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「先生1.8万人減らせる」本当か?教育現場の現実

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財務省から驚くような試算「先生1.8万人減らせる」

文部科学省は、平成27年度の予算の概算要求で公立小中学校の教職員の定数を10年がかりで増やす計画を示しました。これは「教育再生」を掲げて「質」と「数」の一体的な強化を目指したものです。しかし、教員の定員数については従来からその削減を主張する財務省との対立が続いており、この度、財務省から驚くような試算が示されました。

財務省によると、全国の公立小中学校をすべて標準的な規模に統廃合した場合、教員数は小学校だけで約1万8千人削減できるというのです。もちろん機械的な試算ですが、刺激的な内容です。さらに財務省は学級の少人数化についても、その効果を否定しています。データによると小学1年生の35人学級導入以前と以後を比較すると「不登校はほんのわずかの減少」「いじめは増加、暴力行為も微増」しており、結果的に「目立った改善は見られず」、35人学級の効果は無いと結論づけたのです。さらに40人学級に戻せば、必要な教職員数が約4千人減り、人件費の国負担分を年間約86億円削減できるとの試算まで提示しました。

「いじめ」は今や緊急事態。これまで以上に手厚い指導体制が必要

では、もし実際に教職員数が削減された場合、どのような影響が考えられるでしょうか。

まず、考えられるのは、子ども一人に対し関わる教師の「数」が減るのではないか、と言う点です。これについて財務省は少子化で子どもの数が減っているので、平成元年と平成24年を比較すると児童生徒40人当たりの教職員数は39%も増加しており、今後もその傾向は続くと指摘しています。それだけを見れば確かに定数削減にも理があると言えるかもしれません。しかし、問題は教育の「質」にも関連してくるのです。

何より昨今の教育現場の「質」の問題は、これまで以上に複雑・多様化しています。例えば、いじめの件数は増加するとともに、その内容も暴力からネットいじめまで多様化し、その被害も深刻化しています。警察庁のまとめによると、いじめに起因する事件は年々増加しており、平成25年度では410件と23年度の113件から激増しています。今や緊急事態と言ってもよく、これまで以上に手厚い指導体制が必要とされます。

時代の変化に応じた「質」と「数」の充実が求められている

不登校等についても相変わらず11万人を超え、ほぼ横ばい状態です。スクールカウンセラー等の対応に加え、子ども個々に関わる教育環境の充実は欠かせないでしょう。また、特別支援教育については、20年前と比べ特別支援学校・学級に通う小学校児童は2.1倍、中学校生徒は1.9倍になっており、今後も増えることが予想されます。個々に対応した支援教育の充実に加え、子どもがパニックを起こしたり教室から飛び出した時に対応可能な教師の複数指導体制も必要です。

その他、教育のIT化や小学校での「英語」「理科」などの専科教育化への対応、小1プロブレム・中1ショックと呼ばれる問題等、時代の変化に応じた「質」と「数」の充実が求められていることは間違いありません。

「数」や「予算」だけで定員数の削減を主張するのは無理がある

さらに学校の統廃合が進めば、実際にそこに通う児童にとって統合前より遠距離通学になり、時間と経費の負担が増すという声や、給与等の人件費は国・都道府県の負担のため、市町村レベルでは事業費削減にはつながらないという指摘もあります。しかも学校は地域の文化とコミュニティーの象徴的な存在であり、多くの学校は災害等の避難拠点として指定されています。その意味で学校の統廃合は、簡単には地元の理解を得られないことが予想されます。

このような教育の「質」的側面や地域との関わりを考えた時、財務省の言うように単に「数」や「予算」だけで定員数の削減を主張するのは無理があると言わざるを得ません。教育は国の経済・社会的根幹を揺らがす問題であるだけに、今後の議論の推移を見守っていく必要があるでしょう。

カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
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