『大塚車庫の記憶』 ~東京都交通局巣鴨営業所大塚支所が87年目の歴史に幕~

access_time create folder生活・趣味

IMG_0449_R

都営バスで最も古い営業所である巣鴨営業所大塚支所(大塚車庫)が開設78年目を迎えた今年、巣鴨営業所へ統合により廃止される。そのさよならイベントとして半日だけ所内が公開されたので訪れた。

IMG_0450_R

大塚支所は昭和3年に東京市電の車庫であった当地に大塚営業所として誕生し、曲折を経て現在は巣鴨営業所の大塚支所として2路線を担当するだけになっている。廃止後の路線は巣鴨営業所が引き継ぐことになっているが、当時の建物や格納庫がそのまま使用されており歴史的価値も高いことから大勢のファンが集まった。

IMG_0309_R

その大塚支所が担当する都営バス「都02」系統に乗車して大塚車庫前を目指した。この路線は錦糸町駅前から大塚駅前を結ぶ幹線路線である。

IMG_0311_R

大塚支所に到着した時には小雨が降っていてかなり寒かったが、路線バスが出入りする営業中の車庫だけに、警備員を配置して公開していた。

IMG_0456_R

イベント会場であることを示す看板が掲げられていたが、記念撮影を行う家族連れやファンでいっぱいだった。

IMG_0458_R

大塚支所の入り口から長蛇の列で人気の高さがうかがえる。

IMG_0316_R

 

大塚支所の表札看板はかなりの年代物で、歴史の古さを感じさせる。この看板は今月29日をもって降ろされることになる。

IMG_0382_R

中に入ってみると、格納庫の展示スペース、部品の販売スペース、グッズの販売スペースが所狭しと並び、営業中の車庫でのイベントを開催するのに苦労した跡がうかがえる。

IMG_0363_R

写真撮影する人、家族連れで普段乗っているバスを観察する人、グッズを買いに走る人、様々だ。

IMG_0473_R

今回の目玉は「幕車」と呼ばれる車両展示だ。現在の主流は車両前方、側面、後方の行先方向幕がLEDの車両だが、フィルムにスクリーントーン印刷を施してドラムで巻き上げる本物の幕を使用した車両がわずかながら存在する。その幕車を集めて展示しているのだ。

IMG_0326_R

もちろん、現役の車両ではあるがこれだけ幕車がそろうとファン垂ぜんの圧巻な光景が広がる。

IMG_0348_R

現在は廃止路線となった都02急行の方向幕。通常は見ることができない。

IMG_0435_R

東京ビッグサイトで大規模イベントが開催される時に運行される臨時急行の「国展01」系統。ほぼすべての営業所からバスが動員され運行される。

IMG_0398_R

この方向幕もLED化に伴い見る機会は少なくなってしまったようだ。

IMG_0439_R

バスの点検整備を行う格納庫。乗用車用とはけた違いの大きさだ。

IMG_0438_R

格納庫の中から。ファンがひっきりなしに訪れては写真撮影をしていく。

IMG_0366_R

市電、都電時代から存在する当所を懐かしむかのように老夫婦がゆっくり歩きながら建物を眺めていたのが印象的な公開イベントだった。

IMG_0452_R

車庫から出入りするバスに乗客を乗せるため、当所発着のバスもあるが、これはその降車場。

IMG_0453_R

大塚車庫前が廃止された後は停留所名も変更され、その名は人々の記憶の中だけに存在することとなる。

IMG_0442_R

右書きで東京都交通局と書かれた開設当初から存在すると思われる石造りの水槽。この魚たちは巣鴨営業所に連れて行ってもらえるのだろうか。

IMG_0486_R

名残惜しいが、雨が強くなってきたので大塚支所を後にした。茗荷谷駅前で都営バス90周年復興カラーのバスに遭遇した。このカラーは昭和30-40年代の都営バスを復刻したもの。当時は大塚支所にも本物が在籍していたはずだ。

IMG_0491_R

行きと同様に都02系統で錦糸町駅前まで乗車した。幸運なことに乗車したバスも「幕車」だった。前の銀色のバスは観光路線バス”東京・夢の下町”「S-1」系統。

 

古いものは時代とともに消える。これは仕方のないことだ。しかし、古き良きものを記憶にとどめ、後世に伝えていくことも歴史の通過点を目撃しようとしている者の使命ではないだろうか。「長い間お疲れさまでした。」と心の中でつぶやき、大塚支所所属の都02系統「幕車」を見送った。

 

※写真はすべて著者が撮影したもの。

※この記事はガジェ通ウェブライターの「古川 智規」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

  1. HOME
  2. 生活・趣味
  3. 『大塚車庫の記憶』 ~東京都交通局巣鴨営業所大塚支所が87年目の歴史に幕~
access_time create folder生活・趣味
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。