム・ムーア:「悪くないね」と言ってもらえると思うけど(笑)。アランはもともと『白雪姫』が大好きで、ディズニーのカートゥーン系の大ファンでもあった。だから、『イミテーション・ゲーム』を気に入ったかどうかはちょっとわからないけどね(笑)。ただ、「大筋は正確なんじゃない?」と言ってもらえる出来になったのではないかと自負しています。あと、自分の役をベネディクト・カンバーバッチが演じてくれたことに喜びを感じて欲しいですね。だって、もし僕の役をベネディクトが演じたらすごくエキサイティングなことだから!

――今作では本当に難しい役どころを演じましたよね。印象に残っているシーンなどはありますか?

グレアム・ムーア:いちばん印象的なシーンは、中盤の尋問されているシークエンスですね。“イミテーション・ゲーム”について、アランが刑事に説明するシーンです。書いていて楽しかったシーンでもあるのですが、なんといっても僕が今まで見た中で、ベネディクトの最高の演技がみられる場面です。63秒のテイクなんですが、見る度に息を飲んでしまう素晴らしいシーンになったと思います。もともとこの映画で僕が目指したゴールというのはアランの論理的、そして数学的、それからパーソナルな要素というものをひとつに織り上げるということだったので、それを体現したシーンとなりました。

――ストーリーにおいてもひとつの転換となる場面でしたね。

グレアム・ムーア:ベネディクト・カンバーバッチというのは本当になんでもこなせてしまう役者で、微妙なニュアンスを演じ分けることができる役者だと思います。自分自身もひとりの映画ファンとして、『SHERLOCK/シャーロック』、『裏切りのサーカス』、『戦火の馬』などを観ても毎回違う演技を観ることができ、素晴らしいと感心します。本作でもまさに新しいカンバーバッチの演技を堪能できるので、日本のみなさんにもそういったあたりを注目して観て欲しいですね。

――本日は、ありがとうございました!

『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』公式サイト:
http://imitationgame.gaga.ne.jp/

(C) 2014 BBP IMITATION, LLC
Richard Harbaugh / (C)A.M.P.A.S.

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記者:

PR会社出身のゆとり第一世代。 目標は「象を一撃で倒す文章の書き方」を習得することです。

TwitterID: stamina_taro

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