『アップルシード アルファ』荒牧監督インタビュー「10年で大きく変わったのはガジェットでは無く“スタッフ”の技術」

アップルシード アルファ

2004 年にその革新的映像世界で国内外に衝撃を与えた「アップルシード」シリーズ待望の最新作『アップルシード アルファ』 が 2015年1月17日(土)より、新宿バルト9他にて全国公開となります。

本作は「攻殻機動隊」で知られる士郎正宗による原作の世界観を、荒牧伸志監督(『キャプテンハーロック』)をはじめとするスタッフが再集結し、完全再現したSFアクション。デュナン役に声優の小松由佳さん、ブリアレオス役に諏訪部順一さんが起用され、新たな「アップルシード」の魅力を引き出しています。今回は荒牧監督に映画の見所やこだわりポイントなどをインタビュー。色々とお話を伺ってきました。

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荒牧監督

―続編『エクスマキナ』は挟んでいますが、『アップルシード』の公開からもう10年経った事に驚きました。当時私も映画館に観に行ったのでしみじみしてしまいます。

荒牧:はやいですよね。僕なんかからすると最近10年ってあっという間で(笑)。今回新たに「アップルシード」を映画化するにあたり、自分の中でテーマを定めたり、課題を課したかったのですが、そこが決まるまでに時間がかかりましたね。作品を一本作るのには数年の時間をかけるわけですから、自分のモチベーションを維持する理由を見つけないといけない、流されて作った作品には絶対したくないからですね。

―今回、英語で脚本を書かれたという事ですが、これにはどの様な意図がありましたか?

荒牧:自分は英語はしっかりと話せないので、英語の通訳さんと意思疎通しながら。最初にソフトをリリースするのが北米という事もあって、日本語で書いた脚本を英語に翻訳するだけでは表現に限界があるなと思ったんですね。アメリカで上映しても違和感の無いセリフまわし、会話にしたかったというのが理由です。

―監督がおっしゃるとおり、本作日本での劇場公開を前に北米ではすでにデジタル配信とBlu-ray、DVDがリリースされていて、日本の作品なのに面白い形式ですよね。より世界を見据えてという想いが強いのでしょうか?

荒牧:そこまでカッコイイ事が考えていないんですけどね(笑)。ただ、単純に自分の好きな作品の上映、販売地域が増えるという事が嬉しいです。アメリカ人にウケるためには……とかを詳細に分析して考えているというよりは、好きな物をこだわって作っていたら、海外の方にも受け入れてもらえたという感じでしょうか。

―CGが大迫力で、でも観ていて疲れるというわけではなく、とてもなめらかだなと感じました。

荒牧:リアル(現実)に近づこうと追求したのでは無く、光と影の演出にこだわりました。昼間に野外で立っているシーンがあるのですが、その光と影が自然で、違和感無く演出出来ているかという事を大切にしました。皆が「おお、このCGはすごい!」と驚くのでは無く、あまりにも自然で気付かないほどにしようと。廃墟の描写でもオーバーに廃墟感を出すという事では無くて「廃墟はこうだよな」と自然に思ってもらえる様に。

―今回、作品作りで新たに取り入れたガジェットや機材などはありますか?

荒牧:今回特段新しいガジェットや道具等を取り入れたという事は無いんですね。コンピュータ自体のスピードやハードディスクが大容量になって、安くなったくらいで。

―では10年前から環境自体はそれほど変わらないと。それは驚きです。

荒牧:そうですね。ではこの10年で何が大きく変わったかというとスタッフの技術なんです。色々な作品を経験してきて、リアルにしても不自然に見えない人間の動きやCGなど、スタッフ皆の経験値がたまってきているんですね。この『アップルシード アルファ』を観て、映像技術が格段にあがっているなと感じたならば、それはスタッフ皆が積み上げてきたもののおかげなんです。

―3DCGアニメって日常の動きが苦手だと評される事が多いですが、本作はとても自然に動いていましたものね。

荒牧:そうなんですよね。「重みが無い」と言われていた。長くやっているうちにそのへんの弱点も分かってきて。

―物語はとてもシンプルでどの世代の方にも刺さるな、と感じました。原作とはまた違う魅力ですよね。

荒牧:原作の「アップルシード」の社会的背景や、時代の描写をつきつめていくと、それだけで膨大な量になってしまうんですよ。それよりも主人公2人のパーソナルな部分をしっかりと描いていきたいと思いましたので、出来るだけ説明をしなくても観客に伝わる様にと思ってストーリーを組み立てました。

―細部を見ようと思えばいくらでも掘り下げられるし、エンタメとしても面白いし、という魅力がありますよね。

荒牧:そうなんですよね。もちろん、メカニックデザインがカッコイイ、戦闘シーンがカッコイイというアクション要素から入ってもすごく楽しめますし、ひいた視点で物語を観てみると社会情勢などを考えさせられる作品でもありますし、楽しみ方がいくらでもありますよね。

―シンプルなストーリーだからこそ、キャストのお2人の演技が重要だったのでは無いかと思います。小松由佳さんと諏訪部順一さんの起用の決め手というのはどこにありましたか?

荒牧:諏訪部さんはこれまで色々な作品を拝見させていただいていて、彼ならブリアレオスの本質はそのままに、新しいキャラクターにしてくれるとすぐに決まったんですね。

デュナン役は結構迷ったのですが、小松さんの声を別作品のオーディションで初めて聞いてから、デュナンにハマるじゃないかなと思っていました。演技の幅が非常に広いですし、それでいて感情もしっかりと出してくれるのでお願いしようと。2人ともお忙しい方なので、アフレコのスケジュールなどはなかなか大変ではあったのですが、息ピッタリな演技を見せてくださって、非常に満足しています。

―映画がいよいよ1月17日より公開となりますが、改めて監督にとって「アップルシード」とはどんな存在なのでしょうか?

荒牧:フル3Gアニメの作品として初めて監督を任されたのが『アップルシード』なので、2本目、3本目とシリーズを続けているからといって「続編」だと甘んじるつもりは全く無くて。自分にとっても、観客にとっても新しい一本になる様にと気合を入れて作っています。「アップルシード」をあまりご存知無い方でも楽しめる不変的なストーリーですので、ぜひお楽しみください。

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http://appleseedalpha.jp

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

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