【大人になっても読みたい児童文学】『こそあどの森の物語』(作・絵 岡田淳/理論社)

access_time create folderエンタメ 生活・趣味

kosoado01

昔からどうしても忘れられない、あのシーンやあのフレーズ、なぜだか分からないけれど、大人になってからも、うっすらと覚えている。そんなふうに、幼い頃に読んだ絵本や物語を、ふと思い出してしまうことはありませんか。この記事では、児童文学から1冊を取り上げてご紹介します。今回取り上げるのは、ふしぎな森に住んでいる、個性豊かな住人たちの物語!『こそあどの森の物語』(作・絵 岡田淳/理論社)です。

kosoado03

『“こ”の森でもなければ “そ”の森でもない “あ”の森でもなければ “ど”の森でもない こそあどの森 こそあどの森』。『こそあどの森の物語』のカバーに必ず書いてあるフレーズです。この本を読んで、“こそあど言葉”を覚えたという方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
1994年に第1巻『ふしぎな木の実の料理法』が出版され、2013年には第11巻目となる『水の精とふしぎなカヌー』が発売されました。そして昨年、シリーズ20周年を迎え、今なお続いている人気シリーズです。

『こそあどの森の物語 (1) ふしぎな木の実の料理法』

主人公のスキッパーは、こそあどの森に住んでいる内気で口下手で、空想にふけることが好きな少年。博物学者のバーバさんと一緒に暮らしています。だけど、バーバさんは、しょっちゅう旅に出るので、彼はほとんど1人。それでも寂しいと思ったことはありませんでした。旅行中のバーバさんから、あの“ふしぎな木の実”が届くまでは……。
第1巻『ふしぎな木の実の料理法』では、料理法の分からないふしぎな木の実のをめぐるお話です。そのなかで、スキッパーとこそあどの森の住人たちとの交流が描かれています。住人とは、ポットさんとトマトさんの夫婦、作家のトワイエさん、大工のギーコさんと姉のスミレさん、名前がころころ変わる双子。今まで交流の無かった彼らと出会い、スキッパーの気持ちに変化が訪れます。お気に入りの図鑑を見ても、上手に空想することができなかったり、好きだった静けさが落ち着かなくなったり。その気晴らしに散歩に出掛けたスキッパーは、洞窟で2人の旅人に出会います。そして、木の実の料理法とは――。
他者との交流を経たことで、外の世界を知り、広がっていく自分の世界。大勢で居ることを知ったからこそ分かる、1人で過ごす時間の大切さ……。そんなことが押し付けがましくなく、自然に描かれています。ちなみに、物語の最後に出てくる、トマトさん直伝の美味しいジャムの作り方は必見!こんなふうに作るジャムは美味しいこと間違いないでしょう。どんな方法かというと、ぜひ読んで試してみて下さい。

『こそあどの森の物語 (11) 水の精とふしぎなカヌー』

kosoado02

最新作(2015年3月現在で)11巻目『水の精とふしぎなカヌー』は、足を怪我したトワイエさんを心配する水の精の物語、双子が見つけたふしぎなカヌーの物語の2編から成り立っています。なかでも、水の精の物語では、困難に出会った時のスキッパーの考え方が印象的でした。何かに悩んだ時、人の意見を聞き、それを取捨選択するのは、とてもシンプルなことですが、大人になると難しくなってしまうこともありますよね。スキッパーは、こそあどの森の住人たちなら、どうするだろうと、心の中で問いかけます。ポットさんならこう言う、スミレさんなら……。そんな自問自答の中で、彼なりの答えを見つけます。そして、勇気を出して、一歩を踏み出します。それは1巻からは想像できない成長でした。その他にも、トワイエさんのトリオトコのお話、双子の小さなカヌーへ膨らませていく空想など、現実と非現実が混じり合うような内容で、読み終わった後の余韻がとても心地良い作品です。

児童文学というジャンルにあっても、大人でも十分に楽しめる『こそあどの森の物語』。シリーズ全体を通して、他者を否定するのではなく、受け入れる温かさや強さを感じます。
この森でも、あの森でも、その森でも、どの森でもない “こそあどの森”。一体どこにあるんだろう。もちろん、物語だと分かっている。でも、どこかにこんな森があったらいいなあとしみじみ思わせてくれる1冊です。

『ふしぎな木の実の料理法』
作・絵:岡田淳
出版社:理論社
定価:1700円
発行:1994年12月
参考:http://www.rironsha.com/?pid=27243306[リンク]

『水の精とふしぎなカヌー』
作・絵:岡田淳
出版社:理論社
定価:1700円
発行:2013年10月
参考:http://www.rironsha.com/?pid=64078378[リンク]

※画像は、株式会社 理論社様(http://www.rironsha.com/[リンク])と絵本ナビ様(http://www.ehonnavi.net/[リンク])より引用しています。

※この記事はガジェ通ウェブライターの「すえこ」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

  1. HOME
  2. エンタメ
  3. 【大人になっても読みたい児童文学】『こそあどの森の物語』(作・絵 岡田淳/理論社)
access_time create folderエンタメ 生活・趣味
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。