表現規制でディストピア化する近未来を描いた漫画『有害都市』に賛否両論

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有害都市

集英社のウェブコミック誌『となりのヤングジャンプ』で11月5日から連載が開始された筒井哲也氏の『有害都市』が話題になっています。この漫画の舞台はオリンピックを翌年に控え、全国一律の「有害図書類指定に関する新法」が成立・施行された2019年の東京。主人公の漫画家・日々野幹雄が新作『DARK WALKER』内の残虐な描写を巡って行政からの圧力や「事なかれ主義」の編集部が求める自主規制に直面する様子が描かれます。当初は『ジャンプ改』で5月号から連載されていましたが、同誌の休刊により『となりのヤングジャンプ』へ移籍して第1話からの公開が始まりました。作者の公式サイトでは「単行本2巻分を想定」とされているため『ジャンプ改』掲載分の隔週ペースでの再公開を終え次第、新規のエピソードが描かれるとみられます。

作中で描かれる表現規制の描写に関しては作者自身、2004年から2006年まで『ヤングガンガン』(スクウェア・エニックス)で連載した『マンホール』が長崎県の有害図書指定を受ける経験を有しており、現在も自身のサイトで指定に至る経緯や県とのやり取りを公表しているだけあって「迫真に富んでいる」と言う意見が『Twitter』に投稿されています。来月の解散総選挙では与党・自民党がここ数回の国政選挙と同様に「青少年健全育成基本法の早期成立」を公約に盛り込む可能性が高く、オリンピック開催の前準備としての“環境浄化”が現実に起こり得る可能性も作品のテーマに説得力を持たせているのかも知れません。その一方で、やはり『Twitter』では「表現規制を推進するサイドの人物を醜悪なステレオタイプとして描いているのは作者のバイアスが強すぎるのではないか」「それぞれ別個の論点であるはずの刑法第175条(わいせつ)・児童ポルノ禁止法・青少年健全育成が混同されているのはミスリードのおそれがある」と言う批判も見られます。

過去に表現規制が進むディストピアを描いた漫画としては同じく集英社の『週刊少年ジャンプ』に連載された光原伸『アウターゾーン』の第87話「禁書」が有名ですが、賛否はあれど正面から表現規制問題をテーマにした『有害都市』の今後の展開にも注目が集まることは間違いないでしょう。

STUDIO221(筒井哲也氏の公式サイト)
http://www.pn221.com/

画像:となりのヤングジャンプ内の『有害都市』作品紹介
http://tonarinoyj.jp/ [リンク]

※この記事はガジェ通ウェブライターの「84oca」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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